Todos os capítulos de 隠し妻をやめた朝、私は異国の空で咲き直す: Capítulo 11 - Capítulo 18

18 Capítulos

第11話

奏多の手に締め上げられ、花梨の肺の中の空気が一瞬で絞り出された。顔色はみるみる青紫に変わり、必死にもがきながら、喉の奥から掠れた叫び声を上げた。やがて花梨の力がほとんど尽きるころ、ようやく奏多は手を離し、彼女を床に叩きつけた。花梨は悲鳴を上げ、大きく息を吸い込んで激しく咳き込んだ。息を吹き返すと、血の気を失った顔で尋ねた。「い、いきなりどうしたの!?私、何か悪いことした?」「自分が何をしたか分からないのか」奏多の目に鋭い光がよぎる。冷たく笑った。「中津花梨、よく思い出してみろ」花梨は慌てて首を振った。「わからないよ!誰かに何か吹き込まれたの?信じちゃだめ……」この期に及んでまだ言い逃れをする花梨に、奏多の我慢は限界に達した。手にしていたタブレットを力任せに花梨へ投げつけた。ゴツンと鈍い音がして花梨の額から血が流れたが、彼女にそれを気にする余裕はなかった。その視線は、タブレットの中で自動再生され続ける映像に釘づけになっていた。目からあふれそうなほどの恐怖を浮かべている。「こ、こんなの全部偽物よ!」花梨は一瞬動揺したものの、すぐに身を起こして必死に弁解した。「奏多、信じて。この映像、全部作られたものなの。私、こんなこと絶対してない!」奏多は冷ややかに彼女を見つめるだけだった。「そうか」「本当よ!」花梨はぽろぽろと涙をこぼし、しきりに鼻をすすり上げた。「信じて。本当に私じゃないわ!」泣いて見せれば、奏多はまた自分を信じてくれる。花梨はそう思っていた。今までの数えきれない場面と同じように。けれど今回は違った。どれほど哀れっぽく泣いてみせても、奏多はただその場に冷たく立ち尽くし、凄みのある冷たい目で彼女を見下ろしているだけだった。花梨が最後まで言い終わるのを待って、奏多は花梨から距離を置き、この上なく冷酷な笑みを浮かべた。「誰か。中津花梨を地下室に閉じ込めておけ」花梨は泣き叫んだ。「……っ、信じて!本当に私じゃないのぉー!」けれど奏多にはもう彼女に構っている余裕などなかった。頭の中は、梓がすべてを知ってしまったことでいっぱいだった。梓とはすでに婚姻関係を解消している。梓の行方がつかめない。かつてないほどの動揺が胸に込み上げた。これまで生きてきて、奏多が恐怖を
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第12話

D国に降り立ったときには、すでに深夜だった。梓は空港の近くでホテルを取るつもりだったが、到着ロビーの出口に着いた途端、自分の名前を掲げた人の姿が目に入った。梓は慌てて歩み寄る。「すみません、お待たせしました」男はそこでようやく振り向いた。黒いロングコートの下にはタートルネックのニット。肩幅が広く、腰まわりはすっきりしていてすらりと背が高い。見覚えのある瞳と目が合い、梓は思わず固まった。「先輩?どうして先輩が?」伊丹怜司(いたみ れいじ)は軽く眉を上げた。「なんだ、僕で残念だった?」「いえ、そんなわけないです」梓は慌てて手を振った。「ただ、先輩はお忙しい方ですから。わざわざ迎えに来てくださるなんて思わなくて」「いちばん優秀な後輩がはるばる来てくれるんだ。案内役くらい務めないとね」怜司は梓のスーツケースを受け取った。「住まいはもう手配してある。とりあえず1年契約で借りておいたよ。会社の近くだから通勤も楽だ。長時間のフライトで疲れただろう。夕食は胃に優しい薬膳料理の店を予約したんだけど、付き合ってくれるかな」「もちろんです」梓は急いであとを追い、怜司の車に乗り込んだ。4年前、怜司は梓に海外で一緒に起業しないかと誘ったことがあった。副社長のポストまで用意すると言って。あのとき、梓は唇に微笑みを浮かべ、迷いなく断った。「ごめんなさい、先輩。私、もう結婚しているんです。今は家庭を大事にしたくて。海外は私には遠すぎます」電話の向こうで、何かが落ちて割れる音がした。彼の呼吸が急に荒くなり、しばらく黙り込んだあと、ようやく聞き返した。「結婚した?いつ?」「もうすぐ一年になります」梓は言った。「だから、本当にごめんなさい」怜司はまだ何か言いたそうだった。けれど重苦しい沈黙が流れたあと、彼は祝福の言葉を選び、礼儀正しく電話を切った。梓には、怜司が何を言いたかったのか実は察しがついていた。かつて、梓はこの優秀で聡明な先輩に想いを寄せ、告白したことがある。ただあの頃の怜司にはもっと大きな志があって、卒業後も国内に長くとどまるつもりはなく、梓の気持ちを断ったのだった。もしかすると海外で生活が落ち着き、ふと梓のことを思い出したのかもしれない。もちろんほかに理由があった可能性もある。
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第13話

それからしばらくのあいだ、梓は新しい仕事に慣れることに追われていた。突然外部からやってきた副社長ということもあり、部下たちは彼女の実力を認めようとしなかった。それが変わったのは、梓が3日間ほとんど眠らずに動き回り、数十億円規模の大型案件をまとめ上げてからだった。ようやく、新しい会社で確かな足場を築くことができたのだ。契約を交わし終え歓声に包まれるなか、梓は今夜みんなで食事に行こうと告げた。これまで彼女を面白く思っていなかった部下たちも、次々にうなずいて賛成してくれる。梓はそこで初めて、ひとまず彼らに認めてもらえたのだと確信が持てた。夕方、梓は部下たちを引き連れて火鍋を食べに行った。エレベーターに乗り込もうとしたとき、パリッとしたスーツ姿の怜司が慌ただしく駆けつけ、手で扉を押さえた。「食事会に、僕を呼ばないのか?」笑いながら人だかりをすり抜け、ちょうど梓の隣に立つ。怜司に触れているほうの肩が、ふいに熱を帯びた気がした。みんなが囃し立てる。「社長、今夜はパーティーがあるんじゃなかったんですか?」怜司はコホンと咳払いして説明した。「中止になったんだ。おかげで食べる場所がなくなってね。有光副社長にご馳走になろうと思って」微笑ましそうな笑い声がみんなの間から上がった。梓はうつむいて少し居心地の悪さを覚えた。それでも目の端に、怜司の耳の裏まで真っ赤になっているのが見えた。料理が運ばれてきたころ、店員がうっかり飲み物をこぼし、梓と隣にいた女性の同僚にかかってしまった。二人は急いで席を立ち、洗面所へ向かった。同僚はしきりに梓の様子を盗み見ていたが、とうとうこらえきれずに口を開いた。「副社長と社長って……お付き合いされてるんですか?」梓はひどく動揺した。「違うわ!どうしてそんなこと聞くの?」同僚は少し照れくさそうに頭をかいた。「すみません。ちょっと詮索しすぎました。実は副社長が来られる前は、うちの社長、ずっと誰も寄せつけなくて、女性の噂もなかったんです。恋愛してるところなんて一度も見たことがなくて。前に資料をお届けに自宅へお邪魔したとき、大きな油絵が飾ってあるのを見たんです。女性が描かれていて、気になって誰なのか聞いたら、好きな女の子だって。それで、副社長が入社された初日から、その絵の
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第14話

「あっ、申し訳ありません!」店員の慌てた声が響いたとき、梓は見覚えのある腕の中に抱き寄せられていた。けれど覚悟していた痛みは、いつまでも訪れなかった。鼻先に、熱いだしの香りに混じって、かすかなシダーウッドの香りが漂ってきた。その香りに梓の体は一瞬でこわばった。この香りの持ち主を誰よりもよく知っているのは、梓自身だった。でも、どうして彼がここに?梓は意を決して目を開けた。やはりそこにいたのは奏多だった。目が合う。奏多は梓をきつく抱きしめていた。その背中には熱いだしがかかり、シャツに大きな染みが広がっていた。痛みで額に汗を浮かべながらも、奏多は声ひとつ上げずこう言った。「……梓、久しぶりだな」次の瞬間、怜司に手をつかまれ、梓は奏多の腕から引き離された。「梓、大丈夫か?どこか怪我は?」「私は平気」梓は慌てて首を振り、怜司を見た。「全部、この人がかばってくれたから」そう言いながら、梓はもう一度奏多に目を向けた。「あなたは大丈夫……」言いかけて、梓は言葉を失った。奏多の表情がぞっとするほど険しかったからだ。血走った目で怜司のほうを睨みつけ、暗い視線を向けたまま、ほとんど歯を食いしばるようにして言った。「そいつは誰だッ!?」梓はため息をついた。「あなたには関係ないわ。火傷してるでしょう。まず病院に連れていくから」けれど奏多は頑なにその場を動かなかった。「聞いてるんだ、そいつは誰なんだ!」怒鳴るような口調が梓の神経を逆撫でした。「あなたに関係あるの?奏多、忘れないで。私たちはもう離婚したのよ!」奏多はすぐに言い返した。「俺は一度だって離婚したいなんて言ってない!」それを聞いて、梓は思わず笑ってしまった。目には皮肉の色が浮かんでいる。「ええ、離婚したいとは一度も言わなかったわね。その代わり黙って手続きを済ませたんだもの。自分がいつの間にか離婚させられていたことすら知らなかったなんて、滑稽だと思わない?」奏多の顔から一瞬で血の気が引いた。彼はいたたまれない顔でその場に立ち尽くし、唇を震わせた。罪悪感が一気に押し寄せて気勢を削がれたように態度が和らいだ。「梓、説明させてくれ」「説明?必要ないわ」梓は冷ややかに言った。「離婚してないって言いたいの?そ
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第15話

怜司は梓を家まで送りながら、たまらず尋ねた。「僕があいつのこと、何とかしようか?」「はぁ……大丈夫です」梓はため息をついた。「放っておいて。そのうちいなくなりますから」けれどそう言った梓自身、本当はそんなこと信じていなかった。昔、奏多が自分を熱烈に口説いていたころ、彼はしつこく食い下がり、何があっても諦めようとしなかった。今回も同じことになるのではないか。梓はそれが怖かった。梓は深く息を吸って思い直した。いいえ、そうとも限らない。今回は違う。今回はもう二度とあの人とやり直さないと、はっきり心に決めているのだから。怜司に送られてアパートの前まで来ると、梓は別れを告げ階段を上がろうとした。そのとき背後から突然大きな物音がした。振り返ると、奏多が地面に倒れ込み、そのまま意識を失っていた。怜司の顔色がわずかに変わる。「背中の火傷のせいかもしれない。ちょっと見てくる――」けれど怜司が最初の一歩を踏み出すより先に、梓が彼の手をつかんだ。「放っておいて」こんな手口を、奏多はこれまで何度も使ってきた。要するに、梓の同情を引こうとしているだけなのだ。昔、彼に熱烈に口説かれていたころは確かにそうだった。でもそれはもう過去のことだ。梓はためらいもなく階段を上がった。「先に帰って。早めに休んでね」梓の姿はすぐに夜の闇に吸い込まれていった。地面に倒れていた奏多は、ゆっくり目を開けた。梓が消えていったほうを呆然と見つめる。胸に大きな恐怖がこみ上げた。彼女は本当にそのまま行ってしまったのか。自分のことなど少しも気にかけずに。奏多はずっと、自分さえ体面を捨てて優しくなだめれば梓は必ず許してくれると思っていた。けれど今になってようやく気づいた。今回はそう簡単にはいかないらしい。自分は本当に梓を失いかけているのかもしれない。ほとんど感覚を失っていた背中から、ずきずきとした痛みが波のように広がってくる。奏多は両手を強く握りしめ、苦しげに目を閉じて耐えきれないようにうめいた。やがて目の前の景色がぐるりと回り、彼は完全に意識を失った。次に目を覚ますと、奏多は病院にいた。背中の手当てはすでに終わっている。心にふいに強い歓喜が湧き上がった。彼は手の甲の点滴針を引き抜いた。血が飛び散るのも構
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第16話

奏多は大通りで梓の前に立ちふさがり、バラの花束を差し出した。梓は相手にしなかった。見向きもせず、そのまま彼の横をすり抜けていく。梓の同僚が尋ねる声が、奏多の耳に届いた。「有光副社長、あの人ってアプローチしている人ですか?かっこいい人ですね。イケメンが二人もそばにいるなんて、うらやましいです」「うらやましがるようなことじゃないわ」梓は淡々と言った。「あの人はアプローチしているんじゃなくて、不倫した元夫なの」同僚はぴたりと黙り込み、複雑な表情を浮かべた。ふたたびこちらに向けた目には嫌悪の色が加わっている。「そうなんですね……不倫する男なんて最低です。見てるだけで吐き気がします」奏多は恥辱に顔が熱くなり、思わず視線をそらした。好奇の目にさらされ、後ろ指をさされる屈辱にこの上なく惨めな思いがした。けれどどれだけ恥をかこうと耐えるしかなかった。恥をかくことより、梓を失うことのほうがはるかに耐えがたい。それからも奏多は梓を追い続けた。毎日新しいバラを一束買って梓に贈り、毎朝自分で淹れたコーヒーとサンドイッチを彼女のアパートのドアノブに提げた。毎晩黙ってあとをつけて家まで見送り、部屋の明かりが消えるまで見届けた。そうして丸1か月続けた。その間、梓と怜司の距離が、どんどん縮まっていくのをただ見ているしかなかった。ある日も梓は怜司に笑いかけたかと思うと、呆れたようにジト目を向け、その肩を拳で思いきり叩いた。奏多の胸がぎくりと震えた。梓は体裁を重んじる礼儀正しい人だ。よほど心を許した、極めて親しい相手でなければ、あんなふうに遠慮なく呆れた顔を見せたりはしない。かつては、そうやって甘えたり、遠慮なくジト目を向けたりできる相手は、自分ただ一人だった。それが今では、もう一人がいるなんて……奏多は、もう待ってはいられないと悟った。悩みに悩んだ末に盛大な花火を予約し、車のトランクを告白の舞台のように飾りつけ、最後の勝負に出ることにした。ところが梓の会社のビルの下に車を停めると、エントランス付近が騒然としていた。奏多はバラの花束を抱えて急いで人垣をかき分けた。国内にいるはずの花梨が、なぜかメガホンを手に大声でわめき散らしていた。「この会社の有光梓は、恥知らずの泥棒猫です!最低の女です!何度も何度
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第17話

ホテルのスイートルーム。カーテンはすべて閉め切られ、部屋の中は墨を流したような真っ暗闇だった。花梨は両手両足を縛られ、口を塞がれたまま必死にもがいていた。カチリと音がして、薄暗い橙色の明かりが部屋に灯る。奏多は身をかがめ、花梨の口に詰めた布を引き抜いた。「言え。どうやって逃げ出した?」花梨は大きく息を吸い込んだ。「私、私……っ」奏多の目は冷え切っていた。「俺の一線を越えておいて、自分じゃ背負いきれない報いを受けるとは思わなかったのか?」花梨の目がみるみる潤んでいく。「だって、悔しかったの。奏多は私のこと好きだったはずなのに、どうして日の光も差さない、あんな真っ暗な地下室に閉じ込めるようなことができるの?私はあなたの妻なのに、どうしてこんな扱いをするの?」そう言いながら、花梨の目には次第に悪意が滲んだ。「あの有光梓って女、人をたらし込むのがうまいのよ。だから、騙されないで。お願い!」奏多は鼻で笑い、こらえきれずに低く笑った。「梓が、人をたらし込むって?人をたらし込んで惑わせてるのはお前のほうだ!お前に騙されさえしなければ、俺と梓がこんな結末を迎えることはなかったのに……」話しながら、奏多の目に少しずつ狂気の色が広がっていった。発散しようのなかった悔恨と苦痛と絶望が、この瞬間ようやく出口を見つけたかのようだった。彼はぼんやりと低い声でつぶやいた。「そうだ。すべてお前のせいだ。お前が梓を陥れなければ。お前が俺たちの仲を引き裂かなければ。お前さえいなければ……お前さえいなければ、梓が俺のもとを離れることなんてなかった!失うこともなかった!全部、全部お前のせいだ!」奏多の目にはもう狂気しか残っていなかった。憤怒のこもった視線で花梨を睨みつけ、血走った目ですっかり理性を失っていた。ボキリ、と鈍い音がした。奏多は花梨の片腕を力ずくでへし折った。花梨は悲鳴を上げ、痛みで顔じゅうに脂汗を浮かべた。顔を上げた彼女に奏多は言った。「飛び降りるのが好きなんだろう?骨を折るのが好きなんだろう?なら、もう一度全部味わわせてやる!」そう言うと、奏多は花梨のもう一方の腕を持ち上げた。ふたたびボキリと小さな音がして、花梨の両腕は力なく垂れ下がった。見るからに恐ろしい光景だった。激痛のあ
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第18話

午前1時。奏多は手についた血をすっかり洗い流し、新しいスーツに着替え、手ぐしで髪を整え、ホテルのスイートルームをあとにした。最短の時間で梓のアパートへ車を走らせる。伝えたいことが山ほどあり、はやる気持ちを抑えられなかった。ところが、車を建物の前に停めて降りようとしたとき、少し離れたところから怜司と腕を組んだ梓が歩いてくるのが見えた。デートの帰りなのか、梓の腕にはバラの花束が抱えられている。ドアを開けようとした奏多の手が止まった。無意識にハンドルを握りしめる。手の甲に青筋が浮くほどの力だった。血走った目で梓のほうをじっと見つめる。瞬きもできなかった。二人はやがてアパートの前で足を止めた。怜司が何か言ったらしく、梓は呆れたように彼に目を向けた。奏多は、もう待てないと思った。これ以上待てば二度と間に合わなくなるかもしれない。彼が勢いよくドアを押し開けたそのとき、梓がふいにつま先立ちになり、怜司の口の端にそっと口づけた。雷に打たれたと言っても大げさではなかった。奏多の頭の中が真っ白になった。動けずにいる彼の目の前で怜司が梓を抱き寄せ、軽い口づけを、幾度も重なる深いキスへと変えた。そして梓が怜司の背に腕を回してしがみついた、そのとき。夜空にドンッと大きな音が轟き、無数の花火が打ち上がった。あまりに華やかであまりに美しく、二人の今の幸せを祝福しているかのようだった。色とりどりの光が奏多の青ざめた顔を照らし出す。彼には分かっていた。この花火は夜通し打ち上がり続ける。なぜなら、それは彼が梓に贈るはずだったものだから。まさかそれが、梓が新しい幸せを見つけたことへの祝砲になるなんて。全身の力がすべて抜け落ちた。奏多はよろめきながら数歩あとずさり、冷たい車のドアに背中を預けた。満天の光のなかで二人は長いキスを終えた。梓はそこで初めて彼に気づいたように、眉をひそめてこちらを見た。幸せに満ちていたその顔に、たちまち嫌悪の色が浮かぶ。奏多ははっと気づいた。自分はとっくに梓にとって迷惑な存在になっていたのだ。彼女の幸せはもう自分に与えられるものではなくなっていた。奏多はぎこちなくその場に立ち尽くした。言いたいことが喉につかえて、どう口にすればいいのかさえ分からない。そして、逃げることを選んだ。梓が
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