All Chapters of 女神様にハイエルフとして長生きする様お願いされました。: Chapter 51 - Chapter 60

65 Chapters

星空

 その日の夜、食事と宴会が終わり食卓を片付けたエリスフィーナは里の通りに出ていた。 別に行く場所がある訳でも無いが、明日には旅立たねばならない彼女は故郷の光景を少しでも目に焼き付けようとしていたのかもしれない。 里の通りは大木を利用した民家が立ち並びその先には精霊神が祀られている神殿がある。 エリスフィーナは通りの木々の切れ目から覗く星空を眺めながら里の雰囲気を確かめる様に神殿への道を歩いていく。 神殿とは言っても人間達が神を祀る様な荘厳な建物がある訳では無く、一段高くなった場所に石造りの祠と巨大な大木があるだけである。ージャリ……ー(精霊神様、森の精霊様……どうか私達のこれからの旅路をお見守り下さい) 祠の前、大木に向けて跪いたエリスフィーナは頭を下げて彼女の信じる神に祈りを捧げる。(パパやママ、里の人達……ユニコーンさん達も健やかに毎日を過ごせます様に……) エリスフィーナが自分達勇者パーティーの事だけでは無く、里の皆の安寧も祈っていると……ーザッザッザッ……ー こちらに向かってくる足音が聞こえてきた。エリスフィーナが立ち上がり後ろを振り返るとそこには「よう。ここに居たか」 ガルドリックが片手を上げて声を掛けてきた。「……ここで、何をしてたんだ?」 もう夜中を回ろうとしている時間だ。そんな時間に一人で何をしていたのか気になったらしいガルドリックが尋ねてきた。「あ、はい。これからの旅と皆さんの安全を精霊神様にお祈りしてました」 特に何かを隠すでも無く普通に答えるエリスフィーナにガルドリックは「エリスフィーナ、やっぱり君はこの里に帰った方が良い」 彼女にとって予想外と言える言葉を突きつけてきた。「そんな……どうしてですか? 私、お役に立ててませんか?」 リーダーから突然のパーティー脱退提案を前にエリスフィーナは耳を疑った。思わず彼に真意を問うが……「……そうじゃない。そうじゃないんだ」 ガルドリックはいつになく歯切れが悪い。「……エリスには伸び代も時間もある。何なら俺達の教えなんか直ぐに必要無くなるだろう。冒険者としてなら俺達より大成するかもしれん」 ガルドリックはエリスフィーナから視線を外し満天の星空を見上げながら次に紡ぐ言葉を選んでいる様だった。「長い人生のエルフであっても……子供の成長を見守れるのは今だけな
last updateLast Updated : 2026-10-06
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新たな旅立ちの朝

 翌日、エリスフィーナの自宅でゆっくりと睡眠を取った勇者パーティーメンバーは起床と共に旅立ちの準備を始めていた。 行き先は緩衝地帯を東に抜けた先のアトレイス連邦になる。しかし、今のガルドリック達は王国の許可なく国境を越えた身である。 平時であれば一冒険者の国境破りなど数ある犯罪の中の一つでしかないのだが、今のガルドリック達は魔王討伐の事実を抱えたお尋ね者である。 さすがに他国への強権発動はホワイトクラウン王国も望む所では無いだろうから、アトレイス連邦に入り込めればひとまずは安心と言えるだろう。「エリィ? 準備終わった?」 全身赤の衣装に身を包んだいつものメルティーローズが声を掛けてきた。「はい。大丈夫です」 返事をするのはこちらも青のワンピースに白を基調としたプレートアーマーを身に着けたエリスフィーナだ。 準備を終えた二人が一階のリビングに降りると「よう。準備はできたみたいだな」「これからまた長旅となりますからね。旅の用意はよろしいですか?」 二人を出迎えたのは勇者パーティーの男性陣二人である。彼等の声が届いたのか「あら〜、おはようエリィちゃん♪ 皆も準備万端みたいね〜♪」「朝ごはんを用意しておいたからきちんと食べていきなさい。固パンもあるから持っていくと良い」 キッチンからやってきたエルウィンドは鍋を手にしており、香草のいい香りが漂ってきている。恐らくスープを作ってきたのだろう。 一方のアスタルは昨夜に引き続き籠一杯の白パンを手にしている。昨日クレスに持ち上げられたからか非常に気合が感じられた。「朝に食べやすいものを用意したからきちんと食べていってね〜?」 エルウィンドがテーブルの中央に鍋を置き、その周りに取り皿とスプーンをエリスフィーナが並べていく。 両親二人に勧められるまま席に着いたガルドリック達は「さぁ、どうぞ。めしあがれ〜♪」 エルウィンドの声に促されるまま、穏やかに朝食を始めるのだった。「あと、これは人間達に教わったハードタックだ。持っていきなさい」 アスタルは布で包んだ固パンをパーティーの皆の前に配っていく。 保存性が高く携帯性に優れているハードタックは冒険者の必需品である。「独自のハーブを加えてあるから独特の匂いはするが、虫除けだから心配は無い」 軽い香草の匂いがするが、それは虫除けを狙ったものでア
last updateLast Updated : 2026-10-07
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通過地点

 エルフの里を出たエリスフィーナ達、勇者パーティーは何の妨害を受ける事も無く順調にアトレイス連邦に入る事が出来ていた。「隣国に来られたとはいえ、まだ安心は出来ない。俺達はホワイトクラウン王国の許可なく出国した身だ」 ガルドリックが街に入ったメンバー達に歩きながら説明する。彼の目標としてはホワイトクラウン王国の力の及ばない海を越えた遠い国へ渡るというものになるのだろう。 故郷の大陸から大きく離れてしまう現実を改めて皆に確認するが「私は構わないわよ。いっぺん別の大陸ってのも拝んでみたかったし?」「しかし、船というものは大層揺れて気持ち悪くなるものだとか……私は少々不安ですね」 メルティーローズはあっけらかんとしているが、クレスは船酔いに不安を覗かせている。「私は……海と言うものを初めて見られるのならとても楽しみです!」 一人目を輝かせているのはエリスフィーナだ。すっかり山育ちで海を知らない人になっている。森育ちのハイエルフだが。「雑貨屋と道具屋で必要な物を買うに留めてこの街は早めに出よう。王国の連中が追ってきたら事だ」 アトレイス公国に着くまでエルフの里で休んだきりの強行軍で進んできたが、ガルドリックは更に急いで東に向かうつもりである様だ。 そんな彼等が雑貨屋に次の旅の為の買い出しに向かっていると「あ! 勇者様〜!」 通りでとある冒険者達の一団に声を掛けられた。エリスフィーナはピンと来ていなかったがメルティーローズは「あ、お〜い! 久しぶりじゃない! 元気してた〜?」 明らかに知っている間柄な反応を見せた。(え、誰……?) と、エリスフィーナがガルドリックとクレスに目をやると二人共明らかに知り合いを見る顔をしている。 クレスに至ってはに斜め四十五度でモデル立ちをしており、一番見た目に栄えるにこやかイケメンスマイルを形作っている。 ガルドリックがキョロキョロと皆を見回しているエリスフィーナに「ああ、あの子達は前に魔石鉱山で助けた新人冒険者達だ。君は……大変だったからな。覚えていないのもムリは無い」 肩をポンポン叩いて不安がらない様に言い聞かせてきた。 そういえば……レザーアーマー姿の声を掛けてきた金髪ポニテの冒険者風女の子には見覚えがある。 あの時はゴブリンに襲われてボロボロだったから、分からなかったが……今では普通の冒険
last updateLast Updated : 2026-10-08
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奢られ酒

 ゾロゾロと冒険者ギルドにやってきたガルドリック達は皆で空いている席に着く事にした。 大きな街の冒険者ギルドでは飲食宿泊が比較的安価で利用出来る様になっている。 冒険者ギルドが公共の福祉、雇用と治安維持にも繋がっている事がよく分かる光景である。 また、ギルドで提供される食事は値段相応なものばかりであり、その辺りは周辺の飲食店や宿泊施設が差別化を計れている要素の一つとなっている。 木製のジョッキを大量に手にしたガルドリックと共におつまみ料理を手にした冒険者の達女の子三人、エリスフィーナがテーブルに戻ってきた。 ガルドリックが手にしていたジョッキは八つなので女性陣は主に料理を運んできた。 パンに串焼き肉、串焼き魚、スープ……と、一通り宴会が出来る様なメニューは揃っている。 テーブルに四対四でパーティーごとに別れ対面で席に着いた一同は「かんぱ〜い!」 と、音頭を取るメルティーローズに続いて皆がジョッキを突き合わせる。 そして始まったのはお互いの自己紹介からだった。ガルドリック、エリスフィーナ、メルティーローズ、クレスと席に並んだ順番で一人ずつ名前と職業を名乗っていく。「え〜と、俺は戦士でヴァイスだ。一応このパーティーで一応リーダーやってる」 茶髪の少年戦士が慣れない様子で自己紹介する。まぁ、冒険者同士あらたまって自己紹介する事などあまり無い。「私はエイミーです! パーティーではえーと便利屋? やってます!」 彼女は魔石鉱山の時に助けを求めてきた少女だ。便利屋を雑用係な意味合いで使っている。 パーティーでは索敵したり必要に応じて味方の護衛に付いたり、前線に立って囮をしたりとしているそうだ。「私は神官でソフィーと言います。ヒールとキュアが使えます」 白い法衣を着たソフィーは見た目そのままパーティーの治癒を担当しているとの事だ。「私は魔術師のメディナ。魔法使いだから役目は後ろからの援護……こんなトコかしら?」 最後の紫セミロング魔術師少女は少しぶっきらぼうと言うか……あまり親しげに話してくる感じでは無い。もしかすたら人見知りするタイプなのかもしれない。「ガルドリックさん達って魔王を討伐しに発たれたって聞いていたんですけど……魔王ってどうなったんですかぁ?」 宴会が始まりエイミーが早速ガルドリックが答えづらい質問をしてきた。 魔王討伐
last updateLast Updated : 2026-10-09
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方針決定

「あの、弓矢って使うの難しそうですけど……もし練習するとしたらどうすれば良いですか?」 エリスフィーナがエルフと人間の種族の差を再認識しているところにエイミーが戦い方に関する質問をさらに掘り下げてきた。「え、え〜と……最初は軽くて力も要らない短弓から始めてはどうでしょう? 的もなるべく近くから始めるのが分かりやすいと思います」 自分の得意分野だからかエリスフィーナも幾分緊張が解けて饒舌に話せる様になってきていた。 もっとも彼女が言う練習法とは父親アスタルからのただの受け売りにはなるのだが……「短弓かぁ〜、ゴブリンみたいでなんかやだなぁ〜」 エイミーは短弓が持つイメージそのまま語る。確かに短弓は非力なゴブリンが使ってくるイメージが冒険者界隈では一般的だ。「短弓は威力と射程では劣りますが、手数に優れ、疲れにくい利点があります。最初に練習がてら使うには最適だと思いますよ」 短弓は盾等で簡単に防がれてしまうが、毒を併用したりする事で騎乗したフル装備の騎士ですら打ち倒せたりするので決して侮れない武器ではあるのだ。「それにしても、あんたエルフなのに随分人当たり良いんだな。意外だぜ」 エイミーとの会話を横で聞いていた戦士ヴァイスが感心したように感想を述べてきた。「ホントだよね〜。私、無視とかされちゃったらどうしようかと思ってたもん。あ〜、良かったぁ〜」 ポニテのテールをプラプラさせているエイミーがヴァイスとエリスフィーナを交互に見ながら率直な感想を語る。「ところでエリスフィーナさんっていくつなの? 私は達は皆、十五なんだけど……」「……私は十六です」 知り合ったばかりの相手に年齢を聞いたりするのは十代二十代でよく見る光景だ。 歳を重ねるとどうでも良い話となるが、若い時代の一歳差はかなりの違いが出てくる。 先輩後輩、親分子分、ガキ大将とその腰巾着等、子供同士特有ヒエラルキーの判断材料となるからだ。「え、嘘! 私達とそんなに変わらないじゃな〜い」 エリスフィーナの年齢を聞いたエイミーが素っ頓狂な声を上げた。 いくら身体の成長が人間と変わらないと言ってても百歳未満のエルフが人間世界に出てくるのは非常に稀ではある。 元々が森から出てこない上に子供を授かる機会の少ないエルフだけあって、子供は非常に大事に育てられるのだ。 初めから人間世界で生まれ
last updateLast Updated : 2026-10-11
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隣国へ

 宴会を終えたガルドリック達は、街で休むこと無く雑貨屋での買い物を終えると早々にアトレイス公都を去る事にするのだった。 あまりの強行軍にヴァイス達からは不満の声が出たが街での行動は目立ちすぎると判断し、身が隠しやすい野営か周辺の農村で休む事にするのだった。 今回は夜も更けていた事もあり街道から離れた森の中にて天幕を使った野営をする事となった。「なんでわざわざ森の中にするんだ? 街道の近くの方が直ぐに逃げられるだろ」 少しお疲れ気味のヴァイスがガルドリックに食って掛かり気味に尋ねてきた。「森の中なら夜目も効きづらい。相手が誤認してくれるかもしれん。見通しの良い場所では相手からも丸見えになるからな」 天幕を組み立てながらガルドリックが若い冒険者達に説明する。「良い機会だ。焚き火も敵から見つけづらいやり方にしよう。ゴブリン対策だ」 ガルドリックは野営時の敵の襲撃を警戒する歳の焚き火の作る方を実行し始めるのだった。「ゴブリンてのはただでさえ夜目が効く。そんな連中に焚き火の直火を見つけられたらあっという間に集られる」 ガルドリックは地面を掘ってその中に焚き火を作り始めた。「焚き火は出来るだけ焚いた方が良い。夜に奇襲を受けても敵がすぐに視認出来る」 現状の把握には視認するしか無い以上、迅速に準備出来る光源は重要だ。「でも、明かりの魔法使えば良いんじゃ……?」 メディナが自身の魔法を念頭に置いた質問をしてきた。「貴重な一手を現状把握に使う余裕が常にあるとは限らない。慣れない内は咄嗟の行動は最良なモノに絞っておいた方が良い。迷っていたら死ぬぞ」ーボオオオッ!ー 焚き火に火がついたところでガルドリックはヴァイスとエイミーに「少し離れた向こうからこっちを見て焚き火の目立たなさを確認してみてくれ」 ガルドリックは新人達に多少離れた場所からの焚き火の隠匿性の確認を行わせる。そんや彼の指示にヴァイス達が皆で連れ立って森の向こうへと消えていく。(…………) エリスフィーナが焚き火のそばで皆の様子を見守っていると「あ〜、見てきました。ちょっと離れたら焚き火してるなんて分かんなかったッスね〜」 森の奥から戻ってきたメンバー達、彼等を代表してヴァイスが率直な感想を述べた。「それじゃ皆は朝まで天幕で休んでくれ。俺が見張っておくから心配するな」 と、ガ
last updateLast Updated : 2026-10-13
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違えた道程

 エリスフィーナ達がアトレイス公都から隣国に向かっている頃、パーティーから外れたマリアリアはホワイトクラウン国王との謁見を経てホワイトクラウン王国第一王子アレックスと会談するに至っていた。 マリアリアは聖女として王国では人気が高く物腰柔らかで容姿端麗、清楚な彼女はフリーにしておくには勿体ない存在であった。 ガルドリック達勇者パーティーが行方知れずな今、彼等を好きにさせておく理由はホワイトクラウン王国には無い。 少なくとも国王やアレックス王子にとっては、人類の大敵である魔王を倒した勇者を擁した正義の王国という体面を維持したい以上、詳細を知るガルドリック達は捨て置けない存在であった。「聖女マリアリア、君の話だと勇者ガルドリック達が東へ向かっているとの事だが……どうして分かった?」 ホワイトクラウン王城の執務室……白を基調とし勲章を多数下げた軍服を着たアレックス王子が対面のソファーに座るマリアリアに尋ねる。「女神アルダト・リリー様の啓示です。彼女が私に道をお示し下さいました」 マリアリアがアレックスに昨夜見た夢の内容を語り始める。ガルドリックとマリアリアの子孫か後の世に復活する魔王と戦う勇者となる事。その未来のためならば女神はいかなる協力も惜しまないとの事だった。 この時、天界の女神アルダト・リリーはマリアリアの祈りにいつでも応えられる様、彼女に特別に直通回線を開いていたのだった。「女神様は私達と共におられるのです。どうか、アレックス様も私に力をお貸し下さいませ」「まぁ、君の様な美しい女性の頼みを聞くのが嫌な理由じゃないが……これも女神様からのお告げかい?」 アレックス王子が含みのある笑みを口元に浮かべながらマリアリアに尋ねる。すると「勇者ガルドリックの確保にご協力頂ければ……女神様の奇跡は思うがままと仰っておられます」 マリアリアが心の中で女神アルダト・リリーに確認を取りながらアレックス王子の質問に答える。 天界の女神がここまで具体的に人間の意向に付き合う事はまず無い。 第一、神の力による頻繁な介入は異世界の歴史を狂わせバタフライエフェクトを誘発する遠因にもなりえる。 異世界の管理を任されている異世界管理課の女神レアであればまず取らない強硬手段なのだ。 しかし、自身の残業をいち早く片付けたいアルダト・リリーには手段を選んでいる余裕は無
last updateLast Updated : 2026-10-14
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ローランド王国

 冒険者はこの世界における便利屋であり魔物絡みのトラブルを解決してくれる需要に困らない売り手市場の業種である。 その中でも高ランクに位置する一流冒険者達は世界各国でも喉から手が出るほど欲しい希少な存在なのだ。 従って、高ランク冒険者は国境通過も比較的楽になのが一般的とされている。冒険者が高ランクとなる為には単なる個人戦闘力が高いという指標だけでは無く、品行方正である事や仕事の完遂率、冒険者仲間からの評判等から顧客満足度等々全てを含めて総合的に判断されるのだ。 間違っても、最初の適性試験で規格外の戦闘力を発揮したから高ランクになるという様な単純な物差しで測られる事は決して無いのである。 ローランド王国の国境は巨大な門構えを見せており街道から山脈に向かって延々と城壁が築かれている。 国境を丸々城壁で守っているとは考えにくいが、国境の門を通らずに入国するとしたら大きく迂回しなければならず密入国出来るにせよ大分骨が折れる事だろう。 エリスフィーナ達パーティーはガルドリックを先頭に国境通過の列に並ぶ。「よ〜し、通ってヨシ!」 国境での警備に就く、ローランド王国の完全武装の兵士二人が国境を通過したい人々の人列を次々と捌いていく。「皆、今のうちに冒険者証を見えるようにしておけ。その方がスムーズに済む」 ガルドリックが皆に首に下げているはずの冒険者証を予め出しておく様に指示する。これはコンビニのレジ等で事前にポイントカードや財布、スマホのアプリ画面を開いておく事に近い。 自分の番が回ってきて初めて準備しだすのとではお互いの手間が格段に変わるし、順番待ちの列も早くハケさせる事が出来る。 治安の悪い場所ではその限りでは無いが、早く通りたい通行者側と仕事をスムーズにこなしたい警備兵の利害は一致しているため、こういった気遣いもスムーズに旅を進めるコツなのてある。「へぇ〜、流石は勇者様達なんだな。冒険者証が金ピカだぜ」 ヴァイスがガルドリックやメルティーローズ、クレスの首から下げている冒険者証をまじまじと見て感嘆の声を上げる。 彼等は皆、通常の最上位とされているAランクの冒険者証を下げている。ただ一人を除いて……「ても、エリスフィーナさんは私達と一緒なんだね〜」 エイミーの話通り、後から勇者パーティーに参加したエリスフィーナの冒険者証は銅色のまま、駆け出し
last updateLast Updated : 2026-10-18
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待ち伏せ

 一方、森の中茂みの中に身を潜めて獲物を待っていた集団は予想外の敵の反応に面食らっていた。「射撃止め! 撃つのをやめろ! 俺達が斬り込むから撃つな!」 茂みの中でリーダーらしい髭面の中年男性が仲間に叫ぶ。彼の中では完全な奇襲となった初撃で前衛の見張りを仕留めて混乱させる算段だった。 しかし、見張りの二人はこちらの奇襲を予見したかの様に第一撃を避けてしまった。リーダーの目論見であった初撃で混乱させて押し切る方法はすっかり頓挫してしまっていた。「どうなってんだ? 俺達の事バレてんのか?」 奇襲したと思っていた絶対的優位が揺らいだ瞬間、リーダーの判断には迷いと混乱が生じていた。そして次の瞬間にはーゴオオオオッ!ー 魔法の火球が放物線を描いて彼らの頭上に向かってきた。「うわああっ!」「逃げろ!」「こっちに来るぞ!」 同じ様に茂みに潜んで突入の機会を伺っていた仲間達が自分達目掛けて飛んでくる巨大な火球に逃げ腰になっている。「狼狽えるな! 弾速は遅い、軌道を見て範囲外に逃げろ!」 リーダーが慌てる部下達に指示を飛ばした次の瞬間ーバッ! ババババババッ!ー 巨大な火球が無数の小さな火球に分かれ待ち伏せをしていた部下達の頭上に降り注いだのだった。ードドドドドォーン!ー「ぎゃあ!」「ひいっ!」「熱い!」「うわあっ!」小さな火球は威力こそ小さいが彼等を無力化させるには十分な効果を発揮していた。「くそが! こうなったら獲物だけは頂いて帰るぜ! 野郎ども! お宝を生け捕りにしろ!」 難を逃れた髭面の男が他にも動けそうな部下達に命令を下す。「うおらあっ!」「逃がすな!」「捕まえろ!」 火球からなんとか逃れた男達が短剣を手に伏せているはずのエリスフィーナとエイミーに襲いかかる。だがードスッ!ー「ぎゃあっ!」 先頭の男の肩口に矢が刺さる。エリスフィーナは伏せた体勢から弓を水平に持ち何とか反撃を試みていたのだった。「怯むな! 連射は出来ん、数で圧しろ!」 リーダーが動ける部下達に指示を続ける。彼の声は街道の反対側にも届き「今、捕まえてやる!」「相手は小娘二人だ!」「挟み撃ちだ!」 革鎧に身を包んだ盗賊風の男達がエリスフィーナとエイミーに殺到する。「エリスフィーナさん、どうすれば……?」 立ち上がったエイミーが同じく立ち
last updateLast Updated : 2026-10-19
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王都セレスティア

 盗賊団に襲われたエリスフィーナ達はなんとか盗賊達を退けて王都への旅路に戻る事が出来ていた。 捕まえた盗賊二人は街まで捕縛したまま連れ歩くのも面倒という話になり、ガルドリックの判断で野に放つ事にした。 しかし、ただの釈放では無く、後ろ手に縛ったまま不自由な状態での釈放となった。 これでは魔物や他の盗賊に襲われれば何も出来ずに餌食になってしまう。相当に運が良くなければ助かる事は無いだろう。「くそ、てめえら覚えてやがれ!」「ガキどもの分際でふざけやがって! 覚えてろ!」 それでも盗賊二人は一縷の望みをかけて、ガルドリック達に悪態をつきながら人気のある集落を求めて街道を駆けていくのであった。 盗賊達に襲われてから数日、森を抜けた先に白い城壁に囲まれた大都市がエリスフィーナ達の前に現れた。 都市に近付いてきたせいか冒険者や商人達の姿も頻繁に見かける様になってきていたが、こうして大都市が目の前に現れると流石に異国にやってきたという実感が湧いてきていた。 都市の外まで人々の喧騒が聞こえてくる辺り、相当に活気に溢れた大都市である事が伺える。 アトレイス公都が地方の県庁所在地程度の賑わいとするならローランド王都は文字通りの大都会と言えた。「さ〜て、早速酒場行こうぜ! メシだメシだ!」 ようやく辿り着いた大都会を前にヴァイスが流行る気持ちを抑えるつもりは無いらしい。「私は早くお風呂入りたいです……」「私も〜! 汗ばんじゃって気持ち悪い〜!」「ローランド王都には大規模な公衆浴場があったはず……」 ヴァイスパーティーの女性陣ソフィー、エイミー、メディナの三人は皆が口を揃えてお風呂行きを選択している。「なんだよ、皆揃って。腹が減ったら戦出来ないだろ?」 あくまで酒と食事を優先したいヴァイスだったがーポンポンー「ヴァイス、こういう時は長いものに巻かれておいた方が良いぞ……」 ガルドリックがヴァイスの頭に手を乗せて年長者としての処世術を説く。「エリィもお風呂が良いでしょ? 貴女、公衆浴場初めてじゃない?」 王都に続く道を歩きながらメルティーローズがエリスフィーナに尋ねる。「……公衆浴場は話でしか聞いた事無くて……どういう所なんですか?」 自宅の浴室しか知らないエリスフィーナにとって公衆浴場など想像も付かない様だ。「公衆浴場はねぇ、でっかい浴
last updateLast Updated : 2026-10-21
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