玄関を足を踏み入れた瞬間、リビングルームの散らかり様にサクラはすぐさま気づいた。ヴァレンタインはサクラとタナーの姿を捉えるやいなや、その瞳をパッと輝かせた。彼女はとっさに片手で顔の一部を覆い、痛みに耐える振りをしながら、涙声で訴えかけた。「アルダマ様、このような見苦しい場面をお見せしてしまい、本当に申し訳ございません。私たちの姪が叔父と口論になり、激怒した挙句にテーブルをひっくり返してしまったのです。まともな行儀作法すら教わってこなかったのは明白でございますわ」タナーの表情は無表情のままだったものの、エロワーズの生い立ちに関するヴァレンタインの失言を耳にし、その耳朶が不快感で熱くなった。彼女を育て上げたのは自身の両親なのだ。ヴァレンタインは一体何をほのめかそうというのだ?(……それに、エロワーズが戻ってきただと? 一体いつからだ?)ヴァレンタインの仕打ちを目にし、サクラは怒りを抑えきれなかった。タナーがすぐ目の前に立っているにもかかわらず、彼女は叔母を庇おうとすぐさま前へと踏み出した。「エロワーズ、何年も姿を消していたと思ったら、戻ってきて早々トラブルを起こしているわけ?! 頭でもおかしくなったの? 二人も高齢なのよ、そんなストレスを与えるなんてどういうつもり?!」たった数言で、サクラはすべての罪をエロワーズへと擦り付けることに成功したのだった。ヴァレンタインと同様、彼女もまたエロワーズが理不尽で、扱いづらく、他人の気持ちを理解できない人間であると全員に信じ込ませたかったのだ。タナーの顎のラインが硬く引き締まった。エロワーズへと視線を投げかける中、複雑に絡み合った無数の感情が胸中で渦巻いていた。彼女は6年もの間、姿を消していた。それでも、離婚届にサインしたあの日の涙に濡れた彼女の顔を、彼は今でも鮮明に記憶していた。誰だか分からないほどに激しく泣き叫んでいたあの姿を。あの日以来、彼は彼女の姿を目にしていなかった。彼女の父親であるグレッグでさえ、タナーの父親の下での役職を辞任し、彼女と共に立ち去っていったのだ。両親が彼とエロワーズの間に何があったのかを問い詰めてくることは一度もなかったものの、真実を勘づいていることくらい彼には分かっていた。そして今、かつて自分の世界を天地ひっくり返した女性が再び目の前に立っているというのに、どうしても彼女を憎
Last Updated : 2026-10-20 Read more