LOGIN容姿端麗、文武両道と完璧を絵に描いたような美少女。ゆき。 だけど中身はれっきとした男の娘! 完璧すぎる才能(ギフト)を与えられたゆきは「人々を幸せにする」使命を忠実に果たすことだけを考え、接する人に優しさと愛を伝える。 プロローグの重い展開から一転し、天真爛漫に育ったゆきがクラスメートや家族と過ごすほのぼの日常。 そして使命達成のひとつの手段として選んだ配信者活動。 家族愛弾けるゆきがあらゆる人に愛し愛され心温まる日常を過ごし、転生なしで無双しちゃいます。
View Moreリスナーさんの前で復帰祝いの唄を披露し、失敗してしまったあの日から一年以上の月日が過ぎて、わたしは二十二歳になった。 そして今、わたしはある一室にいる。 「わたしはもっとみんなの近くで唄いたい!」 そう宣言してから半年以上、わたしはリハビリとボイトレに励み、そして自分の声を完全に取り戻した。いや超えた。 かつての音域からさらに半オクターブ、広げることができたのだ。 そしてわたしはボイトレに励みながら、ある計画を実現させるためにかつての自分の考えを覆す決断をしていた。「それではその時は全面的にプロデュースをお願いするということで。利益の取り分は書面通りで構いません。よろしくお願いします」 かつて大阪で琴音ちゃんを通じて知り合った女性プロデューサー、五代さんに向かって頭を下げる。「こちらとしてはどんな条件であれ、ゆきさんに来てもらえるなら大歓迎です。でも一体どういった理由で心変わりを?」 芸能界という世界を毛嫌いし、関連するようなところとは極力距離をおいてきたわたしが突然こんなことを言いだしたのだから、疑問に思うのも当然だろう。「確固たる目的のためです。わたしが以前、脳の障害で一年以上昏睡状態にあったのはご存知ですよね?」 黙って頷く五代さん。 ネットどころかオールドメディアでもニュースになったような出来事だから知っているのは当然だろう。いや、その仕事からしてたとえニュースにはなっていなくとも、彼女ならそのネットワークで情報を得ていただろうと思う。「元々わたしは幼いころから脳の障害を抱え、余命も宣告されていたことから生きることに対して諦めの気持ちがありました。だけどそれを変えてくれた人たちがいた」「お姉さん達ですね」 意外な人から突然核心をつかれてしまったことに驚き、わたしは目を見開いた。どうしてこの人がそのことを? わたしの疑問が顔に出ていたのか、五代さんはふっと笑うと以前は見せることのなかった柔和な表情を浮かべた。「ゆきさん、わたしは何も企業利益だけを考えてあなたに声をかけたわけじゃありませんよ。わたし
「みんなただいま!」 ようやく帰宅許可が下り、無事退院となったその日。 我が家では家族全員が休みを取って快気祝いのパーティーを準備してくれていた。「「「「おかえり!」」」」 声を聞くだけで分かる、心から待ちわびていた祝いの言葉。 お母さんから始まって、家族全員とハグをした。この辺はアメリカ生活をしていた名残なのかな。 お父さんは少し恥ずかしそうにしてたけど。息子相手なのになぁ。「それで、もう日常生活に支障はないのか?」 より姉が気づかわしげな視線で尋ねてきたので、わたしは元気をアピールするために腕をぐるぐる回してみせた。「この通り、すっかり元気だよ! まだ激しい運動は止められているけど、軽い筋トレくらいなら大丈夫。日常生活の筋力を取り戻すためにも家事は積極的にやってくださいだって。だから明日からはまたわたしがご飯を作るからね!」「……!」 みんな声にならないほどの衝撃を受けている。え、わたしがご飯を作るのってマズイ?「ま、またゆきのご飯が食べられる……」 両手で口を押さえたお母さんが感涙にむせぶ。えぇ、そんなに!? かの姉とあか姉は無言で両手を天高く突き上げている。一片の悔いなし? そしてより姉とひよりに両サイドから抱き着かれてしまった。「一年半ぶりのゆきちゃんの手料理! もう今からお腹が空いてきたよ!」 明日まで待ってたら餓死しそうだね。「いかん、よだれがとまらん」 本当によだれを垂らしてしまうより姉。乙女のする顔じゃないぞ。 でもこんなに待ち焦がれてくれていたとなれば腕が鳴るというもの。明日は目いっぱいご馳走を作ろう。「でも思ったよりも早く退院できましたね」 ようやく気分の落ち着いたかの姉がオードブルの並んだ食卓につきながら、感心したように言って来た。「そうだね。若さもあるけど、それ以上に頑張ったしね」 最初は半年の予定でリハビリプログラムを組
立てるようになってからのリハビリは、想像していた以上に大変だった。 平行棒、杖、歩行器を用いて転倒防止に注意しながら、重心移動や筋力向上、正しい歩行様式を取り戻していくのは一朝一夕にできるようなものではなく、なかなか思うように動いてくれない体に苛立ちを覚えつつも地道に筋力を蓄えていく作業。 下手に頑張りすぎると逆効果になると分かってはいるけど、一日も早い復帰を願う気持ちはなかなか抑えられるものでなく、遅々として進まないリハビリプログラムにヤキモキしていた。「さすが若いだけあって回復が早いですね」 歩行訓練後のマッサージをしてくれながら、理学療法士の飯島さんがそう言ってくれる。「自分では回復が遅く感じてしまい、どうしても焦ってしまうんですけどね」 どうしても頭をもたげてしまう焦りの心。 愚痴をこぼしたところでどうにもならないとは分かっているけど、ずっと優しく指導をしてくれる飯島さんにはつい甘えてしまう。「早くおうちに帰りたいですもんね。でもね、わたしもあなたのファンだから言うけれど、待っている側からすれば焦って戻ってきて取り返しのつかない後遺症が残るくらいなら、何年でも待つから万全な状態で戻ってきてほしいと願うものですよ」 優しい手つきでふくらはぎを揉み解しながら、それ以上に優しい笑顔を見せてくれる飯島さん。 リハビリが始まった当初からわたしのファンを公言していて、担当が決まった時には飛び上がって喜んだそうだ。 そんな熱心なファンをしてくれている彼女の言葉だから信じたいけれど、どうしても不安な気持ちは拭えない。「飯島さんはそうかもしれませんけど……」 八つ当たりにも似た発言だけど、飯島さんは気分を害した気配すらなく、穏やかに話を続けた。「不安になるのも分かりますけどね。ファンを信じるのもアーティストとしての務めじゃありませんか?」 ただの弱気の吐露にも関わらず、温かい表情で返ってきたその言葉に、わたしの中の何かが動いた。 今まで明確に意識したことはなかったけれど、わたしもアーティストの端くれな
リハビリをやり始めてから比較的すぐに自力で立ち上がれるようになった。 だけど、そこからが過酷な日々の始まり。 最初は一歩二歩と歩くだけで滝のような汗をかき、心拍数も爆上がりしてしまったのでその時点でリハビリ中止。 その後も数日間はトライしては中止の繰り返しで一向に進まない。 そこで体力の回復が先決だと判断した先生の指示により、立って歩くよりも先に長時間座ることから始めることにした。 ただ座るだけと思って侮っていたけれど、すっかり体力の衰えてしまった体にはこれが存外キツイ。 スマホを触って気を紛らわせているとはいえ、最初は二時間程度で音を上げてしまった。 だけどそれも繰り返すうちにだんだん苦ではなくなっていき、半日座っていられるようになった頃にはかなり体力も回復していたようだ。 その後に始まった歩行訓練でも最初のように滝の汗をかくことはなくなり、ようやく日常生活に向けての第一歩が始まった。「今日はね、リハビリ室の端から端まで歩けたんだよ」 嬉しそうに報告するわたし。「ふーん」 なんだか気のなさそうな返事をするより姉。「あれ? なんか怒ってる? わたしのリハビリが進んでるのが嬉しくない?」「いや、そんなわけないんだけどな。ゆきがどんどん元気になっていってるのはそりゃ嬉しいさ。でもな」 なんだろう。リハビリとは関係なさそうだし、他に何か怒らせるようなことしたっけ?「ゆき、何か報告しておかないといけないことを忘れてないか?」 報告? ずっと病院にいるわたしがリハビリのこと以外で何を報告することがあると言うんだろう?「何のこと?」 本当にわからない。わたしがより姉を怒らせるようなことなんて皆目見当もつかないよ。「茜とのことだ」「ひうっ!」 突然あの日のことを突きつけられて、ビックリすると同時に思い出してしまったので変な声が出た。「なんだその奇声は。茜が自慢気に話してたのは本当だったのか……。てっきりあいつの作り話だと思ってたのに」 カマかけられた! でも本当のことだから嘘をつくのもなぁ。「それで、だ。ゆき」 改めてわたしの方へと向き直るより姉。対して被告人よろしく姿勢を正すわたし。「正妻の立場としてはだな。茜がしてもらった以上は同じことをしてもらう権利があると思うんだが」 いや、あれはわたしの方からやったわけじゃな
「門外不出のゆきの写真だぞ! 1枚100円な!」 本当に売りつけやがった。なんて姉だ。「わたし買います」「買う」「わたしもー!」 こらこら、口車に乗らないの。かの姉はその1万円札をしまいなさい。「そんなの買わなくていいよ。データはこのDVDに焼いてもらったから」「あ! てめーゆき! 商売の邪魔すんな!」 身内相手に商売すんな。「社会人が学生からお金を巻き上げるのは黙って見てられません。そんなにピーマン食べたいの?」「ごめんなさい、そろそろ許してください」 たった1日で音を上げるなんて、どれだけ嫌いなんだか。「くっそー。せっかく小銭稼ぎができると思ったのに」 かの姉が
「はい、こっち向いて笑って~」 指示されるとおりにポーズを取ると、そのたびにフラッシュがたかれていく。 最初は渋々引き受けたモデルだったけど、撮影が進むうちにだんだん変わってきた。 なにこれめっちゃ楽しい!「その表情いいわね! もう少しだけ右を向いてくれるかしら」 レイさんの言葉に嬉々として従ってしまう。カメラマンってすごいな。 被写体の魅力を引き出す能力に長けているんだろう。声をかけられ、従っているうちにどんどん気分が高揚してくる。 もともとカメラの前に立つのは慣れているし、決して嫌
ひよりとの初配信は大成功で、再生数も今までの神回に負けないくらいの勢いで増えていった。 すっかりダンスの楽しさに目覚めてしまったひよりは、次の配信に向けて昨日とは別の楽曲のダンスを練習し始めた。 そして配信が終わった翌日の日曜日。 まだみんなが寝ている早朝からわたしはスタジオでひとり、ダンスの収録に励んでいた。 昨日、ひよりがわたしのアバターを使っていたのを見て思いついたこと。それを早速試してみているのだ。 まずは普通にダンスを踊りながら、優れた空間認識能力と記憶力を使って自分の動きを頭に叩き込む。
いつまでも潮風に当たっていたせいで髪がベタベタになってしまった。 お風呂に入りたくて民宿に戻ると、残された3人はご立腹。「2人きりでデートですかー。いいですねー」 かの姉思いっきり拗ねちゃってるし。「いや、デートじゃなくて散歩してたらたまたま会ったから、少しお話してただけだよ」 嘘は言ってない。別に待ち合わせとかしてないし。 というかあんな暗い中、よくわたしを見つけることができたよね。「ゆきちゃんがいなくなったと思ったら一緒により姉もいないし。ひよりはとっても寂しかったんだよ