温度を失くした日息子の久我湊斗(くが みなと)とかくれんぼをしていたとき、私はベランダに閉じ込められた。氷点下の夜、肌が刺すように冷え、頬は紫色に染まっていく。
それなのに湊斗は、私が必死に助けを求める姿を見て笑い、ガラス越しに変な顔をしてみせた。
私は凍えるような寒さに負けて、みじめに息を引き取った。
最後に見たのは、湊斗が嬉しそうにスマホを手に取り、夫の久我彰人(くが あきひと)へビデオ通話をかける姿だった。
「パパ、ママが凍え死んじゃったよ。これで江口(えぐち)先生をお家に呼べるね?」
次に目を開けたとき――私は、湊斗が「かくれんぼしよう」と笑っていた、あの日に戻っていた。