「おいおい、今日はやけに煙たいな」 アリスター・ケイルはひっきりなしにパイプをふかすヒューを冷ややかな眼差しで見つめて、揶揄いを十分に含んだ口調で言った。「だったら出て行け」 ヒューはパイプを持つ手に力を入れると、アリスターを睨みつけた。「待てよ。お前のために頑張って絨毯を手に入れた親友に対する言葉がそれか?」「俺は今機嫌が悪い。親友なら察しろ」「奥方と喧嘩でもしたのか?」 アリスターは相変わらず軽薄な笑顔を浮かべている。 いつもなら好ましいこの表情も、今日は殊更腹が立つ。「絨毯の礼なら十分にしただろ」 吐き捨てるように言ったヒューからパイプを取り上げると、アリスターはそれをうまそうに口に含んだ。「そう言うなって。まぁ楽園のアラベスクを作ってる工房があったのは奇跡だったけどな。お前のいう期限に間に合わせるために俺がどれだけ骨を折ったか教えてやろうか?」 アリスターの言葉に、ヒューは苦虫を嚙み潰した顔で睨みつけるだけだった。 アリスターからの伝言には「注文の品を手に入れた。3日後の船で送る」とだけ書かれてあったことを考えると、かなり危ない橋を渡ったことは間違いないのだ。「その依頼主がルセの|地方名士《アヤーン》だと割り出して、シリストラの|軍司令官《パシャ》にちょっとした小銭を握らせてだな——」「もういい。聞かなくてもわかる」 予想通りだった。 つまり、あの絨毯を手に入れるためにアリスターはオスマン帝国の地方名士を失脚までさせていたのだ。 危ない橋どころの話ではない。 それでも、わずか2か月足らずでオスマン帝国からこの国に運び入れるのは、アリスターだからできたことに違いないと思うと何も言えなかった。「それもこれも、お前が奥方のために彼女の気に入る絨毯が欲しいなんて言うから、危険を冒してまでケイル商会の|腕木通信《シャップ・システム》まで動かしてやったんだぜ?」「それについては感謝している。だから今日お前が来ることを許したんだろうが」 ヒューはアリスターからパイプを奪い返すと、不機
Dernière mise à jour : 2026-11-04 Read More