週が明けた月曜の午前10時。東京家庭裁判所の受付。理沙が、紗月の名前の入った厚いファイルを窓口へ提出した。【離婚、慰謝料、財産分与ならびに親権者・監護者の指定を求める訴え】受領書を受け取った紗月は、一番上の自分の名前を確かめた。書類を準備していたときとは違う。もう引き返すつもりはない。その実感が、指先まで伝わってきた。「紗月、受け付けてもらえたわ」理沙が笑顔で書類を渡した。「ホテルの資料と法人カードの伝票、デザインの記録も添えてある。財産分与は70%、花音ちゃんの親権と監護も、あなたが担うよう求めた。相手が何を言っても、資料で答えよう」「ありがとう。1人だったら、ここまで書類を持ってくることさえ難しかったと思う」紗月の目は、今までになく澄んでいた。雅人からは何十件もの着信と、卑屈な懇願、脅すメッセージが入り交じって届いていた。ためらわず、着信を拒否した。連絡は理沙を通して受ける。1人で電話を取り、揺さぶられることを、もう繰り返したくなかった。帰宅して、雅人が残した服と荷物を箱へ詰めた。花音の部屋には、明るいパステルカラーの寝具を置いた。娘が選んだ色だった。カーテンを開けると、その上へ日差しが長く伸びた。* * *午後2時。ルミナスのVVIPルーム。少し軽くなった体と、確かな気持ちで、紗月は怜司の前に立った。彼の鋭い目が、全身を確かめた。「もう、私が言う前にご自分で姿勢を直すんですね。入ってこられたときもそうでした。痛みはどうですか?」その言葉に、紗月は少し誇らしく笑った。「軽くなりました。緊張すると、まだ肩が上がりますけど。どうしたら緩められるのかも、少しわかってきました」「いいですね。今日から第3段階に進みましょう。重さより、まず動きを覚えます。つらいところがあれば、すぐに言ってください」デッドリフトとランジのエリアへ案内された。バーベルを握ると、怜司が背後から、腰
Dernière mise à jour : 2026-09-26 Read More