彼女の心は語らない芹沢家の宿敵が銃を撃ち、芹沢蒼之(せりざわ そうし)の命を奪おうとしたとき、私は身を挺して彼を守った。
私の心臓は銃弾に貫かれ、海外で人工心臓に取り換えられた。それ以来、心臓の鼓動はバッテリーに支えられている。
この恩のため、蒼之は私と結婚したのだ。
周囲の友人たちは、私の望みが叶ったことを祝福してくれた。幼馴染の恋がついに実を結んだのだからだ。
しかしその後、私が手術台の上で胸を開かれたとき、蒼之は他の誰かと月明かりの下で抱き合っていた。
私は何の反応も示さず、ただ静かに心を休めていた。
蒼之は私の無関心さに腹を立て、肩を掴んで詰め寄る。
「神保然子(じんぼ のりこ)!なぜ怒らないんだ?」
彼にはわからない。私が怒らないのは、心臓がもうほとんど動けなくなっているからだ。
彼が愛を追い求める毎日は、私の命のカウントダウンになっている。