一度裏切ったら、もう終わり無事に出産を終えた、その直後のことだ。
夫・西園寺翔太(さいおんじ しょうた)と、私・高嶺美月(たかみね みつき)が学費を支援している女子学生・春日莉乃(かすが りの)が、私の病室の外で抱き合い、キスをしていた。
赤ん坊の火がついたような泣き声が響き、二人は弾かれたように体を離した。
慌てて病室に飛び込んできた翔太。その首筋には、くっきりと生々しいキスマークが残っている。
私はそれを見ても、あえて何も言わなかった。
遅れて顔を見せた女子学生の唇は、赤く腫れている。彼女は私に向け、挑発的な笑みを浮かべてみせた。
後日。
私は彼女のSNSの投稿を目にした。
動画の中で、彼女は笑顔で我が子をあやしながら、自分を「ママ」と呼ばせようとしている。
「ほら〜、ママって呼んでごらん?ママだよ〜」
翔太は苦笑しながら、彼女をたしなめる。
「こら。俺の奥さんは一人だけだぞ。少しは弁えろよ」
すると彼女は甘えた声を出し、彼に抱きつくと、そのまま唇を重ねた。
私の指先が一瞬、止まる。
……すぐに画面収録ボタンを押した。
これらはすべて、証拠になる。
離婚裁判で、私がより多くのものを勝ち取るための、決定的なカードとして。