九十九回の裏切りのその後私――日高瑠奈(ひだか るな)は、九十九回目の入籍直前になって、恋人の鳴海誠司(なるみ せいじ)にとうとう本音を突きつけられた。
「俺、まだ若いしさ。もう少し遊びたいんだよ。
顔も地味だしさ、正直あんまり色気もないだろ。愛人ならともかく、妻にするにはちょっとな」
さすがに見ていられなくなった友人が、口を挟んだ。
「瑠奈はお前とここまで一緒にやってきただろ。一番大事な時期まで全部お前に捧げてきたんだぞ。瑠奈の母親も体が悪くて、ずっとお前たちの結婚を楽しみにしてたんだぞ。約束しただろ」
誠司は秘書の本間真琴(ほんま まこと)の腰を抱いたまま、うんざりした顔をした。
「同じ料理でも十年も食ってたら、そりゃ飽きるだろ。
別に俺は引き止めてないだろ。嫌なら金だけ持って出ていけばいいんだよ」
胸の奥が、すっと冷めた。
私は涙を拭き、中絶の予約を入れると、そのまま家の決めた縁談を受け入れた。
結婚指輪を選びに行った先で、誠司と鉢合わせした。
結婚なんてしない主義だと言っていたその男は、愛人の前に跪いてプロポーズしていた。
「真琴がさ、どうしても結婚指輪ほしいってうるさくてさ。
まあ、形だけだよ。気にすんなって。明日こそお前と入籍してやるよ。今度は本当だって」
その軽い口ぶりを聞きながら、私は婚約者にもらった大粒のピンクダイヤを掲げて、ふっと笑った。
「三日後に結婚します。ぜひその愛人と一緒に、私の結婚式を見届けに来てください」