ドラマ二度目の撮影は、救急外来のセットだった。怜奈の出番は多くなかったが、初めて感情の大きく動く場面があった。 交通事故の患者の家族が、医療スタッフに怒鳴る。怜奈の演じる佐倉由衣は、その家族を落ち着かせなければならない。 リハーサルで、相手役が予想以上に強く手首をつかんだ。 「カット」 監督がすぐに止めた。 「手首をつかむ動きは、打ち合わせになかったですよね?」 相手役は申し訳なさそうにした。 「感情が高ぶって、つい」 怜奈は手首を回してみた。 「大丈夫です」 監督が尋ねた。 「この動き、残します? 嫌なら外しましょう」 怜奈は少し考えた。場面には必要に見えた。 「残して大丈夫です。ただ、場所を決めて、力は抜いてください」 アクション担当が二人の間に入り、つかむ位置と離すタイミングを合わせた。 再び撮影。相手役が手首をつかむ。 今度は、予想した強さだった。怜奈は無理に振りほどかなかった。 「ご家族の方」 低い声。 「お気持ちはわかります。でも、中に入られると治療が遅れてしまいます」 相手役の目が揺れた。怜奈は一歩も引かなかった。 カット。監督がモニターを見て言った。 「いいですね。今は力じゃなく、踏みとどまっているのが見えました」&nbs
Huling Na-update : 2026-10-10 Magbasa pa