雪の精霊~命のきらめき~

雪の精霊~命のきらめき~

last updateLast Updated : 2026-04-11
By:  あるてCompleted
Language: Japanese
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容姿端麗、文武両道と完璧を絵に描いたような美少女。ゆき。 だけど中身はれっきとした男の娘! 完璧すぎる才能(ギフト)を与えられたゆきは「人々を幸せにする」使命を忠実に果たすことだけを考え、接する人に優しさと愛を伝える。 プロローグの重い展開から一転し、天真爛漫に育ったゆきがクラスメートや家族と過ごすほのぼの日常。 そして使命達成のひとつの手段として選んだ配信者活動。 家族愛弾けるゆきがあらゆる人に愛し愛され心温まる日常を過ごし、転生なしで無双しちゃいます。

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Chapter 1

第1曲 プロローグ『降臨』

عاد أنس إلى البلاد، وباعتبار لينا عشيقته السرية، تم نقلها على الفور إلى الفيلا رقم 8.

ووفقًا للاتفاق، قبل لقائه، يجب أن تغتسل جيدًا، ولا يسمح بأي رائحة عطر أو مستحضرات تجميل.

كانت تلتزم تمامًا بذوقه، فغسلت نفسها بدقة، وارتدت ثوب من الحرير البارد، ثم صعدت إلى غرفة النوم في الطابق الثاني.

كان الرجل جالسًا أمام الحاسوب يتابع بعض الأعمال، وعندما رآها تدخل، ألقى عليها نظرة باردة.

"تعالي."

كان صوته باردا وخاليا من المشاعر، وسقط على قلب لينا بثقل وكآبة.

كان مزاجه متقلبا وطباعه باردة، وكانت لينا تخاف من غضبه، فلم تجرؤ على التأخر لحظة، وأسرعت نحوه.

وقبل أن تقف مستقرة، جذبها أنس إلى حضنه، وأمسك بذقنها بأصابعه الطويلة.

انحنى، وقبل شفتيها بشراهة، وفتح أسنانها بقوة، وبدأ يمتص عبير فمها بجنون.

أنس لم يكن يحب الحديث معها كثيرا، لا يعرف الحنان، ولا يطيل في المقدمات، يراها، فيأخذها مباشرة.

كان يبدو نبيلا ومتحفظا، لكنه في هذه الأمور، كان خاليا من الذوق، متسلطا وعنيفا.

وهذه المرة سافر في مهمة عمل خارج البلاد لثلاثة أشهر، وبعد كل هذا الوقت دون امرأة، من الواضح أنه لن يتركها بسهولة الليلة.

كما توقعت، كان أنس أكثر جنونا من المعتاد.

ضغط على خصرها، وقبلها على الأريكة، وعلى السرير.

ولم يكتفِ حتى نامت.

وعندما استيقظت، كان المكان إلى جانبها خاليا، لكن صوت الماء كان يتساقط في الحمام.

نظرت نحو مصدر الصوت، فرأت على الزجاج المتغيم خيالا طويلا.

شعرت لينا بالقليل من الدهشة؛ فهو في العادة، بعد الانتهاء، يغادر فورا، ولم ينتظر أبدا حتى تستيقظ.. هذه المرة، لم يغادر؟

بصعوبة جلست على السرير، كانت هادئة ومهذبة، تنتظر خروجه.

وبعد دقائق، انقطع صوت الماء، وخرج الرجل من الحمام، وقد لف جسمه بمنشفة.

تساقطت قطرات الماء من أطراف شعره، وانسابت على بشرته البنية، انسابت ببطء على عضلات بطنه المحكمة، ذات الخطوط الجذابة.

وجهه الوسيم كأنه منحوت، حاد الملامح، وعيناه الباردتان المظلمتان لا تمنحان أمنا لأحد.

كان وسيما جدا، لكن هالته الباردة كانت تجعل الاقتراب منه صعبا.

عندما رآها استيقظت، ألقى عليها نظرة باردة.

قال: "لا داعي لأن تأتي مجددا."

تجمّدت لينا، ما معنى لا داعي لتأتي؟

عاد يرتب ملابسه، ثم ناولها وثيقة. "هذا العقد، تم إنهاؤه مبكرا.."

لما رأت وثيقة الاتفاق بينهما، فهمت تماما... كان يريد إنهاء علاقته بها.

لم يكن بقاؤه هذه المرة لأنه يشتاق لها، بل لينهي الأمر.

خمس سنوات مضت، وكانت تتوقع أن يأتي هذا اليوم، لكن لم تظن أن النهاية ستكون هكذا.

بلا تفسير، بلا سبب، مجرد أمر بإنهاء العلاقة.

كتمت الألم في قلبها، ورفعت رأسها ببطء، ونظرت إليه وهو يكمل ارتداء ملابسه.

قالت بصوت خافت: "بقي فقط نصف عام على انتهاء العقد، ألا يمكن أن ننتظر؟"

قال الأطباء إنها لا تملك أكثر من ثلاثة أشهر، وأرادت فقط أن تبقى قربه حتى النهاية.

لم يجب، بل نظر إليها ببرود، وكأنه يلقي بشيء سئم من اللعب به.

صمته أخبرها بكل شيء.

خمس سنوات مضت، ولم تستطع تغيير قلبه.

يبدو أنه قد آن أوان الاستيقاظ من الحلم.

أخذت لينا العقد، ورفعت زاوية شفتيها بتصنع، تبتسم بهدوء وجمال، وقالت: "لا تكن جادا هكذا، أنا كنت أمزح."

ثم أضافت: "أنا منذ وقت طويل لم أعد أريد أن أكون معك، الآن وقد انتهى العقد مبكرا، فأنا في قمة السعادة."

توقفت يد أنس وهو يرتب كم قميصه للحظة، ثم رفع عينيه الباردتين ونظر إليها.

رآها لا تبدو حزينة أبدا، بل كان على ملامحها شيء من الفرح، وكأن الأمر كان حرية طال انتظارها.

عقد حاجبيه قليلا، وسألها بهدوء: "أنت لم تريدي أن تكوني معي منذ وقت؟"

أومأت لينا بلا مبالاة: "نعم، عمري لم يعد صغيرا، وينبغي أن أتزوج وأنجب، لا يمكنني أن أبقى معك هكذا بلا اسم ولا صفة."

الزواج والإنجاب؟ هذا حلم لن يتحقق، لكن أمام أنس، أرادت أن ترحل بكرامة.

ثم ابتسمت وقالت: "الآن وقد انتهى العقد، هل يمكنني الحصول على حبيب في المستقبل؟"

كانت نظرة أنس غامضة، ثم نظر إليها قليلا، وأخذ ساعته من على الطاولة، وخرج.

"افعلي ما تريدين."

قالها قبل رحيله.

وبينما تراقبه يغادر، تلاشت الابتسامة من على وجه لينا.

أنس كان يكره أن يلمس أحد أشياءه، والآن لم يبد أي رد فعل على كلامها عن أن يكون لها حبيب.

يبدو أنه حقا...

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第1曲 プロローグ『降臨』
 はらり。 はらり。 音もなく雪は降り続ける。 どれくらい時間がたったのだろう。体に降り積もる雪を振り払う元気もない。 キラキラと美しい結晶で形作られた雪は容赦なく小さな体から体温を奪っていく。 手足は寒さでとっくに麻痺しており、声を出すことすらままならない。寒いという感覚すらわからなくなってきた。 向かいのマンションから悲鳴のような声を聞いた気がする。 そんなことはどうでもいい。 眠い。 なんだかだんだん暖かくなってきたような気がする。 このまま目をつむればどうなってしまうんだろう。もう痛いことやこわいこともなくなるかな。 だったらこのまま眠ってしまってもいいかも。起きているのももう疲れた。 さっさと寝てしまおう。 そしてわたしは自分の意識を手放す。 何も聞こえない。静寂に支配されていく。 意識が遠ざかるのを感じていると、誰かに抱きあげられたような気がした。 きっと気のせいだろう。 わたしを見てくれる人なんていない。いつだってわたしはひとり。 ひとりでただ眠るだけ。 考える力も失ったわたしは深い闇に落ちていくような感覚に身をまかせた。 声が聞こえる。「おきて。ねぇおきてよ」 誰かが呼んでいる?「はやくおきて」 やっぱり呼んでいる。わたしに言っているの? 目を開いた……ような気がする。 目の前に羽根の生えた小人がふわふわと漂っているのが見えたから。 少し光っている。「あなただれ? 妖精さん? ここはどこ?」 声が出た。と思う。 体の感覚もあいまいで現実感がない。夢? にしてはリアルだ。 妖精さんの羽根の色や少し長くて尖った耳、可愛らしい顔まではっきり認識できる。 ただ自分自身についてはまるで水に溶けてしまったかのように不安定な感じがする。 人間には魂と言うものがあると本で読んだ。わたしは今、魂になっているのかもしれない。「妖精とはちょっと違うかな。私は神様のお手伝いをしている精霊だよ。ここがどこかについてはちょっと難しいかな。この世とあの世の境目、よりはちょっとこの世に近いところ」 自分自身のことを確認しているとそう答えてくれた。 こんな雪の日に現れたのだからきっと雪の精霊だろう。 ここがどこなのかについては聞いてもさっぱり分からなかったけど。 ホタルのように視界の中をさまよいながら精霊は続
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第7話 配信前のひととき
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第8話 初配信
 ゆきちゃんがスタジオに入ったのをしっかりと確認してからより姉がわたしに確認してくる。 「それでこっちの手筈は整ってるのか?」 もちろん抜かりはないとばかりに笑顔でサムズアップ。 ゆきちゃんのことに関してはわたしに任せてもらえれば万事大丈夫。マネージャーかってくらい予定を細部まで把握してる。 スマホを取り出し、動画アプリを立ち上げる。そこに表示されている配信者のチャンネル名『雪の精霊/YUKI』「そのまんまじゃねーか!隠す気ほんとにあんのか?」 わたしもまさかとは思っていたがものは試しと検索してみたら一発で見つかったので思わず笑ってしまった。普段から自分を雪の精霊だって言ってるのにそのまんまって。 これでわたし達には秘密にしておきたいって言うんだからどこまで本気なのか疑っちゃうよね。「完璧人間なのに変なところで抜けてやがる」 まぁそういうのもゆきちゃんのかわいいところなんだけどね。「天然さんなのかしらね」 かの姉もくすくす笑いながらスマホを操作してる。「記念すべきゆきの初配信はスマホじゃなくて大画面で見たい」「ナイスアイデア、さすがあか姉!テレビにつなげるね」 アプリを使ってスマホをテレビ画面にリンクさせたところで配信開始3分前。 今頃ゆきちゃんはどんな気持ちでいるんだろうな。 不安半分ワクワク半分ってところかな? わたしもまたこうやって画面の向こうにいるゆきちゃんを見ることのできる日が再び訪れたことをとても嬉しく思っている。 子役の頃から画面の向こうでキラキラと輝いているゆきちゃんを見るのが好きだったから、突然引退したときは寂しくてわたしの方が泣いちゃったくらい。 アメリカではヒットしなかったしすぐに活動休止しちゃったからテレビで見る機会もほとんどなかった。 媒体は変わったけどこうして画面越しにキラキラするゆきちゃんをまた見ることができる。ゆきちゃん本人よりわたしの方が嬉しさで興奮してるかもしれない。「始まるよ」 カウントダウンが終わって画面が切り替わり、さっきゆきちゃんに見せてもらったアバターが画面に大きく映し出された。おー動いてる!『見に来てくれたみなさん、はじめまして~!わたし、今日からVtuberとしてデビューしました雪の精霊、YUKIです!初配信なのに160人も来てくれたんだね!ありがと』 絵師さんの最高
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第9話 箝口令
 金曜日の放課後。 明日はお休みということもあり、たくさんの生徒が残っておしゃべりしたり休みの日の予定を約束したりしている。 喧騒の中、わたしの名前を呼ばれたような気がしてそちらを向くと男子生徒が数人集まってスマホを覗き込んでいる。 スマホから聞こえてくるのはこの世で一番聞きなれた声。わたしの声だ。昨日の告知の配信を見ているらしい。ちょっと照れるんですけど。「な!この子めっちゃ可愛いだろ?」「絵師は日向キリか。俺も推しの絵師だけど、これはいつもよりクオリティが高いな」 さすがキリママの力作!やっぱりみんなかわいいと思うよね!自分のことのように嬉しい。まぁ自分の分身なんだけど。「それにこの子の声よ!チョーかわいくね?」「キャラによく合ってるな」 わたしがまだ中学生ということもあってキリママの書いた絵も幼い印象だったので、意識して少し高めの声で話してよかった。普段そんなに高い声で話してるわけでもないしこれで身バレすることはないだろう。「歌とダンスが好きなところといい、名前といい、……広沢っぽくね?」 えぇぇ!そんなあっさり……?名探偵すぎない?いやいや、ここは他人の空似ということでしらを切りとおすべし。ワタシカンケイナイ。心を無にしてやりすごそう。 幸い話をしていたのが男子だけだったので、直接聞かれることはなかった。 女子なら遠慮なく聞いてくるけど、男子はいまだにわたしに対して遠慮がち。 女子はもうみんな『ゆき』か『ゆきちゃん』って呼んでくれるのに男子は全員『広沢』って呼んでくるし。広沢は各学年にいるんだけどな。 ともあれ余計な火の粉が飛んでくる前にさっさと退散。(ゆきとひよりはもう待ってる頃かな) そんなことを考えながら急いで教科書をカバンに詰め込む。今日は日直だったので時間が遅くなってしまった。 帰り支度をしているとクラスメートが話しかけてきた。わたしは普段から無口なので友達とおしゃべりに興じることはほぼないんだけど、別に友達がいないとかじゃなく日常会話を交わす相手くらいはいる。「茜ちゃんの弟って確か自分のことを雪の精霊だって言い張ってるって言ってたよね?」 他の話題なら帰り支度を優先するけどゆきのことならいつでも大歓迎だ。他ならぬゆきのことなんだからあの2人ももう少し位は待ってくれるだろう。 弟の魅力はいくら語っても語り
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第10話 眠れぬ前夜
「明日からまた歌える」 お風呂に入った後、あとは寝るだけの時間になってわたしはバルコニーから星空を眺めてそうつぶやいた。 そういえば告知の配信からまだ何もしてないのにチャンネル登録者が千人超えるくらいまで増えていたのがどうしてかわからないんだけど、キリママが宣伝頑張ってくれたのかな? それだけ期待もされているようで少し緊張感が高まる。 そんなことを考えながら私は夜空を眺め続ける。 星空を眺めるとき、わたしはキラキラとゆらめく星の光を見つめているわけではない。肉眼では何も見えない虚空の闇をじっと見つめている。 目には見えないけれどそこに確かに存在している、力強く輝く恒星を想像する。 望遠鏡で覗けばどこを見ても星の光にあふれているけど、夜空には肉眼では見えない星の方がずっと多い。その数はそれこそ天文学的数字。 しかも中には昼間地球を煌々と照らす太陽よりも何百倍、何百万倍も明るく輝いている星やほぼ光速の速さで自転して電波を撒き散らかしている星、いままさに燃え尽きようとして大きく膨らんでいる星などいろいろある。 それこそ想像が追い付かないほど多種多様な星が見えない闇の向こうに確かに存在している。 わたしという星も今はまだ世間からは見えない。望遠鏡を覗き込んでも見えるかどうかも分からない小さな点でしかない。 だけどわたしはその程度で終わらない。もっともっと輝きを増していずれは一番星に、いやそれすらも超えて世界中を照らせるような輝きを放つようになりたい、いやなる。 恒星が自分自身を燃料にして輝くように、この命ある限り魂の全てを燃やし尽くして歌い続ける。 明日の夜がスタート地点。生まれたばかりの星として最初の輝きを人々に届ける。 わたしの声が、パフォーマンスが一人でも多くの人の耳に、そして心に響くようわたしは歌い踊る。わたしの光で一人でも多くの人に元気をもらってほしい、前を向く勇気を受け取って欲しい、傷ついた心に癒しを届けたい。 それがわたしの幸せであり、使命。 その輝きで闇夜を昼間のごとく照らしだしてみせる。 恒星に起きる最もまばゆい輝き、銀河全体の光にも匹敵する超新星爆発のように。「こんな時間に何をしてるんですか?風邪ひきますよ」 わたしの思考を中断させたのはかの姉の優しい声だった。「もう四月といっても夜はやっぱり冷えますから、湯冷め
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