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第4話

Penulis: ライチ
突然、耳鳴りがする。

俺の母・新藤幸子(しんどう さちこ)はもともと体が弱く、これまで何度もICUに入院していた。

俺が急いで若菜を母に紹介しようとしていたのは、母を安心させたかったからだ。

病院に駆けつけると、圭太が救命室の前で待っている。

圭太は俺を思い切り突き飛ばし、怒鳴りつける。

「周助と若菜の関係を壊すなって言っただろ!おばさんはお前のせいで、もう少しで死ぬところだったんだぞ!」

圭太の両親は酒とギャンブルに溺れ、まともに子育てをしていなかった。だから母はずっと、圭太を実の息子のようにかわいがってきた。

俺は涙をこらえて尋ねる。

「母さんの容体は?」

そのとき、救命室のドアが開き、医師がマスクを外しながら出てきた。

「ひとまず容体は安定しましたが、これ以上、患者さんに精神的な負担をかけないようにしてください」

スマホに送金通知が届いた。若菜から2000万円が振り込まれていた。

【お母さんのこと聞いた。とりあえずこのお金を使って。足りなかったらまた言って】

若菜とは別れると決めたはずなのに、今の俺にはこの金を返す勇気がない。何より、母の命が最優先だ。

病室のベッドで、母が力なく目を開ける。

「肇……本当に……他人の家庭を壊すようなこと、したの?」

俺は強く首を横に振った。

「違うんだ!そんなことしてない!」

母は苦しそうに小さくうなずく。

「私は……肇を信じるよ」

圭太は母の気を紛らわせようと、病室のテレビをつける。

母はほっとしたように、弱々しい笑みを浮かべる。

「いい子だね。今も兄弟みたいに仲良くしてくれて、安心したよ。

昔、圭太が遠慮して、おかずを取れなかったときも、肇が自分のおかずを分けてあげ……」

だが、母の言葉は途中で途切れた。目を大きく見開き、テレビの画面をまじまじと見つめている。

俺も慌てて振り返ると、テレビには俺に関するニュースが流れている。

「早く消せ!」

血相を変えた俺を見て、圭太は鼻で笑った。

「おばさん、騙されちゃダメだよ。肇は本当に人の家庭を壊したんだぞ。

それだけじゃない。金づるになる相手も探していた。これがその証拠だ。

こんな奴と兄弟だなんて、吐き気がするぜ!」

「黙れ!」

俺は混乱の中、椅子をつかみ、力いっぱいテレビに叩きつける。

画面が砕け散り、テレビの映像がようやく消えた。

いつの間にか病室に入ってきていた周助が、嘲るように口を開く。

「だから貧乏人は子どもなんか作るべきじゃないと言ったんだ。お前の息子は金のために、どれだけ人に言えないことをしてきたか知ってるか?」

俺は慌てて母を振り返る。

「こいつらの言うことなんて嘘だ。信じてくれ!」

だが、もう遅かった。

ただでさえ痩せこけていた母の顔から、みるみる血の気が引いていく。目は一点を見つめたまま、やがて光を失った。

「母さん!」

動かなくなった母の体を抱きしめ、声が枯れるまで泣き叫んだ。

底なしの絶望の中、震える手でスマホを取り出し、あらかじめまとめていた証拠を投稿した。

【俺は7年前から白石若菜と付き合っている。本当の間男は黒沢周助だ】

それから間もなく、若菜が怒りをあらわにして病室に乗り込んできた。

「少し時間をくれたら、ちゃんと対処するって言ったじゃない!どうしてそんな余計なことをするの!

今すぐあの投稿を消して。そうしないと、治療費の支払いを止めるわよ!」

俺は悲しみを通り越し、静かに言う。

「母さんは、もう死んだ」

若菜は思わず、母の体に目を向ける。

若菜が戸惑っているのを見て、周助は目を赤くしながらその手を握る。

「俺はおばさんを見舞いに来ただけなのに、肇は俺なんか若菜と釣り合わないって言ったんだ。それどころか、俺なんか死ねばいいとまで言ってきた……」

周助の話を聞き、若菜は俺が嘘をついていると思い込んだ。

「自分の母親の死まででっち上げるなんて。見損なったわ!」

そこへ秘書が慌ただしく駆け込んできた。

「社長、記者会見まであと30分です」

若菜は冷たい目で俺を見下ろし、失望しきったように吐き捨てる。

「あんたが私をこうさせたからね」

若菜が去って間もなく、スマホに新しいメールが届いた。

内容は、俺の行為が大学の名誉を著しく傷つけたため、博士課程への進学オファーを取り消すというものだ。

続けて電話が鳴る。出ると、指導教員が怒鳴りつける。

「君に研究不正の告発があった。大学からも退学処分が下された」

家族、恋人、そして学業……

20数年かけて築いてきた俺の人生は、たった1日で崩れた。

絶望の中、ふと目に入ったのは、半開きの窓だ。

力を振り絞って窓によじ登ると、耳元で風が激しくうなる。

そのとき、若菜からメッセージが届いた。

【騒ぎが収まったら、一緒に海外へ行こう。そうすればすべてやり直せるから】

返信はしない。

ただ目を閉じ、そのまま身を投げた。

――白石若菜。来世があるなら、二度と出会わないことを願う。

……

一方、記者会見の会場では、若菜が釈明を始めようとしている。

そのとき、見知らぬ記者が前列に割り込み、鋭い質問を投げかける。

「白石社長、あなたは長い間、貧乏なふりをして新藤肇さんを騙していたそうですね。さらに、それがバレたあとは彼を愛人にしようとしました。

挙句の果てに、新藤さんの母親を死に追いやり、その結果、彼も飛び降り自殺をしたと聞きましたが、事実ですか?」

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