夫の魂、義兄の身体交通事故で、神谷家の二人の息子は一人が死亡、一人が重傷を負った。
私の夫、神谷遼(かみや りょう)は、事故の後、病院で目を覚ますと私に向かってこう言った。
「義妹……美月(みつき)」
彼は、自分の身体に兄の神谷義明(かみや よしあき)の魂が宿っていると言い出した。
私は正気が失ったように、医者や霊媒師を呼び、夫を元に戻そうと必死だった。
だがその夜、私は夫と息子の会話を偶然聞いてしまう。
「パパ、ずっと伯母さんのことが好きだったんだよね。だから何年も寺に籠って、彼女のために独身を貫いてきた。今やっと堂々と一緒にいられるようになったんだ」
ベッドにいた彼は、息子の頭を優しく撫でながら言った。
「美琴おばさんと兄さんの仲を壊そうとしたママを止めるために、俺はママと結婚するしかなかった」
私は影に隠れてその言葉を聞きながら、まだ現実を受け入れられずにいた。そんな中、息子が去った後の衝撃的な光景を目にすることになる。
冷静で、仏堂に入り七年間も禁欲を貫いてきた遼が、病院のベッドで義姉の神谷美琴(かみや みこと)を抱きしめていたのだ。
翌日、私はすぐに遼の死亡届を提出し、私たちの婚姻届受理証明書を焼き捨てた。
彼が美琴に派手なプロポーズをするその日、私は迎えに来たヘリに乗り込んだ。
だが、あの冷静な仏子だった彼が、まるで狂ったように通りを何本も駆けて追ってきた。