子供の頃、私は『イタズラなKiss』という漫画が大好きだった。相手役の男の子は冷たくて、誰も簡単には近づけない完璧な存在だった。ヒロインの女の子は明るくて、かわいくて、いつも周りを照らしていた。彼女は少しずつ彼の凍った心をほどき、その内側へと入り込んでいった。あの物語が、私の恋愛観を形作ったのだと思う。そのせいか、大人になって夏彦に出会った時、私はこの口数が少なく、人との間に距離を置く青年に一目惚れしてしまった。そして、そのままのめり込んでいった。後先考えず、全力で愛した。彼のためなら、自分の持っているものをすべて差し出せると思っていた。あのヒロインのように、私も彼の心を温められると信じていたのだ。でも、そんな日は来なかった。6年間の結婚生活の末に残ったのは、ボロボロになった私だった。離婚を切り出した時、迷いはなかった。二人と離れることにも、未練はないつもりだった。それでも夜になると、抑え込んでいた感情が不意に湧き上がり、私を飲み込んでしまう。悲しいのか、悔しいのか、自分でも分からなかった。ただ、ひどく疲れていた。いくら体を休めてもなかなか抜けない、泥のような深い疲労感だった。この結婚で受けた傷は、思っていた以上に深かった。夏彦と鏡也に冷たくあしらわれ、思いを踏みにじられる日々の中で、人を愛する気持ちも、誰かを素直に信じる心も、すり減って消え失せてしまっていた。もう元には戻らないし、取り戻すこともできない。退職後、すぐに新しい仕事を探すつもりだった。けれど、そのための気力すら残っていないことに気づいた。そこで私は、ネットの掲示板に書き込んでみた。【心身ともに疲れ果ててしまった時、気晴らしに行くならどの街がいいですか?】一番多くの「いいね」が集まっていたのは、南の島を勧めるコメントだった。忙しい日常から離れて、何もせずに過ごしたい人に人気の場所らしい。海はきれいで、冬でも暖かい。少し惹かれた。けれど、コメントを読み進めていくうちに、浪花市を勧めるある長文の書き込みが目に留まった。【投稿読む限り、ただ仕事に疲れてリフレッシュしたいっちゅうわけやなさそうやな。長いことしんどい思いしてきて、もういっぺん前向く元気を取り戻したいんかなって感じたわ。それや
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