着替えを済ませてクローゼットを出ると、蓮からLINEが届いていた。【家にある酒造技能検定の資料、持ってきてくれ。紗季が使うから】【返事は?あまり待たせるんじゃない】……わずか1分の間に、蓮から十数件ものメッセージが届いた。返信しようとしたところで、蓮から電話がかかってきた。「早く資料を持ってきてくれ。こっちは急いでるんだ。ぐずぐずするな」私は午後から受ける翻訳資格試験の受験票を握りしめ、唇を噛んだ。「その試験って、まだ3か月先でしょう?そんなに急ぐ必要あるの?」「紗季はいつも残業してまで手伝ってくれてるんだ。時間がないんだよ。それくらいの頼みも、聞けないのか?」スマホの向こうから聞こえてくる声に、私は一瞬ぼんやりした。蓮にも、急ぐことがあるんだ。「……分かった」電話を切ると、配送代行サービスを探し、資料を紗季の自宅まで届けてもらうよう手配した。出かける前から言い争うために気力を使いたくなかった。それに、5年続いた関係に、最後くらいは少しだけ体裁を残しておきたかった。けれど、そう簡単にはいかなかった。翻訳資格試験まで、あと1時間。バッグを手に取り、家を出ようとした。そのとき、正面から蓮と鉢合わせした。蓮は私を見るなり、怒りをあらわにした。その後ろには紗季が立っていた。目には涙を浮かべ、今にも泣き出しそうな顔をしている。「よくもこんなくだらないマネをやってくれたな」蓮はそう言って、束になった写真を私の顔に投げつけた。拾い上げてみると、目を覆いたくなるような卑猥な写真ばかりだった。写真に写る紗季の顔は、後から合成されたものであることが誰の目にも明らかだった。私は呆然とした。「俺が頼んだのは資料を届けることだけだ。それなのに、どうしてこんな下劣な真似をする?紗季を侮辱するために、こんな写真を送りつけるなんて」蓮が私の顔を指差した。その腕が大きく動いた拍子に、靴箱の上に置いてあった花瓶が倒れた。ガラスが床に散らばり、その破片が一瞬で私のふくらはぎを切り裂いた。「違う。私が送ったのは試験の資料だけ」私は勢いよく顔を上げ、まっすぐ蓮を見つめた。蓮は私を見て、わずかに目を見開いた。「うっ……ごめんなさい、真帆さん。真帆さんが私に不満
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