南の集積場から届いた修理記録には、番号を削られた荷車の持ち主が書かれていた。王領へ荷車を貸し出す商人の一人で、修理を受けたのは昨冬の終わり。ヴィンは使用履歴を別の帳簿で探し始めたが、私はそこまで一緒に見られなかった。昼前、ダリオが記録室へ来て、セレス・マーロウが私との面会を求めていると告げたからだ。「ガレスの婚約者の?」 分かっているのに、そう聞いてしまった。ダリオは頷き、王に先に伝えてあると言う。「お断りになっても構いません。先方は、王城へ来た用件はほかにもあるそうです」 断ればその日の仕事には戻れる。けれど、セレスがわざわざ私を指名した理由は知っておきたかった。祝祭の演壇で彼女を見たのはほんの短い間で、私たちはほとんど話していない。「会います。ここではなく、面会用の部屋でお願いします。帳簿を広げているところへ来られても困るので」 ダリオは「そのように手配します」と答えた。私は開いていた書類をヴィンに預け、自分の部屋で手を洗った。鏡に映った顔は、あの夜より痩せたようにも見える。髪を結い直しかけて、やめた。セレスと会うために整えたいのか、比べられるのが嫌なのか、自分でも分からなかったからだ。 面会室へ入ると、セレスは窓際に立っていた。淡い青の衣を着ていた式典とは違い、今日は旅用の濃い緑の上着を羽織っている。机には外した手袋が揃えて置かれ、彼女は私が来るまで椅子に座らなかったらしい。「来てくださってありがとう」 セレスが先に言った。親しげな声ではないが、礼儀を崩してもいない。「用件を聞かせてください」「立ったまま話すには長いわ。座っても?」 私が頷くと、彼女は机を挟んで向かいに座った。廊下側の扉は少し開き、離れたところに城の者が控えている。私たちの言葉までは聞こえないだろうが、二人きりでもなかった。 セレスは手袋の端を揃え直してから、私を見た。「あなたが王領の調査に協力していると聞いています。北倉へ届かなかった荷については、私の父の群れにも問い合わせが来ました。王城へ寄ったのはその返答のためです」「私に話したいのは、荷のことですか」「それだけなら、正式な書類を出せば済みます
آخر تحديث : 2026-10-10 اقرأ المزيد