君のいない世界で、橙は鮮やかに色づく十八歳の誕生日。
転校生の不良少女・上村清良(うえむら きよら)が全校生徒の面前で、伊東礼司(いとう れいじ)に愛を叫んだ。
礼司は眉一つ動かさず、突きつけられたラブレターを冷淡に引き裂く。
「汚ねえな。興味ない」
その言葉に逆上した女は、衆人環視の中で私・坂口橙子(さかぐち とうこ)の胸ぐらを掴み上げた。
「あんたの好きなこの口の利けない女なら綺麗だって?だったら、いっそもっと汚してやろうか!」
「死にたきゃ、やってみろ」
その日の午後、清良は学校から警告処分を受け、炎天下の掲揚台の下で一日中立たされる羽目になった。
それ以来、彼女と礼司は犬猿の仲となった。
彼女は私をいじめて礼司を挑発し、礼司はその倍返しで報復する。
やられたらやり返す。端から見れば賑やかなものだ。
あの日。路地裏で彼女たちが私を囲み、服を引き裂いて動画や写真を撮り始めるまでは。
駆けつけた礼司は、血走った目で狂ったように彼女を男子トイレへと引きずり込んだ……