*** 「まずは基本的なワルツから。ゆっくりやっていこう」 「は、はい」 ゆっくりと、彼が私の呼吸に合わせてくれる。 挨拶にはじまって挨拶に終わるのが社交ダンスだ。 始めの挨拶をお互いにしてから構えを取り踊り、終わったら今度は感謝の挨拶をして一曲を終える。 「1、2、3…2、2、3…」 腕は絡め合うように添え合うように。 足は揃えるように競うように。 ゆっくりなのに、記憶とは全然違う。確かに私のダンスにまつわる記憶は十四で止まっているし、ダンスの授業も何度かしか受けてないから当然といえばそうなんだけど。 四つの工程をさらに四つのステップに分けて同じことを繰り返す。 右回りからはじまって、途中で反対にステップを踏むことでくるくると回るようにダンスは続く。 「すみません…」 呟くように謝る私は、ここまででフィン様の足を何度か踏んでしまっている。なぜかと言えば、相手の足が自分の足にピッタリつく様にお互いステップを踏むものだからなんだけど。相手の足を踏むことは修練が足らないだけでなく純粋に無礼なこと。 正直、まさか自分がこんなに不器用だとは思わなかった。 「構わない。初心者なんだから」 「あ、ありがとうございます…」 そうは言っても申し訳ない気持ちでいっぱいだ。 さらに気になると言えば本当に、びっくりするくらい密着すること。お、お腹なんてくっついてしまっているし。 これではフィン様のお召し物が汚れてしまうのでは無いだろうか。私のメイドの服なんて、掃除してる以上そんな綺麗なものでもないのに。 「あの…」 「なんだい?」 「お召し物が、汚れませんか。この密着度合いは…」 「構わないさ、どうせこれから着替えるんだ」 「そういうも
Last Updated : 2026-10-09 Read more