帰ろうよ、朋空先輩

帰ろうよ、朋空先輩

last updateTerakhir Diperbarui : 2026-04-26
Oleh:  七賀ごふんTamat
Bahasa: Japanese
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寝ることが大好きな高校生、雅月(まさつき)が通う学校には「眠り姫」と呼ばれる存在がいる。 才色兼備に間違いないが、その「姫」はれっきとした男で、雅月と同じマンションに住む幼馴染み、朋空(ともそら)だった。 ある時から全く顔を合わさなくなったご近所さんの朋空に、てっきり嫌われてると思った雅月だったが…? ───────────── 表紙:七賀

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Bab 1

会いたい、会いたくない

俺が通う学校には姫がいる。

普通、姫と言えば綺麗な女の子を想像するだろう。でもウチの姫は全然違う。

綺麗は綺麗。だが誰も寄せつけない茨の姫だ。

笑ってるところを見た者は指で数えるほどしかいない。

二単語以上話してるところを聞いた者がいない。

寝ることが大好きで、昼も放課後も寝ている。最終的についた呼び名が「眠り姫」。

色々噂に尾ひれがついている気がするが、一番のツッコミどころを上げる。

性別:男。

痩せ型で長身、モデルかと思うほどのイケメンだ。その美貌故、こんな揶揄を含んだ渾名が定着した。

捺原高校の眠り姫は他校にまで知れ渡り、彼を一目見ようと校門前で待ち伏せる者まで現れた。アイドル同然の扱いに大混乱が起きそうなものだが、眠り姫は学校に大勢のファンがいて、彼らが牽制することで校外のトラブルは防げているようだ。

問題は校内だ。こちらは無法地帯で、秩序なんてない。眠り姫と関係を持とうとする者達が、時と場所を選ばず争いを繰り広げている。今朝も昇降口で言い争ってる生徒達がいた。

眠り姫の体操着を物色していた、とか何とか。

爽やかな朝から物騒なやり取りだ。あまりに酷かったら先生を呼ぼうかと思ったけど、幸い彼らは口論だけでおさまった。

しかし、冷静に考えてカオスである。口論していた二人は男。姫も男。

二人の男が一人の男を取り合ってるのだ。これはもっと深刻に捉えた方が良い気がする。

ウチの学校は同性愛者が多い。それだけなら別に何とも思わないけど、こういうことがあると大変だなとしみじみ感じる。

しかも大抵眠り姫関連だ。

全校生徒を惑わす眠り姫は、ドロドロした諍いなど知らずに今日もどこかで寝てるのだろう。

俺は無難にやり過ごして、テストも赤点さえとらなきゃいいと思ってた。青春も恋愛も興味ない。強いて言えば、寝たい。柔らかくて温かいお布団の中にいるときが一番幸せ。

そういう意味では眠り姫と共通してる。

「ねえ、私今朝辰野先輩見ちゃった!」

「うそー、良いなぁー!」

「もう超かっこよかったよ〜。放課後まで頑張れちゃう」

廊下を歩いてる最中、女子達のきゃぴきゃぴした会話も耳に入った。

もはらレアキャラ化してる眠り姫だけど、彼は三年生。俺は二年なので、接点はない。

このまま、ずっと関わらずに過ごすんだろうな……あの人と。

ところが、平和な日常にある日突然亀裂が生じた。

「入川雅月君だよね。話があるんだ。ちょっと来てくれる?」

「え。な、何ですか?」

クラス替えして一ヶ月。帰りのホームルームを終えて廊下に出ると、三人の三年生に取り囲まれた。

「どこが良いかな。あ、体育館裏とか」

ひえっ。

場所のチョイスがやばい。どう考えてもボコられるパターンだ。

三年生の知り合いなんて全然いないし、目をつけられる心当たりはない。前世でなにかしでかしたんだろうか。

マジでやばいかもしれない……。

窮鼠猫を噛むの精神で、こっそりスマホを取り出し、緊急通報の画面を開く。これでなにかあればいつでもSOSを発信できる。

「あの、すみません。今日バイトあるので、あまり長い話はちょっと……!」

バイトなんてしてないけど、怖すぎるので控えめに声を掛ける。体育館前まで来たところで、グループの中心らしき男の先輩が振り返った。

「そっか。ごめんね、じゃあ単刀直入に言う」

ずっと視線を腰あたりにしてたから気付かなかったけど、この人もかなりイケメンだ。

思わず見惚れていると、彼は両手を合わせ、突然頭を下げた。

「頼む。俺らの代わりに姫を守ってくれ!」

「え」

どういうことか訊こうとすると、残りの二人も頭を下げた。歳下にこんな頼み方をするなんてただ事じゃない。

「すみません、話が読めないんですけど……姫って、眠り姫さんのことですよね? ええと、……辰野先輩」

「そう! あいつがさ、もう限界みたいなんだ。俺達もかなり頑張って守ってきたんだけど」

赤城というイケメンの先輩は、ため息をつくと両手で顔を覆った。

「辰野は三度の飯より寝るのが好きなんだ」

非常に深刻なトーンで、彼は続けた。

「でもここ最近、妨害がすご過ぎるんだよ。昼休みも放課後も、あいつと仲良くなりたい奴らが押しかけて。寝たいのに叩き起こされて、もうノイローゼになっちゃってんの」

なるほど……。

良かった、リンチされるわけじゃないみたいだ。

ひとまず安堵し、真面目にアドバイスを考える。

「うーん。起こされるのが嫌なんですよね? じゃ、耳栓してもらったらどうですか。高いけど、遮音性良いやつ紹介しますよ」

「いやいや、耳塞げばいいってわけじゃない。あいつ、美人だろ。力ずくで起こそうとする奴もいれば、仲良くなれないならせめて写真におさめたいって、盗撮する奴らもいるんだ」

赤城さんが言うには、以前姫を無理やり押し倒そうとした男までいたらしい。

そんなの恐怖だ。トラウマなんてもんじゃない。

そういえば俺も今朝体操着をコネコネしてたかもしれない男子を見たし。……思った以上に大変そう。

でも、何でそこで俺に助けを求めるんだ?

不思議に思ってると、彼はまた両手を合わせ、鬼気迫る表情で叫んだ。

「だから、あいつが安眠できる場所が欲しいんだよ。頼む入川君、あいつを君の部室に匿ってくれ!!」

それか〜!!

彼らが接触してきた理由に合点がいく。しかし顔は引き攣ってしまった。

「ぶ、部室とはちょっと違うかもです。部活じゃないので」

「同好会だっけ? 申請通ったんだし、同じだよ! 昼寝部だっけ?」

「睡眠研究会です」

スマホの画面を閉じ、ポケットに入れる。入川雅月は、ここで初めてため息を零した。

二年生の彼は、部活にも委員会にも所属していない。しかし唯一、同好会にだけ所属している。

メンバーは雅月ひとり。創設したのも雅月本人。睡眠について理解を深める(のが名目の)、睡眠研究会だ。

ちなみに借りてる教室には誰も入ってこないので、今や雅月だけの超プライベート空間と化している。

学校で堂々と寝たい一心でつくった同好会。申請するときも一蹴されるか説教されるかの二択だと思ったから、その時だけは海外の大学や専門家が発表した論文をレポートにまとめて教師にプレゼンした。

睡眠がいかに大事か。いかに健康や学習に大事か切々と説いた。その甲斐あって手に入れた大切な場所である。

この三年達は、どこかから研究会の噂を手に入れて接触してきたようだ。

「君がつかってる教室、暗幕かけててすごく寝やすそうだから。二時間レンタルとかで良いんだ、どうにか姫を助けてやってくんないかな」

「事情は分かりましたけど……先生に見つかったら、ちょっと言い訳が難しいです。なのでお試しから始めて、後々ちゃんと入会していただけるなら大丈夫かも……」

「ありがとう! それじゃあ姫にも言っとくよ! 仮眠部だっけ?」

「睡眠研究会です」

あれよあれよという間に話が進み、眠り姫を迎えることになってしまった。

赤城先輩と連絡先を交換し、残りの二人からはかたい握手を求められる(無言の圧)。

あ─────困った。

俺の超絶のほほんライフに終了の危機だ!

「入川君が優しい子で良かった〜!! ってかめっちゃイケメンだし、この学校じゃ色々大変だったでしょ。これからは俺達が守るから、何でも言ってよ!」

「あ、ありがとうございます」

確かに、小さなトラブルなら今まで何回かあったけど。自他ともに認める適当マインド故、大抵の困難はひとりで乗り越えてきた。

要領がいいわけではないけど、メンタルは強い方だ。好意だけ受け取って、先輩達とは別れた。

しっかし、悩む。

眠り姫……否、辰野先輩は確かに可哀想だ。できれば力になりたい。

でも睡眠同好会に来たら、彼と二人きり。あの暗く狭い空間で過ごさないといけない。

学校一のイケメンと? いやいや、無理。例え彼が熟睡したとしても、俺が低酸素状態になって死ぬ。

それに何よりも……あの人が、俺と顔を合わせたくないかもしれない。

頭を抱えながら自分の教室へ戻ると、一番仲が良い館原がやってきた。

「入川〜。大丈夫? さっきお前が三年生に引きずられていったって聞いてさ」

「あぁ、大丈夫。詰められるかと思ったけど、全然違った」

心配そうにしてる彼を安心させる為に、笑いながら椅子に座る。

「俺、睡眠研究会ってやってるじゃん? 放課後に姫……辰野先輩を部屋で寝かせてやってくれないか、って言われてたんだ」

「何だそりゃ。そんなに寝たかったら、家に帰って寝れば?」

その通りだ。だがその言葉は俺にも当てはまるからやめてくれ。

「家に帰るのも体力いるんだよ。授業終えて、小休止してから家路につきたいっていうの? 何があるか分かんないし、帰宅部だって命懸けだろ」

「ちょっと分かんないけど。それで、お前は部屋貸すこと了承したん?」

「したよ。断れる雰囲気じゃなかったもん」

表向きはにこにこして優しそうな人達だったけど、裏では分からない。スイッチ入ったら暴れることもあるし、長いものには巻かれることにした。

「ふーん……でも眠り姫が本当に来るかどうかは分かんないんだろ?」

「う、うん」

館原の言う通りで、そこは分からない。喋ったことないし。……学校では。

「じゃ、ナシになる可能性のが高い! あんま落ち込むなよ。最悪俺も協力するからさ」

頭をぐしゃりと撫でられる。

いつも明るく、前向き。太陽みたいにきらきら光って見える彼は、俺の密かな自慢だ。

さっきまであんなに不安だったのに、もう心が軽い。

「ありがと、館原」

友人の励ましに感謝しつつ、学校を出た。

いやー、今日は疲れた。

夕焼け色に染まる道を歩きながら、ふと考える。

あの人は、今も学校のどっかで寝てんのかな。

「ひとりで……」

俺と同じ。でも置かれてる状況が違いすぎる。俺は知名度と期待値ゼロの生徒だけど、眠り姫は確か成績優秀。才色兼備の学校の顔だ。

だから、何事も起きませんように。

心の奥底で密かに願い、しみる夕日に瞼を伏せた。

翌日も翌々日も、眠り姫は現れなかった。

俺に会いに行くよう伝えた、と赤城先輩からメッセージが来たけど、特段何もなく。

授業中、姿すら見ない人のことを考えて、窓の外に広がる空を見上げる。

平和なのか何なのか全然分からんぜ……。

高校生って結構大人だと思ってたけど、案外そうでもなかった。

小さなことを誇張して、あることないこと言いふらす。

眠り姫のことだってそうだ。

性格きついとか、プライド高いとか。そんなことはない。そんなはずはない、と思ってしまう。

「はぁ……」

でも俺ひとりが声を上げたところで、どうにもならない。噂はひとり歩きし、目には見えない力を振りかざす。

難儀だ。俺も彼も寝たいだけなのに。そう思ったら、やっぱ可哀想で仕方なかった。

放課後、どこにいるのか捜しに行こうかなぁ……。

自分から関わることはやめようと思ってたのに、いつしか心は完全に彼の方に傾いていた。

顔を合わせたり、話しかけたりはしない。ただ本当に少しだけ……元気かどうか確認して、帰ろう。

その日の放課後、雅月は鞄を教室に置いて廊下へ出た。

一応三年の教室を全部覗き、眠り姫がいないことを確認する。

やはり一年がうろうろしてると目立つようで、最後に覗いた教室のドア付近にいた先輩が声を掛けてきた。

「おっ? 誰に用?」

「あ。え〜っと……辰野先輩を捜してて」

もしここが辰野先輩のクラスじゃなかったら、何組かも知らないのに来たのか、と呆れられそうだ。しかし運がいいことに、先輩のクラスはここだった。

「辰野はだいぶ前に帰ったよ。あ、帰ったわけじゃないのか……多分別棟とか行ってるんじゃない? 静かだし」

「あ、ありがとうございます!」

親切なひとで良かった。お辞儀して、渡り廊下の先の別棟へ移動する。

特別授業のときしか使わない棟で、ほとんどが空き教室だ。そして、人がいない。

放課後は少し不気味だけど、確かに仮眠するにはおあつらえ向きである。

内心感心しながら散策していると、廊下の奥には誰かいるのが見えた。

知らない男子生徒。彼は扉に近付き、目の前の教室の中を覗いているようだ。

何してんだ……?

不思議に思っていると、彼はスマホを取り出し、扉の隙間に入れた。

────まさか。

猛烈に嫌な予感がして、歩みを進める。廊下のど真ん中へ行き、わざと足音を立てて近寄った。

彼は俺に気づくと、青い顔で走り去って行った。

「ちょっとちょっと……」

どう見ても、盗撮しようとしてたよな。

あんな高い位置にスマホを翳すこと、そうそうない。彼がいた扉の前へ寄って、ぐっと踵を浮かした。

扉についた窓ガラスから中を窺う。そこには、机の上で横たわる少年がいた。

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俺が通う学校には姫がいる。普通、姫と言えば綺麗な女の子を想像するだろう。でもウチの姫は全然違う。綺麗は綺麗。だが誰も寄せつけない茨の姫だ。笑ってるところを見た者は指で数えるほどしかいない。二単語以上話してるところを聞いた者がいない。寝ることが大好きで、昼も放課後も寝ている。最終的についた呼び名が「眠り姫」。色々噂に尾ひれがついている気がするが、一番のツッコミどころを上げる。性別:男。痩せ型で長身、モデルかと思うほどのイケメンだ。その美貌故、こんな揶揄を含んだ渾名が定着した。捺原高校の眠り姫は他校にまで知れ渡り、彼を一目見ようと校門前で待ち伏せる者まで現れた。アイドル同然の扱いに大混乱が起きそうなものだが、眠り姫は学校に大勢のファンがいて、彼らが牽制することで校外のトラブルは防げているようだ。問題は校内だ。こちらは無法地帯で、秩序なんてない。眠り姫と関係を持とうとする者達が、時と場所を選ばず争いを繰り広げている。今朝も昇降口で言い争ってる生徒達がいた。眠り姫の体操着を物色していた、とか何とか。爽やかな朝から物騒なやり取りだ。あまりに酷かったら先生を呼ぼうかと思ったけど、幸い彼らは口論だけでおさまった。しかし、冷静に考えてカオスである。口論していた二人は男。姫も男。二人の男が一人の男を取り合ってるのだ。これはもっと深刻に捉えた方が良い気がする。ウチの学校は同性愛者が多い。それだけなら別に何とも思わないけど、こういうことがあると大変だなとしみじみ感じる。しかも大抵眠り姫関連だ。全校生徒を惑わす眠り姫は、ドロドロした諍いなど知らずに今日もどこかで寝てるのだろう。俺は無難にやり過ごして、テストも赤点さえとらなきゃいいと思ってた。青春も恋愛も興味ない。強いて言えば、寝たい。柔らかくて温かいお布団の中にいるときが一番幸せ。そういう意味では眠り姫と共通してる。「ねえ、私今朝辰野先輩見ちゃった!」「うそー、良いなぁー!」「もう超かっこよかったよ〜。放課後まで頑張れちゃう」廊下を歩いてる最中、女子達のきゃぴきゃぴした会話も耳に入った。もはらレアキャラ化してる眠り姫だけど、彼は三年生。俺は二年なので、接点はない。このまま、ずっと関わらずに過ごすんだろうな……あの人と。ところが、平和な日常にある日突然亀裂が生じた。「入川雅月君だよね。
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-29
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#1
間違いない。この高校に入ってから……初めて、見かけた。気付けば扉を開け、教室の中へ入っていた。足音を殺し、息を殺しながら彼に近付く。やばいやばい。引き返せ、俺。寝てるところを起こしたらキレられそうだし。何より、会うべきじゃない。そう思うのに足が止まらない。脳内だけで鳴り響く警鐘は、動悸でかき消されてしまった。机を縦に四つ並べた上に横たわる、栗色の髪の少年。この学校で知らない人はいない。眠り姫の、辰野朋空(たつのともそら)先輩。「……っ」前から綺麗な人だと思ってたけど、寝顔の破壊力は凄まじかった。長い睫毛。高い鼻。薄い唇。陶器のような、汚れを知らない白い肌。同じ男なのに……何故か緊張してしまうほど、彼の全てに目を奪われた。こんなに綺麗な男の人がいていいのか、真面目に考えてしまう。盗撮は絶対駄目だけど、こっそり覗こうとしたさっきの少年の気持ちもちょっと分かる気がした。どうせ手に入らないなら、写真だけでも。……みたいな。俺は、写真はあまりこだわらない。撮っても全然見返せないタチだ。その分、今目の前にあるものに脳を焼かれる。もっと近くで見たい。引きずるように足を一歩踏み出したが。「うーん……」「っ!!」彼が身じろぎをした為、全速力で教室から飛び出した。( あっぶねえええぇ……!! )何とかバレなかったと思う。ドアにへばりつき、廊下の床に崩れ落ちる。好奇心て怖い。最後の方とか記憶ないもん。そもそも人の寝顔を見るとか最低だろ! 俺が逆の立場だったらめっちゃ嫌だわ!罪悪感と自己嫌悪に苛まれながら、とぼとぼと家路についた。もう辰野先輩のことで頭がいっぱいで、疲れる。俺が勝手に考えてるだけなんだけど……何よりも楽しみだった放課後が、憂鬱で仕方ない。以前は帰りのホームルームが終わったと同時に大手を広げて、研究室に駆けていたのに。「雅月、おかえりなさい。最近帰り遅いけど、仲良い友達でもできた?」夜。帰宅してリビングに向かうと、テーブルを拭いていた母が不思議そうに尋ねてきた。「ただいまー。……うん、ちょっと遊んでた。あ、勉強はしてるよ!」「あら、偉いじゃない。でも仲良い子がいる方が嬉しいわ。たくさん遊んでおいで」「おけ。お金は使わないようにする」「大丈夫よ〜。仕事増やしたし、前よりはお小遣い増やすからね」夕食の支度を始め
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-04-01
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#2
ピロピロと、聞き覚えのある音楽が聞こえる。海底から少しずつ引き上げるように、暗かった視界も色を取り戻していく。何度かまばたきし、すぐにスマホのアラームが鳴ってるのだと気付いた。「う……?」でも変だ。座ってたから目の前に広がるのは廊下の壁のはずなのに、教室の天井を見上げている。あれ。床に倒れてる?不思議に思って身じろぎをすると、目の前に影が降ってきた。「起きたか」艷やかな栗色の髪。長い睫毛。薄い唇。人形か、ってツッコみたくなるほどの造形美。それが、鼻先が当たりそうなほどの距離にある。非現実的過ぎてしばらく呆然としたが、膝枕をしてもらってることに気付いて飛び起きた。「……ここどこですか?」「空き教室。ドア開けたら廊下で寝てたから、中に運んだんだ」立ち上がった少年は、片手に持っていた眼鏡を掛けた。運んだって、どうやって?めちゃくちゃ訊きたかったけど、気まず過ぎて無理だ。今も嫌な汗が滝のように流れている。彼が先に目覚めたことも、彼の方から話しかけてきたことも、全部想定外。接触するつもりも、認知されるつもりもなかったのに。────辰野朋空に、正面から見つめられている。「あっ」慌てて立ち上がったせいで、ポケットからスマホが落ちた。俺が手を伸ばすより先にスマホを拾われ、ずっと鳴ってる音楽を止められる。「十七時にアラーム?」辰野先輩は机の上に腰を下ろし、自身の膝に頬杖をついた。「面白い時間に起きるんだな」「……っ!」言葉に詰まり、顔が熱くなる。何とかスマホを奪い返すと、彼は「俺も同じ時間にアラームかけてた」と言って、自身のスマホの画面を翳した。そこには確かに、アラームの設定時間が映し出されている。そんなところでシンクロしたくなかった。散々顔を見られてしまったけど、これ以上一緒にいたらマジでやばい。俺だって気付かれる前に早くここを出ないと。「い、色々すみませんでした! じゃ」「雅月」踵を返したものの、足は凍りついたように動きを止めた。彼の呼びかけは、頭の中を白く塗り潰すのに充分過ぎたから。振り向かない俺に痺れを切らしたのか、辰野先輩はゆっくり歩いてきて、俺の前に立ち塞がる。「久しぶり。元気そうだな」先輩は瞼を伏せ、わずかに微笑んだ。とは言え、こっちは全然笑えない。彼から視線を外せないまま後ろに後退る。「俺……っ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-04-02
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#3
ようやく狭い空間から解放された。でも先輩の視線は、さっきより鋭い。ていうか、可愛いって。それこそ言われたことがない。朋空先輩は案外乙女なのかもしれないな。心の中で頷いて、彼の隣に腰を下ろした。「可愛くはないですけど……先輩は、何で研究室に来なかったんですか? 赤城先輩から行くように言われてたんでしょ?」「行くわけないだろ。お前の同意を得たとか言ってたけど、絶対強引に言わせたんだと思った」さすが、察しがいい。先輩は一見気だるそうだけど、実は周りをすごく見てて、思慮深いんだろう。でも、そんな先輩だから……尚さら力になりたい。「俺、先輩を助ける為なら何でもします。だから遠慮しないで、研究室をつかってください」上半身だけ彼の方に向き、力強く言い放った。朋空先輩は尚も迷ってる様子だったから、彼の手を引いて無理やり研究室へ連れて行くことにした。睡眠研究会に割り当てられたのは四階の一番奥にある、資料室の隣の空き部屋だ。教室の半分もないけど、簡易ベッドを置くには充分な広さ。窓とドア側の窓ガラスにも暗幕を掛けていて、防音のパーテーションを置いている。ほんとは更に耳栓もしたいところだけど、そこまでするとドアを叩かれても気付けないからやめた。先生が来たときに対応できないと、同好会の存続も危ぶまれるから。「先輩、このエアーベッド結構寝心地良いんですよ!」「これ持ち込んでること、先生は知ってんの?」「知りません」「バレたらひと悶着ありそうだ……」先輩はある程度きょろきょろして、パーテーションの中に入ってきた。「ベッドはクイーンサイズだからぎりぎり二人でも寝られると思います。でも俺はしばらく来ないので、この部屋は先輩がつかってください」「お前は? 来ないのか?」「そうですねぇ……。部屋も狭いし、これからはバイトしようかなって思ってる」から、と言って振り返った。その瞬間唇に柔らかい何かが当たり。───視界が真っ暗になった。え?……温かい。それが何なのか確認したかったけど、後頭部を手で押さえられ、腕を掴まれる。逃れることはできなかった。「ん……ふっ……!」息ができない。苦しさのあまり咳き込んだとき、ようやく目の前に色が戻った。先輩の唇に絡めた、みだらな糸つきで。「な。な、な、な、何」「キス」状況が理解できず口をパクパクさせる俺に、先輩
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-04-03
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「なあ。もう、一緒にいよう。……雅月」名前を呼ばれる度、心臓が跳ねる。俺を名前で呼ぶ人が学校にいないから、尚さら意識してしまうのかもしれない。でも逆も然り。先輩を名前で呼んでる人は見たことがない。大体苗字か、姫の愛称。そして、姫と言うにはカッコよすぎんか? というのが、個人の感想。「で、ですね。一緒に……いますか。朋空先輩」彼の隣に並んで歩く。すごい特権を手に入れてしまった気がする。意味もなく名前を呼んだりして、アホな俺は絶対浮かれてる。訊きたいことはたくさんあるけど、とりあえず今は、傍にいられるだけで充分だと思った。ただ一緒に校内を歩いてるだけで、ものすごい視線を感じた。先輩はこれをいつも一人で耐えてるのか。すごいな……。すごいけど、やっぱり心配だ。初めて一緒に学校から帰って、マンションのエレベーターで別れた。その後もどこか浮き足立ち、一晩目ぇギンギンだった。結局、一睡もせずに朝を迎えてしまった。「行ってきます……」「行ってらっしゃーい」倦怠感を抱えながら部屋を出て、エレベーターに乗る。一夜明け、朋空先輩と話せるようになった喜びがじわじわ込み上げてくる。俺なんかが先輩の傍にいたら色々迷惑かけちゃうかもしれないけど……それでも、これからはこっそり先輩を守ろう。なるべく目立たずに、陰ながらフォローするんだ。改めて決意し、エントランスを出る。意気揚々と外に乗り出した俺の前に、彼が現れた。「よう」「うわああ!!」そこにいたのは、眼鏡をかけた朋空先輩だった。昨日会っていたとしても、自宅で三年以上出くわさなかった人に会うと結構驚くということを知った。自分でもびっくりするぐらい後ろに退いてしまい、先輩は苦笑する。「会おうと思えばいつでも会えるに決まってるだろ。同じマンションなんだから」「あぉ……っ」心の準備ができなかったせいで、アザラシみたいにアオアオ言ってしまう。「あ、おあようございます」「おはよう」二人で高校の方へ歩き出す。徒歩圏内だけど、時間はめちゃめちゃ長く感じた。「と、朋空先輩。俺が捺高に入ったことは、いつから知ってました?」「ん……去年の夏ぐらい?」「余裕で半年以上経ってるし、俺より前に知ってたんじゃないですか。先輩も話しかけてくれたらいいのに」さすがに酷いと思って頬を膨らますと、先輩は吹き出した。「
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#5
日中は昨日までと同じく、研究会の詳細や朋空先輩の所在についてよく訊かれた。元はと言えば赤城先輩が発端なんだけど、それはもう仕方ない。ある意味では先輩の関心が一旦俺に向くことで、ちょっとしたワンクッションになる。危なそうな人を予め知ることもできるし、悪くない気がしてきた。この時の俺はとても呑気に。密かに、知名度が先輩の次ぐらい高まってることも知らず、放課後まで過ごした。「あ。朋空先輩、お疲れ様です!」「お疲れ」帰りのホームルームを終え、研究室に向かう途中でちょうど先輩と会えた。今朝会ったばかりなのに、何だか懐かしく思えた。「さ。どうぞどうぞ」部屋に入り、ドアを閉める。朋空先輩にベッドを指し示し、俺はドア付近の椅子に腰掛けた。「それは……」「はい?」「どういうこと?」部屋の端と端に留まり、見つめ合う。怪訝そうに尋ねる先輩に、俺も意味が分からず。顎に手を添え、考える人みたいなポーズをとった。「どういうこと、とは」「何でそんなところに座ってんの」「……あぁ! 俺はここで適当にスマホ見て、休んでますよ。ベッドは先輩が伸び伸び使ってくださいね」先輩の為を想って微笑んだのだが、彼はさっきよりも腑に落ちない表情で腕を組んだ。「お前もいつも寝てるんだろ? 何で俺がいたら寝ないんだ」「俺は大丈夫ですよ。そもそも先輩がここにひとりじゃ来づらいって言うから、付き添いで来てるだけなので」「雅月」「はい」「来て」朋空先輩はベッドに座ると、隣の面を叩いた。…………。何だ、その有無を言わさない感じは。全力でツッコみたかったけど、言われるまま隣に行き、失礼しますと言って座った。とりあえず何もない正面を見ながら、隣の先輩の声に耳を傾ける。「お前が傍で起きてるのに、俺だけ寝るわけにいかないだろ」「そんなことないから、気を遣わないでください。それに俺は、先輩が寝てる間に変なことしないし!」冗談混じりに笑うと、先輩は少し考え、含みのある笑みを浮かべた。「してもいいけど?」「え?」それは、どういう……。不思議に思って横を向いたとき、身体を引き寄せられた。「わあっ!」視界が反転し、柔らかい腕の中に抱き込まれる。「ちょ、先輩っ」「はは。……あったかい。お前、赤ん坊みたいだな」先輩の強行のせいで、向かい合わせで寝ることになった。逃げよう
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見たい、見たくない
『独りなら、夜まで一緒にいるよ』ずっと昔に掛けられた言葉が、今でも耳に残っている。急に、小学生のときのことを思い出してしまった。……マンションに帰ってきたはいいものの、誰もいない部屋に入りたくなくて。一階の共用スペースで時間を潰していた俺に、優しく微笑む男の子がいた。変わった名前だったから、すぐに覚えた。笑うととても綺麗で、声も透き通っていて。傍から見ればすごく懐いてたんだろう。同じマンションの人は、俺達が常に一緒にいることを分かっていた。本当の兄弟みたいと言われたこともある。あの時は嬉しかった。けど、今は思う。兄弟じゃなくてほんとに良かったと。誰を好きになってもいいなら、俺はやっぱり……この人以外には考えられない。久しぶりに話して、触れて、ずっと押し殺してた感情が溢れて出してしまった。「俺も、朋空先輩が欲しい」優しい声とか、柔らかい掌とか。視線も関心も、全部独り占めしたい。こんな気持ちになったのは初めてだ。我ながら傲慢だと思うけど、今さら撤回や訂正はできない。俺の言葉を聞いた朋空先輩はきょとんとしていたけど、すぐに意味を理解し、微笑んだ。「もちろん、やるよ」額にチュッと音の鳴るキスをされる。こんな甘い行為も、普段の先輩を知ってる人からしたら想像もできないだろう。俺だってそうだ。こんなに表情豊かで、可愛い人だなんて────二人きりにならなかったら絶対知らないままだった。「あの……俺達のこれって、告白になるんですか?」「……」純粋に疑問で問いかけると、彼はうーん、と天井をあおいだ。そして非常に淡々と言い放つ。「告白。からの、カップル成立」「はっや!!」びっくり過ぎて叫んでしまった。想像していた百倍軽いぞ。告白からのお付き合いって、もっとこう……互いの表情や仕草を窺い、同意を得るものだと思ってた。うわわわ……もう成立してしまったらしい。俺と朋空先輩は、恋人同士と。嬉しいけど、俺達は男で、つい最近久しぶりに喋った仲だ。冷静に考えたら山ほど問題を抱えている。だけど先輩は落ち着いている。相変わらずの無表情で、俺の頭をぽんぽんと叩いた。「お前に怖い思いをさせたくないから、今まで距離をとるようにしてた。でも、俺も馬鹿だな。よく考えたら、守ればいいだけだったんだ」朋空先輩はなにか腑に落ちた様子で体を起こした。俺のことも抱き
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-04-06
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#1
なるべく他人に迷惑かけず、細々と生きていた。高校に入ってからは自由主義に拍車がかかり、睡眠研究会なるものを立ち上げてしまったが、それ以外は特筆すべきこともない。授業態度は真面目、遅刻も早退もなし。そんな俺が、今や全校生徒の視線を集めている。いや、正確には俺の隣。「辰野先輩、おはようございます!」「……おはよう」「辰野先輩、今日の体育、テニスの授業ですよね? 頑張ってください!」「ありがと……」想像してた百倍やばい。数歩歩くだけで女子に話しかけられてる。朋空先輩とめでたく(?)お付き合いしてから、待ち合わせして一緒に登校するようになった。それはいいのだが、校門をくぐってから辰野先輩コールが止まらない。俺が返事してるわけじゃないのに、聞いてるだけで疲れてきた。やっぱり朋空先輩ってすごい。淡々と対応してるけど、俺だったらそのうち奇声上げて発狂する。「みんな朋空先輩に話しかけるところがすごいや。俺だったら、好きな人に話しかけられない。遠くから見てることしかできないよ」人見知りではないけど、恋愛に関しては間違いなく引っ込み思案。ため息混じりに言うと、彼はようやく楽しそうに笑った。「かもな。でも、俺はお前のそういうところが好きだよ」「先輩……学校に入ったら、好きとか言っちゃ駄目です。誰かに聞かれたら大変」「いいだろ別に。むしろ聞かせてやりたいよ」朋空先輩はくるっと振り返ると、俺の髪に触れた。「俺の可愛い恋人のこと。他の奴らが欲しいと思わない程度にな」下駄箱で上履きに履き替え、互いの教室へ向かう。……はずだったのだが、何故か男子トイレに連れて行かれ、個室に引き込まれてしまった。「先輩? 何でここ……」「みんなお前のこと見てたな」「いやいや、何言ってんですか。先輩のこと見てたに決まってるでしょ」「いーや。俺と一緒にいるお前。……一体誰なんだ、って興味津々だったぞ」先輩は俺の前髪を持ち上げ、額にキスした。「俺といるせいで目立って、変な奴らに狙われないか。それだけが本当に心配だ」「あはは……大丈夫ですよ。俺は自衛できます。先輩のことも守るつもりだし」自身の胸を叩いて自信満々に答えると、先輩は露骨なため息をついた。「全然駄目だな。こんなちっこくて可愛いんじゃ」「そ、そんな小さくないですよ!」確かに高身長とは言い難いけど、がっか
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-04-07
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#2
「このままじゃいけないと思って、離れたんだ。それがこんな風に話せるなんて」先輩は横向きになり、スマホを枕元に置いた。「今もちょっと、夢でも見てるんじゃないないか……って思う」俺が思うならともかく、朋空先輩がそんな風に思うなんて。……意外過ぎた。そんなこと聞いたら、俺もめちゃくちゃ自惚れちゃうじゃないか。「現実ですよ。ほら、触れるでしょ」彼の空いた左手をとり、そっちも繋ぎ合わせる。温かくて、自然と眠りに誘われそうだ。朋空先輩も同じなのか、目を細め、静かに頷いた。「幸せだな……」……。俺も。という言葉をぐっと飲み込んだ。こんなに尊い存在がいるなんて。一週間前の自分は夢にも思わなかった。季節通り、とうとう俺にも春がやってきたってことか。内心苦笑して、寝息を立てる朋空先輩を眺めた。もう寝ちゃった。寝つきがいいのか、寝不足なのか……分からないけど、寝顔が可愛過ぎて考えることを放棄してしまった。……さてと!朋空先輩を起こさないよう、音を殺してベッドから起き上がった。彼は少しの振動でも気付きそうだから、部屋を出るまでに一分近くかかってしまった。扉を開け閉めし、何とか廊下に出る。「ふぅ」これはこれで大仕事だな。向かいの壁に寄りかかり、天井を見上げた。朋空先輩がこの研究室に来てることを、恐らく多くの生徒が知ってしまった。正直鍵をかけてるぐらいじゃ安心はできない。先輩に安眠してもらうには、やはり俺が廊下で見張って、来訪者がいたら対応することだ。案の定数人の生徒がやってきたが、丁重に説得して帰ってもらった。できれば先輩が寝てるときではなく、朝や授業後の休み時間に話しかけてほしい、と伝えて。何だかんだスマホを見ていると、あっという間に夜がやってきた。ドアを開け、最奥のベッドに片膝を乗せる。「おはようございます」ブランケットを少しだけめくり、瞼を開けた彼に笑いかけた。「帰りましょ、朋空先輩」夏は日が長いけど、空が薄紫に染まったらあっという間に夜に傾く。マンションに辿り着き、エレベーターのボタンを押した。「……寝癖すごかったな」「あはは。気にするほどじゃないですよ」エレベーターに乗り込み、姿見を見た朋空先輩はぽつりと呟いた。「授業終わってるから帰るだけだし。髪が乱れた先輩も、それはそれでかっこいいし」「相変わらずおだてんの
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-04-08
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#3
「入川、何か最近いつも楽しそうだよな」「え、そう?」昼休み、売店で爆弾のようなおにぎりを二個買った。顎が外れそうなほど大きく、親の仇ぐらいぎゅうぎゅう握ったおにぎりなのだが、具の鮭たらこが絶品なので毎週食べている。片手におにぎり、もう片手にお茶を持って、隣を歩く館原に振り返った。「朝は眠いし、授業は全然分かんないし。正直絶望的だよ」「いんや、そういうんじゃないんだよ。お前は大体笑顔だけど、最近はそれに輪をかけてテンション高めっていうか」ハキハキしてるし、動きも俊敏だという。自分では分からないけど、周りにはそう見えてるんだろうか。「眠り姫先輩の件で疲れてると思ってたけど。絶対良いことあったろ。……それも、その先輩のことで」「え? な、何もないよ!」非常に際どいところを突かれ、慌ててかぶりを振る。館原は勘がいい。俺と朋空先輩が最近一緒に登下校してることも知ってるし、先輩後輩以上の関係に見えてる可能性がある。そして、同性愛者が多いことも分かってる。それはつまり、俺や朋空先輩が同性愛者、という推測にも辿り着きやすいわけで。「もしかして、お前……」館原は足を止め、怪訝な表情でこちらを見た。やばい……怪しまれてる。言い訳する為に、必死に思考を巡らせる。すると背後に誰かの気配を感じた。「入川、彼女ができたんだろ?」「わわ! あ、矢代先生……!」軽く背中を叩かれ、思わず飛び上がりそうになった。危うくおにぎりも落としそうになったが、すんでのところでキャッチする。現れたのは、担任の矢代先生だった。神出鬼没で、多分学校で一番人気があるイケメンの先生。彼は俺の反応を見ると、意味ありげに口端を上げた。「先生は良いと思うぞ。何事も経験だし、今しかできないこともある。館原、お前もな」「え? 俺ですか?」「さっき教室でお前を捜しにきてる子がいたぞ。部活のマネージャーって言ってたかな」「あ、そういや部費回収しに来るって言ってた! 失礼します!」館原は一気に青ざめ、大慌てで来た道を走っていった。「廊下を走るのはいただけないな」「矢代先生、俺に彼女って……誰から訊いたんですか?」「ん? 適当に言ったんだけど?」怖怖尋ねると、矢代先生はあっけらかんと言い放った。てっきりなにか知られてると思ったから、愕然とする。「何だ、本当にできたのか。図らずもカマ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-04-09
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