ログイン現世で病気により若くして亡くなってしまった少女は来世となる異世界で不老が約束されたハイエルフとして魔王と勇者が戦う異世界で長生きを目指して生きていきます。
もっと見る「う〜ん……」
少女が目を覚ますと、そこには知らない天井が広がっていた。だが、いつもの室内灯は無く本当の白一色……。 少女はいつも通り目を開けて周りを確認するが…… (あれ……?) 口に突っ込まれていた呼吸器の管が無い。反射的に口元に手を添えるが、そこには何も……鼻から入れられていた酸素吸入器の管も何も無かった。 「やっと取ってくれたんだ……」 口からの酸素吸入はともかく鼻に管を入れられるのは想像以上に苦痛だった。 なんだか鼻水ジュルジュル出てくるし酸素入る以上に余計に息苦しかった。 大きな声では言えないが、これ考えた奴死ねとベッドの上でいつも思っていた。 身体に何も管がつけられていない事が分かった少女は起き上がって周りを見回してみた。 (夢……?) 周りは天井どころか壁も窓も何も無い。本当の白一色……。夢の割には自分をきちんと認識できているのだから…… (あ〜、明晰夢か……) たまに見る夢の世界。歩いたり走ったり割と自由に出来る貴重な時間だった。 夢によっては覚めてほしくないと思うのだが……今回は不思議に自分の身体も自覚出来ている。 (なんだか、明晰夢にしては随分本当みたい……) いつも病室で着ているパジャマ姿だ。明晰夢なのにこんなに現実染みているのも珍しい気がする。 「あ〜、あ〜」 声もきちんと出るし息も苦しくない。間違いなく健康だった頃の自分だ。 「斎藤陽菜さんですね。ようこそいらっしゃいました」 いきなり後ろから声を掛けられ、ビックリした少女は声の主の方に振り返る。 (まぁ、夢ならいきなり誰か出てきてもおかしくないか……) 少女は相変わらずの一人称視点である事を確認していた。明晰夢の時でも唐突な場面転換やら視点移動やらあるからだ。 もちろん他の登場人物が現れる事も往々にしてあるが……声を掛けてきたのは白いドレスを着た金髪の女性だった。その姿はまさに 「女神様……?」 ステレオタイプな女神の姿そのものだった。 「私は天界の女神、転生課のアルダトリリーと申します。立ち話も何ですから」 ーパアアァ……ー 「こちらどうぞ。遠慮なさらずお掛け下さい」 アルダトリリーと名乗る女神は直ぐ様ソファーとテーブルを白い空間に生み出して少女に座る様に促してきた。 「は、はい。お邪魔します」 少女は促されるままソファーに腰を下ろす。 「早速なんですが斎藤陽菜さん、貴女は死にました」 かなり唐突に衝撃的な事実をぶっちゃけてきた女神に対し少女は (夢にしては随分現実っぽいな……) いつもの病室からかけ離れた今の世界は明晰夢の一種としか思えていなかった。 「貴方の来世ですが……何か希望はお有りですか?」 「健康で長生き出来る人生が良いかなぁ」 少女は割と即答で考え無しに女神の問いに自身の希望を口にした。 「あの……それだけで? 何か力が欲しいとかチートが欲しいとかそういうのは?」 女神は少女の反応が意外だったのか、困惑した様子で質問を追加してきたが…… 「特にないです。健康で自由に生きられるなら」 少女は即断即決で返答する。これは無欲とか思いつかないでは無く本当にこれが少女の希望なのだから仕方が無い。 「では……病気にならない健康体の身体にしましょう。それに転生先はハイエルフですからね。不老で健康は約束出来ます」 女神は既に転生先を決めていた様で少女に選択の余地は無かったが…… (夢だけど……少しくらい夢見たって良いよね) 少女は今の夢が覚めたら、また病室での毎日が始まるものと思っていたので、転生先とかあまり細かい事は気にしていなかった。 「言っておきますが、来世に現世の記憶は持ち越せません。その辺りはご了承下さいね。それでは異世界管理課の女神の元に行って下さい」 ーパアアァァー 女神が少女に手を向けると少女は光に包まれ、あっという間に場面転換を果たしていた。 (おお、さすが夢。なんでも有りだな) 少女は改めて明晰夢の出鱈目さに感嘆していた。 次に少女が立っていたのは多数の青い球体が並ぶ白い空間だった。まるでボウリングの球が規則正しく並べられている様な不思議な空間……。 「あの〜、転生者の方ですか?」 今度少女に声を掛けてきたのは白いドレスを着た少女……金髪なのは変わらないが年端も行かない幼女だった。 「わたしは異世界管理課の女神、レアと申します! 貴方の転生先の異世界はこちらです、どーぞ!」 レアと名乗る幼女の女神は背中の羽根をパタパタさせながら少女の先導を始めた。 「斎藤陽菜さんの行く異世界は魔王と勇者が戦いを繰り広げる世界です! 何かご質問はありますか?」 レアは先導しながら少女に転生先の説明を始める。全てが初耳な少女は 「あー、そうなんですか〜。大丈夫大丈夫、健康なら何でも」 相変わらず明晰夢だと思っている少女は真面目に考えていなかった。 「斎藤陽菜さんの転生先はこちらの異世界です!」 レアが案内してきた異世界の青い球体は黒い靄みたいなモノが纏わりついていた。 「転生先のハイエルフはこのままだと早死にしてしまうんです! 斎藤陽菜さん、貴方にはその運命を跳ね除けて世界の平和に貢献する使命があります! 頑張って下さいね!」 明晰夢の割には世界がなんだかしっかりしているな……と思い始めていた少女だが、彼女がそれを改めて再確認するより先に ーパアアァァー 幼女女神レアから放たれた光に少女は包まれ、視界があっという間に光で一杯になり、いつしか少女の視界も意識もあやふやになっていってしまうのだった。「アンタらちょっとツラ貸しなよ」 モヒカンとツーブロックに呼ばれて遅れてやってきた赤毛チリチリ頭の巨漢女ミスズと呼ばれる女の子が浴槽の外からこっち来いとジェスチャーをしている。 彼女の視線は明確にメルティーローズとエリスフィーナの二人に向けられていた。「あの人達、お二人のお知り合いですか?」 あからさまな風貌のミスズ達の言動にエイミー達は不安そうな顔でメルティーローズとミスズ達を見てくる。「ハァ〜、知り合いとかじゃないんだけど……ちょっと話してくるしかないか」 あまりに煩いミスズ達の言動に、落ち着いてお風呂にも入っていられないとウンザリしたメルティーローズは浴槽から上がってミスズ達の元に近付いていく。「あ、あの……私も行きます!」 そんなメルティーローズを放ってはおけないとエリスフィーナも後に続く。「アンタらも冒険者なら筋を通して貰おうか?」 ミスズに先導されて二人が連れられてきたのは高温の蒸し風呂エリア、所謂サウナであった。「おら、さっさと入れや!」 エリスフィーナとメルティーローズの左はモヒカン達に背中を押され無理矢理ミスズの後に続いてサウナ室に押し込まれた。ーモワッ!ー 部屋の中は三人だけで他に利用客の姿は無い。おそらくミスズ達が事前に人払いでもしていたのだろう。「ここであたしに根性見せたらアンタらを認めてやるよ」ードカッ!ー そう言うとミスズはサウナ室のひな壇上部に座ってしまった。ふと入り口を見るとさっきのモヒカンとツーブロックが見張りをしており誰も入れない様に立ち塞いでいる。「仕方ないわね……」 メルティーローズは諦めたのか彼女もサウナのベンチに腰を下ろし、エリスフィーナも仕方なく彼女の隣に腰を下ろす。 こうして公衆浴場のサウナ室にてはた迷惑な我慢比べが始められたのだった。 どれくらい時間が経っただろうか……。三人とも汗をダラダラ流して暑さに耐えていた。「おい、尻尾を巻いて逃げ出すなら今のうちだよ?」「じょーだん! こんなんで音を上げる訳ないでしょ?」 ミスズとメルティーローズが簡単なやり取りをするがお互いに出ていくつもりは無いらしい。 さらに時間が経った。異世界なので時計やテレビがある訳でも無く、時間は相対的なものとしか感じられない。 入り口を塞いでいるモヒカンとツーブロの二人もチラチラとサウナ室の中
エイミー達三人組と浴槽の中で合流したエリスフィーナとメルティーローズの二人は、先程洗い場にて絡んできた密林の女豹団を名乗る三人組についての話をしていた。「私達はそういう人見てないですけど……」 エイミーがそう話しながら他の二人を見るが、ソフィーもメディナも首を横に振って知らない素振りを見せる。「ところでクランって何ですか?」 エリスフィーナがずっと気になっていたらしい疑問について尋ねてきた。「クランってのはね? いくつかのパーティーが寄り集まった大きめの団体って言うか……冒険者互助会みたいなモン?」「それって町内会みたいな感じですか?」 メルティーローズの話にメディナが噛み砕いて理解しようとする。どうやら彼女の身近には町内会が存在している様だ。「まぁ、そんな感じ? 一つのパーティーで手に負えない仕事を皆で手伝ったり行方不明になったパーティーの救出に人員振り向けたり……」 冒険者のパーティー同士、仲間内でお互いが助け合ったりするのがクランだとメルティーローズが皆に説明していく。「それならクランってものすごくありがたいものなんじゃないですか?」 エイミーが率直な感想を口にする。しかし「まぁ、さっきのは表向きの話。実際は会費と称して上納金を巻き上げるだけだったり、初心者を食い物にする性質の悪いクランが多くてね」 メルティローズはクランと呼ばれるパーティーより大きな纏まりについて否定的な結論で締めてその説明を一段落させた。「だからエイミー達は特に気を付けなきゃ駄目よ。同じ女の子だからって誘われても十分注意して? あ!」 そこまで話したメルティーローズが大きな声を上げる。「ヴァイスにも注意しといて。女の子の中には色仕掛けで誘って男を食い物にする悪魔みたいな娘もいるんだから!」 異世界にはエイミー達みたいに冒険者で生計を立てようとする若い女の子が後を絶たない。 勿論、中には男を利用して金づるとして絞るだけ搾り取ってポイしようとする悪女の様な集団も存在するのである。 しかし、騙す相手を間違えれば因果応報が待っている為、現世のとある島国の様な舐めプムーブか必ずしも通用する訳では無い。「分かりました〜。ヴァイスったら単純だから可愛い子にホイホイ付いてっちゃうかもだから注意しときますね!」 大都会の治安の悪さを聞いたエイミー達は改めてローラ
「鎧とか武器とかはそっちの鍵付きロッカーに入れといた方が良いわよ。鍵掛けたら首から下げとけば安心よ?」 そう話しながら、メルティーローズはテキパキと洗濯に出す衣類を脱衣籠に入れていく。 エイミー達も慣れているのか彼女達は既に衣類を洗濯に出して大浴場へと入っていた。「すみません。鎧外すの時間掛かっちゃって……」 剣も弓も矢筒もあり、女性陣では一人プレートアーマー装備のエリスフィーナは入浴準備に時間が掛かっていた。「お待たせしました。すみません」 鎧や武器等全てをロッカーにしまったエリスフィーナは衣類を入れた脱衣籠を手にしている。「それじゃ、行きましょ。あっちが洗濯の受付だから」 同じく脱衣籠を抱えているメルティーローズが先導して洗濯の受付に向かう。「いらっしゃい。洗濯は一人穴開き銀貨一枚だからね」 洗濯の受付も従業員は近所のおばちゃんと言った風貌の女性達だ。受付し洗濯して干して乾かすまでが一連の流れ作業になっている。「よろしく〜♪」「よろしくお願いします」 脱衣籠と料金を受付のおばちゃんに渡し、二人はそのまま浴場へと向かっていく。ーガララッー メルティーローズが浴場入口の引き戸を開けると浴室から湯気がモワッと出てきた。 そんな浴場に入ったメルティーローズは辺りを見回し「さ、身体洗っちゃいましょ。そうしないと何も始まらないものね」 赤毛で癖のある長髪を揺らしながら洗い場へと向かう。 木製の椅子と桶が並ぶ洗い場には石鹸が置かれており、それを使って身体を洗う事が推奨されていた。「さ、エリィ。そこに座って。お姉さんが背中を流してあげるから」 メルティーローズは椅子をポンポン叩いてここ座れと合図を送る。そして、エリスフィーナが遠慮がちに椅子に座ると「それじゃ、頭から洗っちゃいましょーか♪」 石鹸を泡立てたメルティーローズは目の前に座るエリスフィーナを頭から顔、上半身まで丹念に洗い始めた。「え? あ、あの……ひゃっ!」 顔を洗われて泡で目が開けられないエリスフィーナを理不尽な暴力が襲う。ーゴシゴシ ムニュー 普通に洗ってるのかと思ったら不意にダイレクトアタックをかましてくる始末である。そんな二人が洗い場でじゃれ合っていると「おうおう! 他所モンがデカい顔してくれてんじゃねーか!」「お前等、どこのクランのモンだ! あぁん?
盗賊団に襲われたエリスフィーナ達はなんとか盗賊達を退けて王都への旅路に戻る事が出来ていた。 捕まえた盗賊二人は街まで捕縛したまま連れ歩くのも面倒という話になり、ガルドリックの判断で野に放つ事にした。 しかし、ただの釈放では無く、後ろ手に縛ったまま不自由な状態での釈放となった。 これでは魔物や他の盗賊に襲われれば何も出来ずに餌食になってしまう。相当に運が良くなければ助かる事は無いだろう。「くそ、てめえら覚えてやがれ!」「ガキどもの分際でふざけやがって! 覚えてろ!」 それでも盗賊二人は一縷の望みをかけて、ガルドリック達に悪態をつきながら人気のある集落を求めて街道を駆けていくのであった。 盗賊達に襲われてから数日、森を抜けた先に白い城壁に囲まれた大都市がエリスフィーナ達の前に現れた。 都市に近付いてきたせいか冒険者や商人達の姿も頻繁に見かける様になってきていたが、こうして大都市が目の前に現れると流石に異国にやってきたという実感が湧いてきていた。 都市の外まで人々の喧騒が聞こえてくる辺り、相当に活気に溢れた大都市である事が伺える。 アトレイス公都が地方の県庁所在地程度の賑わいとするならローランド王都は文字通りの大都会と言えた。「さ〜て、早速酒場行こうぜ! メシだメシだ!」 ようやく辿り着いた大都会を前にヴァイスが流行る気持ちを抑えるつもりは無いらしい。「私は早くお風呂入りたいです……」「私も〜! 汗ばんじゃって気持ち悪い〜!」「ローランド王都には大規模な公衆浴場があったはず……」 ヴァイスパーティーの女性陣ソフィー、エイミー、メディナの三人は皆が口を揃えてお風呂行きを選択している。「なんだよ、皆揃って。腹が減ったら戦出来ないだろ?」 あくまで酒と食事を優先したいヴァイスだったがーポンポンー「ヴァイス、こういう時は長いものに巻かれておいた方が良いぞ……」 ガルドリックがヴァイスの頭に手を乗せて年長者としての処世術を説く。「エリィもお風呂が良いでしょ? 貴女、公衆浴場初めてじゃない?」 王都に続く道を歩きながらメルティーローズがエリスフィーナに尋ねる。「……公衆浴場は話でしか聞いた事無くて……どういう所なんですか?」 自宅の浴室しか知らないエリスフィーナにとって公衆浴場など想像も付かない様だ。「公衆浴場はねぇ、でっかい浴