式場に駆けつけたとき、結婚式はちょうどクライマックスを迎えようとしていた。多少距離はあったが、それでも一目で新郎が誰なのか分かった。大学時代、学内一の人気者、黒沢周助(くろさわ しゅうすけ)だ。式場は割れんばかりの拍手に包まれ、見慣れた顔ぶれが歓声を上げている。「あの黒沢周助までオトすなんて、さすが若菜さんだね」「若菜さんは資産が何千億もあるんだぞ。その気になればどんな男だって選び放題だろ」「あの腕時計、見たか?若菜さんがオークションで金に糸目をつけずに競り落としたんだってさ。とんでもない値段らしいぞ!御曹司と令嬢のカップルなんて、最高じゃねえか!」信じられない思いで、壇上の若菜を見つめる。彼女は高級ブランドのウェディングドレスに身を包み、優しく微笑みながら、周助の手首に腕時計をつけている。そして2人は口づけを交わした。ダイヤモンドが放つまばゆい輝きに、思わず目がくらむ。だが、俺と付き合っていた頃の若菜は、呆れるほどケチだった。俺への誕生日プレゼントは、買い物のおまけでもらったキーホルダーだった。珍しく入院中の俺を見舞いに来たかと思えば、俺への差し入れまでちゃっかり持ち帰っていく始末だ。耳をつんざくような歓声の中、若菜が何気なく振り返り、俺と目が合った。そして、彼女はぴたりと動きを止め、反射的に周助と距離を取る。声をかけようとしたとき、手首を強くつかまれた。親友の小林圭太(こばやし けいた)が俺を式場の隅へ引っ張っていく。その顔にはあからさまな苛立ちが浮かんでいる。「何しに来たんだ?この結婚式をぶち壊す気か」圭太が着ている新郎の介添人の衣装に目をやる。若菜と付き合い始めたばかりの頃、圭太は「お前は一生女に振り回される運命だな」と俺をからかっていた。だがそのあとは、2か月分のバイト代をはたいて、俺にネクタイをプレゼントしてくれた。驚く俺を見て、圭太はそっぽを向いて鼻を鳴らした。「俺の親友なんだから、少しくらいちゃんとした格好しろよ。お前らが結婚するときは、絶対に俺が一番近くで祝ってやるからな」それなのに今は……俺は震える声で、ようやく言葉を絞り出す。「いったい、どういうことだ……」言い終わる前に、圭太に遮られた。彼はうんざりした顔で、吐き捨てるように言う。「今日は周助と
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