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デザインが物語を引っ張る瞬間の緊張感は独特だ。俺はあるシーンで、demon的存在が登場する短いカットのために、表情だけで背景を語らせる案を出した。脚本側の要請で台詞は最小限、映像だけで感情を伝える必要があったから、顔のパーツ配置や眼球のハイライト位置が重要になった。
試作では眼のハイライトを二つ入れてコミカル寄りになってしまい、雰囲気が壊れた。そこでハイライトを縦長に伸ばし、瞳孔の周囲に薄いグローを入れることで静謐さと不穏さを両立させた。さらにアニメーションではわずかな瞬きや瞳の寄りでフォーカスを誘導する指示を出し、音響と同期させることで完成度が一気に高まった。こうした細かな調整が、最終的に視聴者の心を揺さぶることになる。
色と質感の選択で何度も立ち止まった。僕は最初に暖色系で「危険さ」と「魅力」の両立を考えていたが、チームの一人が冷色の金属感を提案してくれて、それが作品全体のムードを変えた。描き込みを増やすとディテールは映えるけれど、遠目で潰れてしまうジレンマが常につきまとう。だからテクスチャは二層構造にして、近景用の細かいノイズと遠景用の大きな模様を別々に用意した。
また、神話や伝承からモチーフを拝借する際は資料監修を丁寧に行った。文化的な象徴を安易に用いると印象が薄くなるどころか誤解を生むこともあるからだ。結果として視覚的に豊かで、しかも読み取りやすいバランスに落ち着いた。
輪郭だけのスケッチがふと脳裏をよぎる。
最初はシルエットだけで語らせようと考えた。ゲーム画面や遠景で一瞬映ることを想定していたから、単純なラインでも存在感が伝わるかが勝負だった。そこから細部の詰めへ進み、角の角度や羽の張り方、目の周りの反射の有無といった微調整を重ねていった。
模型担当と何度もやりとりして、平面的なイラストが立体になる過程で失われがちな「顔つき」を守るためのトリックを見つけた。光の受け方を想定してパネルごとの反射率を調整したり、アニメーションで崩れないために一部パーツを可動固定にしたりと地味な工夫が多かった。最終的に出来上がったとき、観客の第一印象が狙い通りで胸が熱くなった。
衣装や立体化を考えたときの実用的な配慮も見逃せない。私が試作を手にしたとき、細かい装飾が多すぎて可動域が犠牲になることに気づいた。そこで装飾の一部をマグネット式にして取り外し可能にしたり、薄い布地のように見せる硬質素材を採用して形を保持しつつ軽量化する工夫を施した。
また、光沢や反射を写真で再現するために素材サンプルを何種類も取り寄せ、撮影環境で色味を確認した。ファン向けのグッズ化を念頭に置くと、現実的なコストと耐久性も考慮しなければならない。こうした実作業の試行錯誤が、最終的に多くの人に受け入れられるビジュアルを生んでいった。