「なんだって言うんだい!あのお嬢様は!」 使用人の食堂で昼食を摂りながら、ナタリーは憤りを隠せないでいた。「いやあ、俺もあれには驚きましたよ。ナタリーさんがメイド長だってことは奥様も紹介なさるときに言ってたんだけどなぁ」「でも、とてもお美しくて可愛らしいお嬢様でしたわ」 ジーンの言葉はまるで耳に入らなかったのか、若いメイドのサラはうっとりと言った。 ナタリーに言われて、セシルの荷物を解きに部屋に行った時のことを思い出しているのだろう。 亜麻色の髪を可愛らしく巻き毛にして、幼さの残る大きな目には緑色の瞳がきらきらと輝いていたセシルは、サラから見るとまるでお姫様のようだった。「確かに見た目は奥様に似てお美しいかもしれないけどね。中身はえらい違いだよ——あんたもくれぐれも粗相しないように気を付けな」 ナタリーはサラを睨みながらキッシュをスープで流し込むと、手早く食器を片付けて立ち上がった。 奥様がご立派な方だから忘れていた。貴族とは、本来ああいうものなのだ。尊大で、傲慢。使用人など言葉をしゃべる物程度にしか思っていない。それが貴族というものなのだ。 ナタリーは少しだけ、自分もアデラインに甘えていたことを自覚して、自分を恥じた。 アデラインはジーンから受けた報告に頭を抱えていた。 侯爵家が貧しくなってからも、妹たちにだけは貧しい思いをさせないよう心掛けてきたつもりだった。 貴族としての教育も怠ってはいなかった自負はある。 だが、決定的な過ちが一つだけあったのだ。 アデラインはまだ母と共に、他の貴族の屋敷に招かれる機会も多くあった。 だから社交界にデビューしていなくとも、それなりのマナーは心得ていたのだ。 だが、幼かった妹たちにはその経験がない。 まして、侯爵家では数少ない使用人で、メイド長や下働きなどといった区別なんてほとんどなかったのだ。 そんな中で育ったセシルが、客として滞在する際のマナーなど持ち合わせているはずがなかったと、落ち着いて考えればわかることだ。 いや、そもそもこの屋敷に滞在する自分を客だ
Dernière mise à jour : 2026-10-15 Read More