ピンク狂いの夫に、最高の「破滅」を三十歳を過ぎ、これまで真面目一筋だった夫が突如としてピンク色に狂い始めた。十数年も変わらなかったダークトーンの家具はピンクに塗り替えられ、食器までピンク色に染まった。
ベランダに翻るピンク色のパジャマ、ピンク色の蝶ネクタイ、そしてピンク色のブリーフを見上げ、私は奇妙な違和感を覚えた。
「ピンクなんて女の子っぽい色で、大嫌いだって言ってなかった?」
夫の加藤達也(かとう たつや)は私に背を向けたまま、届いたばかりのピンク色のシーツをいそいそと広げていた。
「ああ、剛志(つよし)と賭けをしたんだよ。『家中の物を全部ピンクに変えられたら、海辺の別荘をタダでやる』ってな。
それに、見慣れれば案外悪くないだろう?」
私は肯定も否定もせず、剛志に電話をかけた。受話器の向こうで、彼は即座にこう答えた。
「海辺の別荘?俺、そんなもん買った覚えねえぞ?」