この結婚は確かに彼女自身が望んだものだった。自分の誕生日パーティーでプールに落ちた時、飛び込んで助けてくれたのは御堂冬凌(みどう とうり)だった。それ以来、彼女は彼にどうしようもなく惹かれていった。御堂家が政略結婚の相手を探していると知り、彼女は父親に頼み込んで縁談を進めてもらった。芙美子が冬凌の意向を尋ねた時、彼はただ頷き、「ああ」と一言返しただけだった。その短い返事だけで、穂波は世界を手に入れたかのように喜んだ。嫁いでからも冬凌の態度は冷ややかなままで、月に一度の決められた日以外、彼女に触れることはほとんどなかった。それでも穂波は十分に満たされていた。いつかきっと彼に愛してもらえると信じていたから。たとえ冬凌が常に厳格で、穂波が家のしきたりを破れば決して容赦しな、罰を受けた後にただ薬が届けられるだけで、慰めの言葉一つなくとも、彼女は彼を恨まなかった。「私への愛情がないわけじゃない、元々こういう冷たい人なのだ」と、何度も自分に言い聞かせてきた。だが今日、彼女は思い知らされた。決してそうではなかったのだと――!今朝の供養が始まってすぐ、穂波は低血糖でめまいを起こし、持っていたお盆を取り落とし、供え物を床に散乱させてしまった。芙美子はその場で顔を曇らせ、彼女に仏間で2時間の正座を命じた。冬凌に庇ってほしい、ほんの一言でいいから口添えしてほしいと彼女は願った。しかし冬凌は動こうともせず、ただ冷たく言い放った。「母さんの言う通りにしろ。しきたりを破った以上、罰を受けるべきだ」その時でさえ彼女は自分を納得させ、仏間で丸2時間の正座を耐え抜いた。ふらつく足取りで母屋へ戻ろうとした時、冬凌が清楚なワンピース姿の女性を労わるように車から降ろしているのを目の当たりにした。外は激しい雨が降っていた。冬凌は女性が濡れないように深く傘を傾け、自分自身の半身がずぶ濡れになることなど気にも留めていないようだった。女性に語りかける彼の口元には、かすかな優しい笑みが浮かんでいた。穂波は雨の中に立ち尽くし、ただ茫然とその光景を見つめていた。あんな冬凌は見たことがなかった。「聞いた?旦那様が夏目様を連れてこられたそうよ」「夏目様って、旦那様の初恋の人のこと?あの人が何も言わずにいなくなってから、旦那様は毎日浴びる
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