希望を胸に、過去にはもう戻らない久我祐真(くが ゆうま)を本物のお嬢様に奪われたあの日、私は自分が妊娠していることに気づいた。
八か月のあいだ、彼は宝生瑠奈(ほうしょう るな)のために盛大な結婚式を準備し、私は難産の末に大量出血しながら和希(かずき)を産んだ。
その後、ニュース速報が流れた――
【久我家の御曹司・祐真が深夜に危険運転。宝生瑠奈は重傷、そして彼自身は生涯にわたって生殖機能を失った!】
私は彼に和希を奪われるのが怖くて、びくびくしながら五年間身を隠していた。
そして祐真の母の還暦の祝いの日、私は臨時でウェイターとして駆り出されることになってしまった。休憩室にいた和希がうっかり外へ飛び出してしまい、そのまま正面から祐真の母にぶつかった。
会場は一瞬にして、しんと静まり返った。
その顔は、まるで幼いころの祐真をそのまま写し取ったようだった!
祐真は人混みをかき分けて駆け寄り、かすれた声で叫ぶ。
「坊や、君は誰の子なんだ?」
和希は驚いてしまい、今にも泣き出しそうな声で訴えた。
「ママ……ママが見つからないの」
「ママの名前は神崎凛花(かんざき りんか)だよ」