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夫の心は後輩へ、私は娘と家出

夫の心は後輩へ、私は娘と家出

By:  ボーボーネコCompleted
Language: Japanese
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沖井悟史(おきい さとし)と結婚してから、彼は外でのあらゆる女遊びをきっぱり断ち、心を私だけに向けてくれた。 誰もが、私が夫を上手に操り、円満な家庭を築いていると羨ましがった。 ――あの日、結婚十周年の記念日までは。 私は何気なく悟史と彼の友人たちのグループチャットを見てしまった。 【悟史さん、昨日は後輩ちゃんとベントレーの車での体験、良かっただろう?】 【俺はもう彼女とどんなシチュエーションでも試した。あいつ、俺のこと好きすぎて、抜け出せないんだ】 その下には、悟史と「後輩ちゃん」が仲良く寄り添っている写真がある。 そしてグループは、【末永くお幸せに】と祝福しながら盛り上がっている。 私は画面を見つめると、胸の奥に無数の細かい針が刺さるような痛みが走った。 これまでの悟史との幸せな時間は、すべて私を騙すために綿密に仕組まれた芝居だったのだ。 私は一晩中、一人で座り続けている。 そしてついに、悟史が遅れて帰ってきた。 手には記念日のケーキを持っている。 その姿を見て、私は思わず冷ややかに笑った。 「全部知ってるのよ。そんなに演じ続けて、疲れないの?」

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Chapter 1

第1話

沖井悟史(おきい さとし)と結婚してから、彼は外でのあらゆる女遊びをきっぱり断ち、心を私だけに向けてくれた。

誰もが、私が夫を上手に操り、円満な家庭を築いていると羨ましがった。

――あの日、結婚十周年の記念日までは。

私は何気なく悟史と彼の友人たちのグループチャットを見てしまった。

【悟史さん、昨日は後輩ちゃんとベントレーの車での体験、良かっただろう?】

【俺はもう彼女とどんなシチュエーションでも試した。あいつ、俺のこと好きすぎて、抜け出せないんだ】

その下には、悟史と「後輩ちゃん」が仲良く寄り添っている写真がある。

そしてグループは、【末永くお幸せに】と祝福しながら盛り上がっている。

私は画面を見つめると、胸の奥に無数の細かい針が刺さるような痛みが走った。

これまでの悟史との幸せな時間は、すべて私を騙すために綿密に仕組まれた芝居だったのだ。

私は一晩中、一人で座り続けている。

そしてついに、悟史が遅れて帰ってきた。

手には記念日のケーキを持っている。

その姿を見て、私は思わず冷ややかに笑った。

「全部知ってるのよ。そんなに演じ続けて、疲れないの?」

……

「何だって?離婚?」

悟史の深い眼差しに、嘲るような光が一瞬よぎった。

「今日わざわざ仕事の合間を縫って記念日に付き合ってやってるんだ。俺を怒らせるな」

そう言いながら、彼はプレゼントの箱から上品な腕時計を取り出し、私の手首にはめようとした。

「記念日のプレゼントだ」

時計の文字盤のデザインは独特で、ベルトは艶やかで上質だ。

だが私は一目で気づいた。

これは悟史が後輩である桂野可奈子(かつらの かなこ)と一緒に高級オークションに参加し、落札した品物だった。

これまで悟史がくれたものは、たとえ道端で適当に摘んだ野花であっても、私は宝物のように大切にし、丁寧にしまっている。

だが今、私はその手をかわした。

「いらないわ。そこに置いといて」

悟史は眉をひそめ、怒りを抑えつつ説明した。

「そんなに機嫌悪いのは、俺が帰るのが遅かったからか?可奈子が飼ってる猫がいなくなって、一人でめちゃくちゃ焦ってたんだ。俺が長い時間探して、やっと見つけたんだ。そのせいで記念日に遅れたんだ」

可奈子は、いわゆる悟史の「後輩ちゃん」。

そして、彼とあらゆるシチュエーションで「体験」を共有した相手。

私は悟史をじっと見つめた。

以前、私たちが飼っていた犬が突然体調を崩した時のことが蘇った。

あの子が嘔吐と下痢を繰り返し、私はどうすればいいのか分からず、ただただ焦るばかりだった。

思わず悟史に電話して助けを求めた時、返ってきたのは――

「犬一匹だろ?自分で動物病院に連れて行け。いちいち何でも俺に頼るな。今、重要な商談中なんだ」

私は涙をこらえ、一人で何軒もの動物病院を回り、何日も点滴に付き添い看病した結果、犬はようやく元気を取り戻した。

それなのに今では、同じペットのことで、悟史は私との記念日を投げ捨ててまで、可奈子の猫を探しに行った。

悟史は目を細めた。「で?今さら昔のこと持ち出すわけ?俺があの時お前の面倒を見なかったのが、そんなに不満か?それとも、金でも足りなかったのか?

結婚を望んだのはお前だし、子どもを産んだのもお前だ。妻の立場も金も与えてるだろう。可奈子は何がある?なぜお前はこんなにひねくれてるんだ?」

彼の言葉が耳に飛び込んできた。頭が追いつかないうちに、胸の奥で心臓がぎゅっと強く締めつけられた。

私は悟史を見つめた。

――彼の言いたいことは分かった。つまり、「妻の立場を与えてやったんだから、愛も気遣いも求めるな」ということだろう。

言ってしまった本人も、まずいと思ったのだろう。悟史の表情に影が差し、声がわずかに柔らかくなった。

「……もういい。夕実を呼んでこい。三人でワイン開けて、記念日らしく楽しく過ごそう」

そう言いながら、慣れた手つきで高級ワインの栓を抜き、グラスに注いで私に差し出した。

いつもなら、悟史と喧嘩したあと、彼がこうして小さな機嫌取りをしてくれれば、私はそのまま折れた。

十年間、私たちの間に存在していた暗黙の了解。

けれどもう、私はその了解に従うつもりはない。差し出されたグラスを、そのまま押し返した。

悟史は、私が受け取ると思ったのだろう。ワインはパシャリと床にこぼれ落ちた。

一瞬、私も動きを止めた。

悟史は低く笑い、瞳に怒りの炎が燃え上がった。

「まだ気が済まないのか、沙織。一晩中お前の機嫌を取ってきたんだぞ。記念日を過ごしたくないなら、もうやめだ」

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