拍手が再び沸き起こり、驚嘆の声が混じった。駿平は壇上に上がり、落札した作品を受け取った。慣例に従い、デザイナーと握手を交わすことになっている。駿平は夏生の前まで歩み寄った。照明が眩しかった。彼は手を差し出す。その指先は冷たく、ほとんど気づかれないほどかすかに震えていた。夏生の手は温かく、乾いていた。軽く握られ、すぐに離される。儀礼的な微笑みが、絶妙な加減で唇に浮かんでいた。「慈善活動へのご支援、ありがとうございます」夏生の声は穏やかで、丁寧で、そして、どこまでも他人行儀だった。駿平は夏生を深く見つめ、喉仏が、一度上下した。言いたいことが山ほど胸の内でせめぎ合い、燃えるように焼けついたが、最後にはただ、かすれたひと言にしかならなかった。「……君のデザインは、美しかった。おめでとう」「ありがとうございます」夏生は変わらぬ微笑みを浮かべ、軽く頭を下げた。一連のやり取りが終わり、ふたりは壇を降りた。裏の通路は狭く、スタッフに案内されながら、しばらく並んで歩くことになった。駿平は、夏生から漂うかすかな、見知らぬ香りに気づいた。記憶している、どの香水とも違う匂いだった。心臓が瞬間的に締めつけられ、鈍く痛んだ。ありったけの自制心を振り絞って呼吸を整え、取り乱さずに済んだ。そして、別れて別々の方向へと歩き出すその直前。駿平はふと顔を傾け、ふたりにだけ聞こえる吐息のような声で、素早く言った。「君が元気なら、それでいい」夏生の足は止まらなかった。まつ毛一つ震えることもなかった。聞こえなかったかのように。あるいは、聞こえていたとしても、もはやどうでもいいことのように。夏生はまっすぐに、少し離れたところで待っていた、同じく若手デザイナーの友人たちのもとへ歩いていき、何か笑いながら言葉を交わすと、人混みの中へと溶け込んでいった。一度も、振り返ることはなかった。【早乙女氏、前妻の作品を大金で落札、ステージ上で束の間の握手】この場面は無数のカメラに捉えられ、瞬く間に大きく報じられ、大きな話題を呼んだ。【復縁の兆し?】【復縁への道にようやく光?】【早乙女社長、一途な想いは今も変わらず?】と、あらゆる憶測が飛び交った。夏生はSNSの通知をオフにし、町で新たに引き受けた壁
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