最近読んだ中で強く印象に残っているのは、'ヒミズ'の世界観を深く掘り下げた『
月夜のカナリア』という作品です。主人公のユキオとスミレの関係性が、お互いの傷ついた心を少しずつ癒していく過程が繊細に描かれています。
特に印象的だったのは、雨の日に二人が廃墟で過ごすシーン。ユキオの無言の優しさとスミレの心の葛藤が、静かな会話の端々ににじみ出ていて、胸が締め付けられるような思いでした。作者はキャラクターの孤独感を、単なる暗い感情としてではなく、お互いを理解するための入り口として描いています。
この作品の素晴らしい点は、救済が突然の幸福としてではなく、小さな歩み寄りの積み重ねで表現されていること。最後のシーンで二人が初めて手を繋ぐ描写は、何百ページにもわたる心の旅の到達点として、深い感動を呼び起こします。