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4工房へ

Author: 伊吹ハナ
last update publish date: 2026-09-15 13:31:44

男性に貰った紙は、一応あの態度でも展示品だったようで工房の名前と住所が丁寧に書かれてあった。

仕事が休みの日、その住所に向かってみる。

電車を乗り継いで50分。

都心から離れた自然が多い場所。

タイムスリップしたような町並みを眺めながら歩いていく。

朝早く来てしまった。人が全然いない。

(ここら辺なはずなんだけど……)

似たような建物が多くてどれがどれだか……看板の名前も錆びれてて読みづらいし……。

かなりきょろきょろしているから挙動不審だろう。

ドン、と背後から扉が開く音がした。

振り返れば大きな荷物を抱えて外に出てきた男性。

「……あ!」

「……あ?」

あの時の男性だ。

あの時はニートみたいと思ってしまったけど、今は作務衣さむえを着ていて頭にも手拭いを巻いているから割と職人っぽく見えた。

前は前髪で隠れて見えなかった大きな目が見える。でも僕を認識するとだんだん目が細くなってきて……「うわ、マジで来たんだ」と呟いた。

「……え。ダメだった?」

「いや、わざわざここまで来ないと思って」

「来るよ! あの和紙すごいよかったんだから! もっといろんな種類あったら見せて欲しいなって思って!」

男性は「あー」とか「えー」と声を出してどうすれば良いのかわからないようだった。

「あの〜……俺は今から作業をしないと行けなくて……俺の親父……がそういうの、喜んで紹介してくれると思います」

「ほんと⁉︎ お父さんはどこ⁉︎」

「この工房の中──」

言った側から中から人が飛び出してきた。

「悠人、道草食わずに早く行っておいで! で、このエリートそうな方は……?」

目が合ったので自己紹介をする。

「初めまして。OUTEメーカーに勤めている芦屋 奏です。以前僕の企画で紙を募集した時に、こちらの紙を拝見して大変気に入ってしまい──」

「じゃ俺、行くわ」

男性は興味なさそうにどこかへ行ってしまう。

「……芦屋くん、か」

「はい」

「そうか、うちの和紙を気に入ってくれたか! 嬉しいなあ! ほらほら寒いでしょ中に入って」

「し、失礼します……」

僕が知らない世界が広がっている。

目に見えるもの全てが新鮮。

まだ朝早いのか誰もいない。

静かな工房。

「芦屋くん来てもらったのにごめんね。うちの工房自体ではそんなに和紙は売ってないんだ……これ観光マップ! で、マーカー引かれてあるところにうちの和紙を販売してもらってるんだ」

「わあ、ありがとうございます! 僕こそすいません、突然訪ねてしまって」

「いいよー! 和紙に興味を持ってくれる子がいるなんて嬉しい! 悠人をOUTEメーカーに向かわせたのが功を奏したか……」

父さんの思惑にまんまと僕はかかったのか。良いご縁だったらいいな。

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