身代わりの花嫁神谷晴美(かみや はるみ)と藤原時男(ふじわら ときお)が結婚して三年目、彼女のもとに一つの朗報が届いた。
ようやく、時男の元を離れられるのだ。
「あと一か月で悦子が戻ってくる。それまで、ちゃんと彼女のふりを続けなさい」
電話の向こうで、母・神谷里美(かみや さとみ)の声は、いつもと変わらぬ冷たい。
「すべてが終わったら、六億円を渡す。それからは、好きにしなさい」
「分かった」
彼女は小さく答えた。その声に、一切の感情の揺らぎがなかった。
電話を切ると、晴美は壁に掛かった大きなウエディングフォトを見上げた……