All Chapters of 女神様にハイエルフとして長生きする様お願いされました。: Chapter 11 - Chapter 20

65 Chapters

アトレイス公国

 魔石鉱山での冒険者の救助が終わったエリスフィーナ達勇者パーティーは、助け出した救助者達と共にアトレイス公国に到着していた。「あ、皆無事だったんだ! 良かった〜!」 街道で助けを求めてきた冒険者の少女とも合流し彼等はガルドリック達に礼を行って去っていった。 出来ればエリスフィーナの冒険者登録をしに冒険者ギルドに行きたかったのだが、今の彼等はホワイトクラウン国王からの使命を帯びている身だ。 ガルドリック達は寄り道する事無く、そのままアトレイス公国の城へと向かうのだった。 アトレイス城は小国の城というだけあり、また平地が少ない立地条件もあるのか高原の貴族の別邸といった規模の城だった。 城壁はあるが、城は地方の砦といった具合の小規模なものであるが、人間の大規模な街やお城が初めてのエリスフィーナにとっては「うわあ……」 全てが新鮮で物珍しかった。キョロキョロと興味津々で危なっかしく、街に入るなり彼女はメルティーローズに手を引かれて連行されていた。 大事な役目があるというのに、こんなところで盗賊や奴隷商に攫われたりなんかされたら目も当てられない。 異世界には様々な世界があれど盗賊・山賊・非合法な奴隷商などは大体がつきもので、エリスフィーナなどの希少なハイエルフは高額で取引されてもおかしくはない上玉である。 そんな彼女が闇夜の光に集まる羽虫の様にフラフラなんかさせていたら身体がいくつあっても足りるはずがない。そんな世間知らずなお姫様ムーブをしている彼女に「これだから田舎モンは恥ずかしいんだよ。俺達は物見遊山してんじゃねーんだからよ」 相変わらずエリスフィーナの何が気に入らないのか、キリヤ王子は事ある事に突っかかってきていた。「ちょっと、止めなさいよ〜。この子だってわざとやってる訳じゃないんだから〜」 ちょっかいかけてくる悪ガキから女友達を守る親友の女の子みたいなポジションに落ち着いたメルティーローズはエリスフィーナをキリヤ王子からガッチリガードするのが日常となりつつあった。 エルフの里を出てこのアトレイス城に来るまで一週間は経過していないはずだが、エリスフィーナはすっかり勇者パーティーの一人として受け入れられていた。 そんなエリスフィーナを含めた勇者パーティーはホワイトクラウン王国からの特使の名目もあり、第七王子のキリヤも居る事で完全なVIP
last updateLast Updated : 2026-09-15
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冒険者登録

「ねぇ、私暇だから街に出て冒険者ギルド連れてってあげようか?」 たっぷりゴロゴロを堪能して飽きたのか、メルティーローズがエリスフィーナに街へ繰り出す提案をしてきた。 人間の街に興味はあったが新入りなだけに誰にも言い出せなかったエリスフィーナにとっては渡りに船なのだが……「あの、街に出て大丈夫なのでしょうか?」 リーダーであるガルドリックはいつの間にかマリアリアと一緒に席を外していた。確か、身体がなまるから剣を振りに行くとの事だったが……。 そんな訳で室内に残っていたのはエリスフィーナ、メルティーローズ、クレス、キリヤ王子の四人だけだった。「それじゃ行きましょ! ほらほら、立って立って♪」 メルティーローズの折角の厚意なのでエリスフィーナも断れず立ち上がる。そんなエリスフィーナを見たニコニコ顔のメルティローズは「そんじゃちょっと言ってくるわね〜♪」 エリスフィーナの手を引いて残った二人に挨拶しながら部屋から出て行こうとする。「暗くならない内に帰ってくるんですよ?」 クレスはお父さんかお母さんみたいな反応で二人を見送ってきた。 一方のキリヤ王子は寝てるのか寝てないのか、クークーと呼吸音のみが聞こえるだけでメルティーローズの挨拶には無反応そのものだった。 クレスとキリヤ王子でどんな会話をするのか気にならなくは無いが、エリスフィーナはメルティーローズに連れられるまま客間を後にしていくのだった。「うわぁ……!」 生まれてこの方エルフの里暮らしだったエリスフィーナにとって様々な人々が行き交うアトレイス公国の城下町は何もかもが新鮮に映った。 大通りに列を連ねる酒場の賑わいに色とりどりの果物が並ぶ生鮮市場。 鉄の匂いと熱気を感じる鍛冶屋や武器防具屋、そして街角にひっそりと佇む魔導具屋など多彩な商店が並んでいた。「あ、あれ何ですか?」 デパートに初めて来た四歳児の様に辺りをキョロキョロしっぱなしのエリスフィーナはフラフラと危なっかしい。そんな彼女の手綱を握りながら「あ〜、あれは雑貨屋ね。旅に便利な物が色々売ってるの。それより!」 メルティローズはエリスフィーナの手をしっかり握り勝手に何処かへ行かないように注意している。 今回街に出てきた本来の目的はエリスフィーナの冒険者登録である。メルティーローズは買い物を早く済ませたい母親のノリでエリス
last updateLast Updated : 2026-09-15
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いつもの

 とりあえず冒険者ギルドでの冒険者登録を終えたエリスフィーナが次に連れられて来たのは街の雑貨屋だった。 メルティローズは火起こしセットやら旅人用のマントやら木製の皿とカトラリーセット等、冒険者が野外で過ごす際に持っていると便利な物をエリスフィーナに次々と買い与えていった。「メルティーローズさん、あの……」 たまらず恐縮して何かを言おうとするエリスフィーナだが、メルティーローズは「先輩の言う事は大人しく聞いとくものよ?」 強引な先輩風を吹かせる事でエリスフィーナを黙らせてしまうのだった。 買ったものを道具袋に詰め雑貨屋を出た二人が次の店に向かおうと街の大通りを歩いていると「おう、お嬢さん方。ちょっと俺達と付き合って貰おうか」 冒険者風の男達が五人、エリスフィーナ達二人を取り囲む様に近付いてきた。「なーに、あなた達。人さらいかしら?」 メルティーローズが魔術師の杖に魔力を込めながら男達に尋ねる。「人聞きが悪いなぁ。良い仕事があるから紹介してやろうってんだよ」「そうそう。そのエルフならしっかり稼げるぜ。へっへっへ……」「もちろん、俺達にも紹介料払って貰うけどな。大金稼げるんだから悪い話じゃねぇだろ?」 そう話しながら俺達はジリジリと包囲を狭めてくる。「お生憎だけど、私達は別の仕事の途中なの。掛け持ちしてる余裕なんか無いわ」 答えるメルティーローズに焦りなどは無く、大の男達五人を前にしても平静そのものだった。一方のエリスフィーナは不安そうに彼女に寄り添っている。「そう言うなよ。簡単に金が手に入るっつってんだからよ」 エリスフィーナ達の正面に立ちはだかるスキンヘッドの髭面大男がニヤニヤしながら近付いてくる。 それに合わせて周りの男達も包囲を着実に詰めてきている。その時「それ以上近づいたら痛い目見るからね!」 メルティーローズが警告を発した。おそらく今の間合いが彼女にとって安全に魔法を行使出来る最低限の距離なのだろう。 エリスフィーナも自分に出来る事を考えるが……剣や蹴りでの接近戦か精霊魔法……今なら屋外だから風の精霊シルフか、ゴブリン戦の時にも呼び出した水の精霊ウンディーネか。 しかし、メルティーローズに確認せずに行動するのは彼女にとっての不測の事態を招いてしまうかもしれない。「我に集いし魔力よ、我が敵を打ち払え……」 メ
last updateLast Updated : 2026-09-16
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理想とのギャップ

「ウンディーネさん、水をありったけ集めて下さい! 今すぐに!」 エリスフィーナは呼び出したウンディーネにすぐに指示を出した。ーポコンポコン……ー ウンディーネは頭上に両手を掲げるとそこに水の球体を生み出し周囲からも水を集め始めた。 後ろでは火球、前では水球が生成されている今の状況にスキンヘッド男は「な、何だコレ? 何がどうなってんだ?」 状況に置いていかれて前後をキョロキョロと見比べている。そんな彼にエリスフィーナは「危ないから下がって下さい! とにかく早く後ろに下がって……!」 自分の後ろに下がる様に身振り手振りでスキンヘッド男に伝える。「これでも食らいやがれ! ファイアーボール!」ーゴオオオオッ!ー キリヤ王子は魔法が撃てるようになるなりゴロツキ達の様子も確認せずに火球魔法をブッ放してきた。「ウンディーネさん、あの火球に水球をぶつけて下さい!」 エリスフィーナはウンディーネに集めた水球をキリヤ王子の放った火球にぶつける様指示を出した。ーズオオオッ!ー 火球に比べて水球はやや小さいが果たしてどれほど相殺できるか……。ウンディーネが水球を放つと同時に「皆、伏せて! マジックシールド!」ーキュイイイィッ!ー メルティーローズの生み出した半球形のドーム状の緑色の防壁が辺りの人や建物、屋台などを覆っていく。そしてーバシュウウウゥゥ……ー 火球と水球がぶつかり辺りが白い水蒸気で充満していく。ーボンッ!ー 相殺しきれなかった火球の残り火が破裂しキリヤ王子の放った魔法は小さな爆発を発生させたに過ぎなかった。 「はぁ……良かった」 とりあえず辺りに被害らしいものは何もなく「な、なんだアイツ。街中でこんな威力の魔法使うなんて正気かよ」「マジありえねー」「何考えてんだ、アイツ……」「た、助かった……」「死ぬかと思ったぜ。ふぅ……」 ゴロツキ達は一歩間違えれば重症か、死んでいたかもしれない紙一重な状況に皆が胸をなで下ろしていた。「エルフの姉ちゃん、すまなかった! 俺達、お前を奴隷商に売ろうとしてたんだ。すまん!」 地面に伏せながらスキンヘッド髭面大男がエリスフィーナに謝ってきた。 彼等が人さらいだとは思っていたが、まさか自分達の非を素直に認めて謝ってくるとは流石に夢にも思っていなかった。「ちょっとぉ! アンタ少しは
last updateLast Updated : 2026-09-16
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木陰での女子会

 木陰で休んでいるエリスフィーナとメルティーローズの二人、草原を吹く風は草の香りを運んできてなんとも心地良い。 状況が許すなら湖で水浴びといきたいところだが……残念ながらここは街から近い上に準備も何も無い為、それは諦めるしか無かった。(…………) エリスフィーナは初めて手にした冒険者証を見て物思いに耽っている。そんな彼女に「これ食べる?」 メルティーローズが紙袋から肉の串焼きを取り出しエリスフィーナに差し出してきた。 森の民であるエルフ達も一応は雑食である。特にエリスフィーナの両親は人間社会と馴染みが深いので彼女の食生活も人間のそれと大差は無かった。「ねぇ、あなたの精霊さんって何が出来るの?」 肉の串焼きを齧りながらどこからか取り出した果実酒の瓶も見せびらかし、メルティーローズが酒の肴に精霊魔法について尋ねてきた。「水の精霊ウンディーネさんはですね、水を集められますし、こちらから魔力を込めれば氷にしたり身体を癒したり出来ます」 エリスフィーナは特に仲良くしている水の精霊ウンディーネについて話し始める。 精霊魔法は一度に一体が原則なので並列に複数使役したりは不可能なのだ。 そして他に召喚出来る風の精霊シルフや光の精霊ウィル・オー・ウィスプの話へと続く。「後は、あまりウンディーネさんやシルフさん達が良い顔しないんですけど……」 その気さえあれば火の精霊サラマンダーや土の精霊ノームを呼び出す事も出来ると付け加えた。 しかし、ギャルゲーでは無いにしろ精霊達にも相性があり、対属性なウンディーネとサラマンダー、シルフとノームでは片方を頻繁に呼び出してたりすると片方が拗ねてしまうのだ。「それじゃ、あなたウンディーネばかり呼び出してるから……」「サラマンダーさんには呼び出してもそっぽを向かれてしまうでしょうね……」 少ししょんぼりしながらメルティーローズの指摘にエリスフィーナが答える。 長い耳が垂れ下がり板挟みな苦労が垣間見えるが……「でも、八方美人も良くないと母からは聞いています。それにきちんと誠意で接すれば精霊さん達も分かってくれると信じてますから……」 と、エリスフィーナは理想論で締めくくったが実際問題、彼女が呼び出せて戦力となるのは水の精霊、風の精霊、光の精霊だろう。 また彼女自身剣技も蹴り技も扱え、まだ使って見せた事は無いが弓
last updateLast Updated : 2026-09-16
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連邦会議

街での用事を終わらせたエリスフィーナとメルティーローズの二人が城に帰って来た時には既に日が落ちてしまっていた。 木陰での女子トークが思った以上に長引いてしまった事が原因なのだが、当の張本人は涼しい顔である。そんな二人に 「お二人共、帰りが遅いですよ。行くなら行くできちんと皆に言って頂かないと……」 委員長基質のマリアリアからお叱りを受ける結果になってしまった。 留守番のクレスに伝言を伝えたと弁明するメルティーローズに 「悪い悪い、僕も街の本屋に出てしまってね。ガルドリック達とは行き違いになってしまったよ。ハハハ……」 悪びれもしない様子のクレスの姿にエリスフィーナはなんとなくメルティーローズの言っていたクレスに関する人物評の正しさを再認識するのだった。 「良いですか? 貴女方も勇者パーティーの一員としてホワイトクラウン王国の看板を背負っていると自覚してですね……」 これはお説教が長くなるパターンである。なんとかして逃げられないかとエリスフィーナもメルティーローズも目が泳ぎ、話を中断出来るキッカケを必死に探し始めた。 「二人とも、こんなご時世だ。何か用事があるなら俺達を頼ってくれ。マリアリアも、それなら良いだろ?」 助け舟を出してくれたのはガルドリックだ。彼はマリアリアの肩に手を乗せて彼女を嗜める様にして場を収めるつもりらしい。 「そいつら、痛い目見ないと分からねーんじゃねーか? 俺の手助けも無碍にしやがって」 更に口を挟んできたのはキリヤ王子だ。 ゴロツキ相手の無双を邪魔したからか、それとも予想通りのリアクションをしなかったからなのか。 キリヤ王子はメルティーローズ達……特にエリスフィーナに対する当たりが強くなっていた。 だが、そんな日常も期日まで何事も無く過ぎ去っていき、アトレイス連邦内にある各地の有力な集落のエルフ達の長、ドワーフ王、ホビット達の集落の村長達が一堂に会する連邦会議の日がやってきたのだった。 会議はアトレイス城の円卓が置かれた会議室で行われる事となった。 正面にアトレイス公王とその重鎮達、向かって左側にガルドリック達勇者パーティーで席に着く事になった。 「本日は遠路遥々我がアトレイス連邦の合同会議にお集まり下さいまして誠に御礼申し上げます」 参加者が皆集まった円卓にてアトレ
last updateLast Updated : 2026-09-16
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尻拭い

「ま、待って下さい!」 大きな声を上げたのはさっきまでオロオロしていたエリスフィーナだった。「皆さんのお力添えが無ければホワイトクラウン王国は落とされてしまうんです!」 彼女が話すのはホワイトクラウン王国軍と魔王軍がぶつかった場合、彼我兵力差から九分九厘王国軍が負けるというものだった。 そして王国を落とした魔王軍を止める者は無く、自身の故郷である精霊神が祀られているエルフの里、そしてアトレイス連邦も魔王軍に焼き尽くされるであろう現実の推移であった。 これはガルドリックとエリスフィーナが事前に打ち合わせていた通りの演説内容であり、彼女が口から出任せで述べた訳では無い。「ですが、貴方方に御協力頂ければ魔王軍を止められる可能性があります」「王国軍と魔王軍がぶつかっている間に我々勇者パーティーで魔王の拠点に殴り込みをかけて魔王を討ち取ります。貴方方が死力を尽くすのであれば俺達も安心して魔王と戦えます」 エリスフィーナの説明にガルドリックが補足して皆に説明する。「なるほど……そういう話であれば勝算はありそうだな……」「それに、この気を逃しては事態が今以上に悪化してしまうかもしれん」「しかし、その方はハイエルフとお見受けするが……なぜ自分から危険な戦線に赴かれるのか」 キリヤ王子の一喝直後とは打って変わってエルフの長老達全員協力姿勢に転換し始めた。「私は精霊神様から役目を仰せ使っています。それに、そうする事が故郷の皆さんを助ける力になると思いますから」 そんな嘘偽りの無いエリスフィーナの言葉に「分かった。ハイエルフを矢面に立たせて我等が隠れているではエルフとしても示しが付かん」「では私達も早く帰って若者達を招集しなければ」「それならばこうしてはいられませんな。動くのならば少しでも早い方が良い」 エルフの長老達は帰り支度に取り掛かるが、さっきとは雰囲気がまるで違っている。そんな中「では私も皆の所に帰るとしよう。我々ドワーフは白兵戦が専門だがよろしいか?」 ドワーフ王も戦力を抽出してくれる様だ。そんな彼にエリスフィーナも「ありがとうございます。とても助かります」 笑顔でドワーフ王の気持ちに応えるのだった。そして会議が終わりかけても一言も発さない一人のエルフの老人が居た。「我々は……我々も皆と共に戦って良いのか?」 そう話すのは浅黒い
last updateLast Updated : 2026-09-16
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山越えからの奇襲

「まぁ、確かに正面突破よりはうまくいきそうだけど……」「兵は脆道なりと言います。的を欺くには味方からと言ったところでしょうか」 メルティーローズとクレスの二人はガルドリック達の説明を聞いて納得する雰囲気になっている。しかし「難所抜けてのラスダンなんかどんなクソゲーだよ! 俺は反対だ! お前もそう思うだろ?」 キリヤ王子は意味不明な単語でまくし立てながらエリスフィーナに同意を迫ってきた。 別に多数決ではないのだが、キリヤ王子としてはどうしても味方が欲しいらしい。「私は……あの、ガルドリックさんの決定に従います」 判断材料に乏しく新人なエリスフィーナはリーダーの意見に従う言葉を口にする。アテが外れたキリヤ王子は「山越えなんてハンニバル気取りかよ! 俺は反対だからな!」 キリヤ王子はそう言うと勢いよく席を立ちーバタン!ー 部屋の扉を力任せに閉めてどこかへ行ってしまった。その光景を呆れた顔で見送ったガルドリックは「道案内が見つからなくても三日後にはここを発つ。それまでに雪山用の準備をしておいてくれ」 ガルドリックは残った皆に雪山に登るための準備をする様に皆に指示を出す。 彼が言うには肌着など肌に触れる衣服は絹製の物に変えておく様に勧めてきた。「え? アンタそういう趣味だったの……?」 メルティーローズが反射的に茶化すが「雪山での木綿素材は死ねるぞ。ブーツや手袋も革製のしっかりした作りの物を用意しておけ」 ガルドリックは意に介さず、皆に説明を続ける。雪山など未経験なエリスフィーナはただ頷く事しか出来なかった。 全体会議の日から三日、ガルドリック達は予定通りアトレイス公国の南西に位置する山を越えて直接魔族領の背面に潜入するルートへの旅を始めた。 メンバー達は皆がガルドリックの説明に従った寒冷地用の衣服へと変更していた。キリヤ王子ただ一人を除いて……。 アトレイス公国は魔族領とは山脈で隔てられており、山越えをする魔物等も殆ど居ないため公国内は平和そのものだ。 山越えに使う山脈へ続く道は高地だからか気候も涼しく牧草地や農耕地が広がる所謂アルプスの様な光景だった。「この辺りはホントのどかよね〜、魔王が動き出してるなんて信じられないくらい」「優先順位が低いのでしょう。田舎に攻め込む位なら他の大都市を落とした方が世界を手に入れるには最適だ
last updateLast Updated : 2026-09-16
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真打ち

「あれ? なんだか面白そうな事してたんじゃん! 俺も混ぜてくれよ!」 それまで何をしていたのか、どこにいたのかも分からなかったキリヤ王子が双剣を手に皆が居る広場にやってきていた。彼が話す面白そうな事とはエリスフィーナとの手合わせの事だろうが……「ああ、キリヤ王子か。それはもう終わったんだ。彼女の立ち位置は決まっ……」「そんじゃあ、次は俺が相手してやるよ。なるべく手加減はするから安心しな」 ガルドリックの話を食い気味に遮ったキリヤ王子は口元に笑みを浮かべながらエリスフィーナに近付いてくる。「ほら、かかって来いよ」 キリヤ王子は双剣の片方で肩をポンポン叩きながら余裕たっぷりに言い放つ。そんな彼の様子にエリスフィーナは「え〜と……」 キリヤ王子とガルドリックを交互に見ながらオロオロしているが「すまないが、王子の相手をしてやってくれ。難しいかもしれないが……全力で構わない。後はこちらで処理する」 ガルドリックはエリスフィーナの肩に手を置いてそれだけ言うと他のメンバー達の所へと帰っていく。(仕方ないですね……) 連戦となるエリスフィーナが諦めて細剣を抜いたその時「お前の戦い方は割れてんだよ!」ーシャッ!ー 一気に距離を詰めてきたキリヤ王子は双剣の右袈裟斬りで斬りかかってきた。ーキィン!ー「うっ!」 エリスフィーナは細剣でキリヤ王子の剣を受け止める。そこに「胴ががら空きだぜ!」ーシャッ!ー キリヤ王子は左手で薙ぎ払いを放ってきた。ーキィン!ー エリスフィーナは細剣でキリヤの剣を受け流しつつ後方にステップし、細剣で薙ぎ払いも受け止めた。「これならどうだ! ハイエルフさんよぉ!」ーブォン! ブォン!ー キリヤ王子は続け様に双剣を振り回してくるが、その太刀筋は単純で威力そのものも大したモノでは無かった。(…………?) まるで子供が小枝を振り回している様な単調な動きにエリスフィーナは罠を疑い防戦一方に努めていた。そこに「お前の戦い方は先の先を取る先手必勝型! 先手を取らせなけりゃあこんなモンなんだよ!」 キリヤ王子の嘲笑混じりの決めつけが飛んできた。エリスフィーナとしては反撃のタイミングはいくらでもあったのだが……「よく受けてるがこれならどうだ?」ージャキッ!ー キリヤ王子は双剣を逆手に持ち替えると剣に魔力を込め始めた
last updateLast Updated : 2026-09-16
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大魔法

 エリスフィーナがウンディーネに水の壁を準備していた時、ガルドリック達もキリヤ王子に対する魔法防御の準備を急いでいた。「なんでこんな事になってんのよ」「キリヤ王子の手綱をきちんと引いておかなかったツケでしょうね」 メルティーローズとクレスの二人は愚痴りながらマジックシールドの準備を急ぐ。「ガルドリック、今光の壁を発動させるから心配しないで」「キリヤ王子がここまでこじらせてたとはな。もっと強く言って聞かせておくべきだった」 反対側にはマリアリアとガルドリックが位置して、神官が扱える防御魔法ホーリーウォールの発動を急いでいる。 ガルドリックは勇者パーティーのリーダーとして、キリヤ王子の王族という立場ゆえきちんとした社会人としての在り方を教育してこなかった事を悔やんでいた。 しかし、ガルドリックは知る由もないがキリヤ王子の傍若無人さの原因は現世からの転生者であるという優越感から来るものなのなのだ。 だから、ガルドリックがどう教育しようとキリヤ王子は変わらなかったであろう事は容易に推察される。 キリヤ王子を宥める方法はただ一つ、それは異世界全体で彼に忖度し接待する以外に道は無かったのだ。 だが、異世界がそうならなかった以上、この結果を迎えるのは当然の結末だったと言える。「これが俺の魔力だ。これを使えば魔王だって瞬殺だ、お前達が俺に歯向かうなんて百年はえーんだよ」 今、キリヤ王子が使おうとしている雷撃魔法は強大な魔力を必要とする上に指向性の制御にも魔力が必要とされる。 また、その威力ゆえ周囲に与える破壊も甚大であり、熟練者が使わなければ味方にも損害を招きかねない諸刃の剣なのだ。「ウンディーネさん、出来るだけ沢山の水を集めて下さい」 エリスフィーナは召喚したウンディーネに沢山の水を集めさせて水の壁を展開させるつもりでいた。 彼女が両親から教わっていた対雷撃防御は最低でも水による防御壁の展開だったからだ。 しかし、万全を期すならこれにプラス要素を足さなければならないのだが……それはエリスフィーナ一人では無理な話であった。 一般的な雷撃魔法の規模なら水の壁で受け止め電気エネルギーを地面に逃がすで事足りるのだが、キリヤ王子の魔力での雷撃魔法にそれで対処出来るかは分からない。 魔力を溜め終えたキリヤ王子は左右に広げた両腕を正面で一つに合わせ、両
last updateLast Updated : 2026-09-16
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