Malice Mizerのファンフィクションで心に残ったのは、GacktとKöziの複雑な関係性を描いた『月下の絆』です。音楽性の衝突と静かな依存が交錯する
情景が、バンド活動の裏側にある人間ドラマを鮮やかに切り取っていました。特にライブ後の楽屋でパウダーを分け合うシーンは、儚さと情熱の両方を感じさせます。作者は実際のインタビューや雑誌記事の断片を巧みに織り交ぜ、90年代のヴィジュアル系シーンへの深い理解を示していました。ファンなら誰もが
夢想する『薔薇の聖堂』の舞台裏が、ここまでリアルに描かれるとは思いませんでした。
この作品の真価は、キャラクターを単なるロマンスの対象にせず、アーティストとしての葛藤も同時に描いている点です。マネージャー役のOCがメンバー間の調整役となる展開は、現実の音楽業界の厳しさを想起させます。『Tetsu』のベースラインに乗せて語られるモノローグや、『Mana』がドレスを選ぶ際のこだわり
描写など、細部への愛が伝わってくる名作です。