物心がついた頃には、僕の両親はいないことに気付いた。形見として残されていたのは、くしゃくしゃに握りしめられた一枚の和紙だけ。 両親の思い出といえば和紙しかないから、丁寧に折りたたんでいつも内ポケットに入れていた。お守りみたいなものだった。 僕……芦屋 奏は孤児院で育ち、αとして目覚め、運良く私立の高校にスカウトされてから順風満帆に就職もした。 企画が通れば大量生産して右肩上がりになるような大手のメーカーだ。 世の中にはユニークな発想を思いつく人が多い。 パイプ椅子は重いから紙にしてみよう、だったり。廊下に大きな机を作ったら会議室に向かわなくても良いのでは? と言ってみたり。 頭がいいのか悪いのかわからなくなるような変なところに入ってしまったと思ったけれど。 当たり前だがしっかり根拠のある企画は通る。クリエイティブな人たちだからそのうち「空を飛びたい」と言い出すかもしれない。 そんな変わった人たちに囲まれながら僕も企画を作り続けている。 「芦屋、今回の企画通ったみたいだな」 そう褒めてくれるのは上司の溝口だ。 「ありがとうございます」 「あとはそうだな? 紙の素材」 「はい。何がいいのかさっぱりで」 「こう言う時はな。一流の紙職人たちが作った紙を纏めてみるのがいいんだ。今度会社全体でどの紙をベースに使うか審査がある。決めるのは社長だが……いい勉強にはなるだろう」 僕の企画は至ってシンプルなものだった。 紙で、Ωを守る首輪を作る。 それだけだった。 勿論ここからいろんな研究を重ねて出来るか出来ないかは変わってくるだろうが、夢の段階であるプランで通ったのは嬉しかった。 Ωの首輪は高価だった。 大人は身に付けられても、未成年は手が出せない値段が多い。 だから、安くて安全な。 日常で触り慣れている紙ならいいんじゃないかなって思ったんだ。 一週間後。 紙を作る企業たちにオファーをしたら多くの返事をいただいたので、会社の一室を借りて展示会を行う。 綺麗な紙が並べられていくも、見た目だけでは僕には違いがわからなかった。 その紙の原料はどんなもので、どのように作られていったのかはそれぞれの会社から詳しく聞いていく。 (企画が通ったからには成功させたいけど
Last Updated : 2026-09-15 Read more