仮処分の審尋期日には、相沢本人が出てきた。実際に顔を見るのは、ほぼ1年ぶりだった。 少し痩せて、白髪が増えていた。 それでも、笑い方は変わらなかった。裁判所の廊下で目が合った。 「元気だったか?」 先に話しかけたのは相沢だった。怜奈は答えなかった。 隣に弁護士がいた。相沢も、自分の弁護士と一緒だった。 神崎も、黒崎も、桐生も来なかった。怜奈が、来ないでほしいと言った。 自分の事件だった。 *** 審尋は、映画のように劇的ではなかった。双方の弁護士が書面の内容を説明し、裁判官がいくつか確認した。 事務所がいつから実際のマネジメント業務を止めたのか。精算資料の提出が遅れた理由は何か。 怜奈の解除通知が適法に届いたか。現在の出演を禁止するほど、切迫した損害があるのか。 相沢側は、最近の収益は、会社の努力で得た知名度によるものだと主張した。怜奈側の弁護士は、番組出演の契約は会社が事実上業務を止めたあとに結ばれ、以前からの未精算と連絡不通の記録もあると反論した。 その日、裁判所は結論を出さなかった。 「追加資料の提出後に、判断します」 それで終わった。部屋を出ると、相沢が後ろから言った。 「自分一人で売れたつもりか?」 怜奈は止まった。弁護士が先に振り返ろうとしたが、手で制した。 「社長」 相沢がせせら笑った。 「なんだ」&nbs
Última actualización : 2026-10-13 Leer más