偽のディンクス、偽の愛夫は全身麻酔の手術を終えたばかりで、意識はまだ混濁しており、口をついて出るのは支離滅裂なうわ言ばかりだった。
私、林未央(はやし みお)は彼が麻酔で朦朧としている滑稽な様子を笑いながら動画に収め、ベッドに横たえるのを手伝っていた。その時、彼がはっきりと「息子」を呼ぶのを聞いた。
「いい子だ、騒がないでくれ。パパは今忙しいんだ」
私の笑顔は一瞬で凍りつき、その場に立ち尽くした。
彼と私は結婚して十年、子供を作らない「ディンクス」を貫いてきたはずだ。どこに息子がいるというのか?
私は震える手で彼のスマホを開いた。結婚してこれほど長い年月が経つが、彼の携帯を見るのはこれが初めてだった。
開いてみると、隠しフォルダの中は、別の女と子供の親密なショットで埋め尽くされていた。
そこに写っていたのは、目元が彼と瓜二つの小さな男の子。写真の日付によれば、その子はすでに三歳になっていた。
三人が浮かべる幸せそうな笑顔が、私の心を無慈悲に突き刺した。
当初、子供は大嫌いだ、家庭に縛られたくないと強く主張し、私を説得してディンクスの道を選んだのは彼だった。
結局のところ、彼は子供を持ちたくなかったわけではない。ただ私との間に子供を作りたくなかっただけなのだ。