放課後のメリーさんが、リョウメンスクナを連れてきた

放課後のメリーさんが、リョウメンスクナを連れてきた

last updateLast Updated : 2025-04-09
By:  水鏡月聖Ongoing
Language: Japanese
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旧校舎の部室で一人読書にふける文芸部員、高野聖(たかのまこと) 軽音楽部の歌姫、伏見ななせ(ふしみななせ)とその部員 学園七不思議の秘密を追うオカルト研究部の上田麻里(かみだまり) それぞれの思いが絡まる学園ラブコメミステリ

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1DAY 火曜日 不倫の噂
――読書の秋だ。 読書をするうえでこれほどに恵まれた環境があるだろうか。 僕らの通う私立高校は山の斜面の中腹にあり、その斜面に沿って校舎が建てられている。 校門をくぐって一番手前にあるのが最も新しい新校舎。 そこからまっすぐに伸びる階段に沿ってひとつずつ古くなっていく校舎。 斜面の一番奥にあるのがこの旧校舎だ。 二階建ての木造建築で各階に教室は二つだけ。さらにその上にちょこんと乗っかる形の三階部分は時計塔の機械室になっている。時計の針はすでに動きを止め、時間は全く持ってでたらめな方向を差している。 かつてはこの学校の校舎はこの木造校舎だけだったらしいのだが、時代が進み、生徒が増えるにつれその下に校舎を一棟ずつ増やしていったという。 今となってはこの古い旧校舎はほとんど使われていない。 故にほとんど廃部寸前の部活動の部室としてのみ使われている。しかもこの旧校舎、少し前には幽霊が出るだとかそんなうわさも流れ、無関係の生徒は好き好んで足を運ぶようなことはしない。この上なく静かな場所であり、僕の所属する文芸部の部室はこの旧校舎の一階にある。これほどに読書に適した場所があるだろうか、しかも、今日用意した本は格別だ。岩井志麻子の『ぼっけえきょうてえ』 第5回角川ホラー小説賞を受賞した作品で、『ぼっけえきょうてえ』とは岡山弁で「とてもこわい」という意味だ。 過去に幽霊騒動があっというこの旧校舎は当然建物も古く、ホラー小説を読むにこの上ない雰囲気がある。むしろ雰囲気がありすぎるほどだ。しかし何もそこまで怖がる必要はない。あいにく僕は怪異譚だとか、都市伝説だとか真に受けるようなロマンチストじゃない。かといって、それをあえて馬鹿にするほど許容の狭い人間でもなく、エンターテイメントとしてのそれを楽しむことのできる懐の大きい人間だ。間もなく作中に没入し、秋の冷たい風がカタカタと古い窓をたたいて揺らす音さえも耳に入らなくなった頃合い……「マッコトー!」元気があり余り過ぎてこちらの迷惑さえも顧みない勢いで教室のドアを開き、読書にいそしむ僕の向かいに無遠慮に椅子を引いて座る伏見ななせという美少女。机に両肘をついて合わせたこぶしの上に顎を乗せる。じっとこちらを見つめるように話しかけてくる。「ねっ、ねっ、マコト。聞いた? 早乙女花蓮のハナシ!」 手に持ってい
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1DAY 火曜日 旧校舎、全員集合
伏見ななせは明るく社交的で顔だちも整っている。いわば学校中のアイドル的存在で、多少背が低いだとか胸が小さいなんて些細なことを気に病むようなレベルではない。 むしろ僕のような冴えない男子学生に普通に接してくれるというだけで感謝に有り余るくらいだ。そんな伏見ななせは、当然文芸部の部員ではなく、軽音楽部の部員である。彼女がここを訪れるには理由がある。 この文芸部の部室にある唯一の電化製品、湯沸かしポットの存在だ。女子というものは冷え性が多く、ななせも例外ではない。すっかり寒くなったこんな季節には温かい飲み物がほしくなるのは当然で、ここならばそれがお金をかけることなく手に入れることができるからだ。 彼女はこの部室に自分のマグカップを持ち込んでおり、僕の用意しているインスタントコーヒーを遠慮なく使って暖かいコーヒーを淹れる。さらにそこにチューブのコンデンスミルクをたっぷりと注ぎ込み、甘くてマイルドなコーヒーをいただくのだ。 そして、この旧校舎でアイドル的存在の伏見ななせがいるところがすべての中心であり、多くのお呼びでないものまで引き寄せてしまう。 「失礼します」「ちーっす」「こんにちはー」「あの、どうも」  それぞれに挨拶をしながら文芸部の部室に侵入してくる軽音楽部のメンバー。  まず、ドラムの井上。背が高く、たれ目でやさしい印象の彼ではあるが、事実とても気の良い繊細な人物だ。その表情はどこか老犬のようではある。僕はひそかに彼のことを『犬』と呼んでいる。  次に、ベースの河本。顔が少し大きめでえらのはっった顔立ち。ストレスがあるのか、あるいはそういう髪型をあえてしているのかはわからないけれど、頭頂部の髪が少し薄いように思える。てっぺんだけの短く刈っているのかもしれないがそんなことをいちいち聞くのも失礼かと思い聞いていないため真相はわからない。僕はひそかに彼のことを『河童』と呼んでいる。  キーボードの花村。小柄で中世的な顔立ちだ。顔だちも整っていて、黙っていればショートヘアの美少女に見えなくもない。秘密のあだ名は『花子』。  ギターの天野。純然たる男ではあるが、サラサラの黒髪セミロングヘア―。ジョンレノンでも意識しているのか丸いレンズの眼鏡がトレードマークだ。少々ナルシスト気味なところがある。よく見かける妖怪『アマビエ』のイラストにちょっと似ているため
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1DAY 火曜日 ロシアンルーレット
僕たちは、ななせが六つのカップへドリンクを入れる間、背中を向けて待っておくことにした。互いに後ろを振り返らないように監視しあっているが、そんなことにあまり意味はないだろう。  むしろ、僕が懸念するのは、この話を持ち出してきた上田が、どんな不正を用意してきているかということが気になっている。  激マズだと知りながら、何もわざわざ自分がそのリスクを負う意味が解らない。おそらく上田自身、何らかの不正を準備していて、うまく自分が勝つように仕掛けているはずだ。そしてそのうえで、スケベ心を出した僕たちがそろいもそろって激マズドリンクを飲む様を見て喜ぼうという魂胆なのだろう。  要するにこのゲームは、そんな上田のトリックを見破り、うまく出し抜けるかどうかという点にかかっているわけだ。 「できたよ。こっち向いてもOK!」  ななせの言葉に振り返る。目の前にあるコップは六つ。量はどれも同じように見える。自分は視力に自信があるほうではあったが、六つ全部が全く同じ色に見える。匂いも、少し離れている現状では特に目立つものもなく、やはり飲んでみないとわからないといったところだろうか。 「それじゃあ、公平を期すためにこうしましょう。皆が背中を向けている間、ひとりずつカップルをシャッフルしていくということにしましょうよ。それじゃあまずわたしから、みんな向こうを向いていてくださいね。あ、伏見さんもです。伏見さんが答えを知っていて、誰かにアイコンタクトで教える可能性だってありますから」  僕たちは上田以外全員背中を向ける。  やはり間違いないなと感じた。最初にシャッフルをすると言い出したのが上田で、つまりはこの時に何らかの細工をしているとみて間違いないだろう。 「いいですよ。終わりました」  僕たちはまた向き合い、その後全員が順番にシャッフルをして終わった。 「さあ、それじゃあ皆さん。それぞれ好きなカップを手に取ってください。  上田のその言葉を聞き、僕はいったん待ったをかける。 「いちど、ゆっくり見せてもらっていいかな?」 「もちろん、かまわないけれど?」 「それじゃあ」  僕は、並べられた六つのカップをじっくりと見つめる。 「いくら見たところで見分けは付かないですよ。わたし、ちゃんと色目にも区別のつかないお茶を用意したんですから」 「そうはいってもね、紙コ
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1DAY 火曜日 学園七不思議
「いいですか? それじゃあ、みんなせーのっで行きますよ」「「「「「せーのっ」」」」」 そのあまりの苦さに、軽音楽部の四人が悶絶している。 そして、案の定。上田はカップのドリンクを飲みほしてなおケロリとした様子だ。「あれ、高野君。飲まないんですか?」「必要ないだろ? 答えはもう出てる」「ずるい人ですね」「なんとでも言え。負けとわかっているなら、何もその上で苦い思いまでする必要はないだろ」 僕は、口をつけるふりをして一滴も飲まなかったカップをテーブルの上に置く。「そういうことで、わたしの勝ちですね。伏見さんのハグは、わたしがいただいちゃいます」 皆が見守る中で、上田とななせが抱きしめあう。しかも、少しまとわりつくように濃厚だ。 ななせがほかの男の毒牙にかからなかったというのならばそれはそれで納得。 それに……この光景、それはそれで悪くない。 上田とななせの間に挟まれたい。なんて感想を持ったのは何も僕だけではなかったはずだ。  ほんのひと時の談話を終え、それぞれが部室へと帰っていく。 準備に少し手間取ったななせが最後に、「じゃあアタシも、そろそろ行かなくっちゃ。じゃあ、またあとでね!」 それだけ言い残すと、教室を後にして廊下を走り、ギイギイと軋む旧校舎の階段を一段飛ばしで駆け上がる。 とても静かなこの旧校舎では、そんな足音までもがどこにいてもよく聞こえる。特に、ななせのように少しおてんばで元気に動き回るならばなおさらだ。  さて、ななせが去り、再び文芸部の部室に静寂が訪れる。 無駄かとも思いながらも文庫を再び手に取り読書を再開する。「よし、それじゃあそろそろはじめよっか」 天井の裏側から、かすかにななせの声が聞こえる。 ガタガタと、古い建物のガラス戸が振動する。やはり、どうしてもこの音だけは許容できない。遠くで聞こえる吹奏楽部のトランペットが音をはずしても、走り込みをする陸上部の「ファイト」の掛け声もそれほど気になりはしないのだが、やはりどうしても天井の裏側で毎日執り行われるななせたち軽音楽部の練習の音だけは許容できない。 果たしてこれほどまでに、読書に向いていない環境があるだろうか。 仕方なく文庫を閉じて鞄にしまい、スマホを開いてダラダラと過ごす。 こんな放課後は本意ではないけれど、そのあとにななせと寄り道をすることを考えるなら先に帰るというわけにもいかない。 特に
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1DAY 火曜日 稲荷の祠
 旧校舎には幽霊が住んでいる。開かずの扉となっている三階の時計塔からは時折物音や、ピアノの音が聞こえてくる。 旧校舎の裏には小さな稲荷の祠があり、そこに油揚げを供えると願い事をかなえてくれる。 この学校のある山は昔、神の巫女の住む山として祀られており、そこに建てられたこの学校自体が呪われている。 この学校のある山には神田池という沼があり、そこには河童が住んでいると言われている。 この学校がある山には、人面犬が住んでいる。 以上だ。 僕は、それらを指でなぞりながら数えていく。「五個しかないよね」「今のところ見つかったのが五個です」「じゃあ、なんで七不思議って言っちゃったの?」「そのうちあと二つくらいは見つかりますよ」「三つ、四つ見つかることもあるよね?」「数の問題じゃないんです。七不思議っていうのは」「は?」「何でしたら後からいらないのを削ればいいだけですから」「まあ、今の時点であまり学校に関係なさそうなものもあるけどね。というかほとんどこの学校とは関係ない、この学校のある山に関するうわさ話だ」「ともかく、今わかっているこれらを調べていこうと思うんです」 とはいえ、直接学校に関するうわさとしてあるふたつはいずれもこの旧校舎に関するものだ。調べるには簡単な問題ではあるけれど……「まず、この一つ目に関してはすでに解決した問題だな。この旧校舎に幽霊は住んでいない。三階の開かずの間にはちゃんと鍵が存在していて、時々人が出入りしている。そこにピアノが置いてあるし、不思議なことは何もない。 それは、この旧校舎の部室を使っている人たちならみんな知っているはずだ」「競技かるた部を除いてですが」「まあ、それは……」 この旧校舎一階の文芸部ともう一つある教室は、本来競技かるた部の部室だ。しかし以前幽霊騒動があった時に怖がって誰も活動をしなくなり、今はほとんど空き教室になっている。 旧校舎三階の鍵は、数年前に無くなったとされていた。が、それはひょんなところから出てきたのだ。なんと、この文芸部の本棚に差された誰も読まないであろう辞書をくり抜き、その中に鍵を隠してあったのだ。鍵は、職員室へと返却したのだが、僕は当然のようにこっそりとスペアキーを作っている。その鍵は僕が管理をしていて、そのことはこの旧校舎を使う部員たちにとっては既知の事実だが、おそらくそのことをこの学校のほとんどの
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1DAY 火曜日 ロシアンルーレットの真相
 今日の調査はこれにて終了。実に、あっという間の出来事だった。 僕たちは文芸部の部室に戻り、我が部室唯一の電化製品の湯沸かしポットに電源を入れる。体が冷えたので温かいコーヒーで休息だ。自前で用意しているマグカップと来客用の紙コップにインスタントのコーヒーの粉を入れ、沸かしたお湯を注ぐ。「上田、砂糖とミルクは?」「いらないです、そのままで大丈夫」 マグカップと紙コップの両方に入ったブラックコーヒーを机に運び、オセロの盤を用意する。 二階で鳴り響く騒音は依然鳴りやむことを知らず、僕と同じく退屈そうにしている上田に相手をしてもらう。 当然のように黒を選んだ上田が必死で盤面を黒く染めようとするが、やはり最終的には白のほうが多くなる。 申し訳ないが、オセロではあまり負ける気がしないのだ。「オセロでなら、上田の考えていることが読めるんだけどなあ」と愚痴をこぼす。「そうですね。ほかのことに関しては、高野君は全然わたしの考えを理解してくれません」「理解も何も……さっきのアレ、どうやったんだ?」「あれ、と言いますと?」 僕は部室の隅の、まだ片付けていない紙コップの群を指さす。「何を言っているんですか? わたしは何も小細工なんかしていませんよ」「していないわけないだろう? だって現に上田が勝っているんだ」「勝つも負けるもないです。あれはただ単に、すごく効くという風の予防薬が手に入ったから皆さんにおすそ分けしたにすぎません。風邪が流行っているようですから、やさしいわたしからのほんの心づてです。でも、とにかくあの薬、めちゃくちゃ苦いのでちょっとしたレクリエーションを織り交ぜたというだけですよ」「なるほど、小細工はしていなかった……そういうことか」「そうです、わたしは何も小細工していませんでした」「我慢していた、ということか」「そうです。わたしはあの薬、普段から飲んでいるのでそれなりに慣れてしまっているんですよ」 つまり、あれは初めから六つすべてが激マズドリンクという名の風邪の予防薬だったのだ。普段から飲んでいる上田は顔色一つ変えずに、自分が当たりを引いたフリができるということだ。「ああ、そうだ。とにかくあの風邪の予防薬、効果抜群なので高野さんも飲んでおいてくださいね」「そこまで苦いとわかっていて、飲む気にはなれないな」「おこちゃまですか?」「子供とかじゃなく、苦すぎるのは誰だっていやだろ
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1DAY 火曜日 39アイス
39アイスクリームの店舗は、学校の最寄り駅に向かう道から少し迂回した場所にある昭和を感じさせるような古い商店街を抜けたその先だ。 道すがらにななせが質問をぶつけてくる。「ねえ、マコトは今日。クロ研の上田さんとずっと一緒にいたんだよね」「いや、別に一緒にいたわけじゃないけど……」「さっき部室に行ったとき、マコトのマグカップともうひとつ、紙コップが置いてあったし、オセロのセットの位置が変わってた」「名探偵、ななせ」「もしかしてマコトのことが好きなのかも?」「ははは、それはないな。単に人手がほしかっただけだろう。クロ研は部員が上田一人しかいないみたいだしな。学園七不思議を調べているとか言っていた」 僕は聞かれてもいないのに今日あった出来事をすっかり話してしまった。とはいえ、旧校舎裏の祠に油揚げを供えたことと、オセロをしたことぐらいだ。ほかには何もしていない。「ああ、それで――」とななせは言った。「今日の昼休みにさ、麻里ちゃんが学食に来て、アタシが接客したんだけどね、今日はきつねうどんを頼んだのよ」 伏見ななせは調理科の生徒だ。調理科の生徒は他の科の生徒が昼休みの時間に、授業の一環として学食の調理、運営を行っている。 「うん、なんとなくそんな話は聞いたな」「そう、それでさ、麻里ちゃんは今日、『一生に一度のお願いだから揚げを二枚乗せてくれ』っていうのよ。『お揚げの乗っていないきつねうどんはもはやたぬきうどんだ』ってさ。意味わかんないなって思ったんだけど、そういうことだったのね。一枚でも載っていればちゃんときつねうどんなのにって思ってたんだけど」「いや、そういうことだったじゃないだろ。つか、そこをななせがツッコむのもどうかと思う」「うん? まあ、仕方ないから二枚載せたわけだけどさ、先輩に見つかっちゃったらアタシもヤバいんだけど」「いや、もうどこをツッコんででいいのか……とりあえず、上田にはちゃんとななせに迷惑かけないように言っておくから……」「うん、そうしてくれると助かる」 言っているうちに、39アイスの前に到着した。今日の放課後あんな話をしなければ気づきもしなかったのだけれど、ここの39アイスの隣はソバ屋で、その隣は古本屋だった。やっぱりソバ屋の主人が怪しいなと……いや、その話はもういい。店内に入り、ショーケースに並べられた39種類のアイスを吟味するななせ。僕としてはか
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1DAY 火曜日 その正解とリベンジクイズ
「まず、下の段のライトグリーンのアイスだけど、色的にはシャインマスカットかホワイトチョコミントのどちらかということになるだろう。 ところで上田は今日、部室で僕の淹れたコーヒーに砂糖やミルクはいらないと言ったよね? だから多分それほど甘党ではないと思うんだ。甘党じゃない人は結構ミント味が好きなものなんだよ。僕がそうだからね。つまりは下の段はホワイトチョコミントだ。 そして問題の上の段。まず、それほど甘党でないならバナナ&ストロベリーは違うと思う。あれは結構甘さが強いからね。後はピーチブラマンジェ、ストロベリーリボン、ラズベリーチーズケーキ。 うーん、むつかしいところだけど……ところでさ、上田は家、この辺りなのか?」「ええ、そうですよ。実はすぐこの先なんです。ここの前は毎日通っているから、今日からスノーマンキャンペーンが始まるとわかっていたのでとても楽しみにしていたんですよ」「うん、ありがとう。おかげで答えがわかったよ。ラズベリーチーズケーキにはNEWのマークがついている。つまりこれは新作なわけで、さっきの話だと上田は毎日この前を通っているんだよね。それで今日からスノーマンキャンペーンが始まると知っていた。 だとすれば、おそらく昨日やおとといなんかにはわざわざ来ないだろうと思うんだよね。どうせ来るなら、キャンペーンが始まってからの今日になってからくるのが普通。だから新作のラズベリーチーズケーキは今まで一度も食べていない確率が高い。 にもかかわらず、さっき上田はななせのラズベリーチーズケーキに対して『それおいしいですよね』と言ったんだ。つまり、既に新作の味を知っていたというわけだ、それはつまり、食べたことがあり、味を知っているという意味。 君が食べているアイスは、ずばりホワイトチョコミントとラズベリーチーズケーキだ!」「……………………ざんねん!」「え、嘘だろ? もしかして、シャインマスカットだった?」「違うわよ。そっちはホワイトチョコミントで正解」 そう口にしたのはななせだ。しばらくショーケースを眺めていた彼女が返ってくるなり僕を諫めた。「正解は、ホワイトチョコミントとストロベリーリボンよ」「いや、まさか」「そのまさか。伏見さんが正解よ」「だってさっき上田はラズベリーチーズケーキの味を知っているふうな言葉を……」「それは、その前に食べたからよ。上田さんは、アタシたちが
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1DAY 火曜日 リベンジクイズの正解
「なんというか、色味の少ないさみしいアイスですね」「シンプルで美しいと言ってくれ」「まあ、どっちでもいいですけれど……いいんですよね? 本当に当てちゃいますよ」「ああ、当たるものならな。実はこういうシンプルなものほど情報が少なすぎてわからないものだ」「いや、そうでもないですよ。まず、上の段のライトグリーンのアイス。選択肢としてはシャインマスカットかホワイトチョコミントかというところですけど、さっきも高野君が言っていた通り、わたしと同じコーヒーをブラックで飲んでいた高野君ならやっぱりホワイトチョコミントですよね。ブラックコーヒーが好きな人はミント味が好きな人も多い、これは僕と同じだ。みたいなこと言っていましたよね。 問題はこっちのほうです。このシンプルで黒いアイスに該当しそうな候補は三つ。ショコラショコラか、チョコレートモンブランか、ビターコーヒーです。 でも、こっちも考えるほどでもないですよね。ショコラショコラもチョコレートモンブランも39アイスの中ではトップクラスの激甘フレーバーです。甘いものが苦手な高野君が選ぶはずがないです。 答えはホワイトチョコミントと、ビターコーヒーです」「ファイナルアンサー?」「それ、言わなきゃダメですか? はっきり言って寒いのでスルーしたいんですけど」「寒いのは上田がアイスを四玉も食べているからだよ」「ああ、それも寒いですね。そんなことはいいからさっさと負けを認めてください」「そうか……じゃあ、端的に答えを言おう。両方間違いだ。答えは上のがシャインマスカットで、下のがチョコレートモンブランだ」「う、嘘です。本当は当たっているのに悔しいから嘘を言ってるんでしょ」「いや、嘘じゃないぞ。何なら一口食べてみるがいい」 上田はそれぞれを一口ずつスプーンですくって口に運ぶ。「う、うう。まさか、高野君が本当にこんな甘々なチョイスをするとは、考えていませんでした……」「僕の勝ちだね。いやまあ、確かに上田の考察は悪くなかったとは思うよ。だけど、上田は大きな勘違いをしている」「勘違い?」 僕は、手に持ったアイスをななせのほうに差し出す。ななせはそれを僕の手から取り、代わりに持っていた自分のアイスを僕に渡す。ななせは美味しそうに、シャインマスカットのアイスをスプーンですくって口へと運ぶ。「上田さんはさ、まるでななせが僕を普通にアイスクリームデートにでも誘っ
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