偽りの契約、囚われた青春息子の名門校への入学手続きの最中、受付の職員が突如、私の婚姻証明書は偽物だと言い放った。
「お調べしたところ、保護者様の婚姻状況は『未婚』となっております」
「そんなはずありません!夫のエドウィン・ボルトンと結婚して、もう七年になるんですよ!」
後ろに並んでいた他の保護者たちから、容赦ない嘲笑が浴びせられる。
「ちょっと、今あのエドウィン・ボルトンって言った?妄想も大概にしてよね!」
周囲の嘲笑に晒され、たまらずその場を逃げ出した私は、そのまま市役所へ向かい、改めて婚姻状況を照会してもらった。
七年間、確かに夫婦として過ごしてきたはずなのに。
画面に表示された私の婚姻状態は――「未婚」。
全身の血の気が引く感覚に、私は震える声で尋ねた。
「では、エドウィン・ボルトンの法的な妻は、いったい誰なのですか?」
職員は事務的な口調で、一つの名前を告げた。
「ハンナ・ブラウン様ですね」
またこの名前。またしても――!
家に飛んで帰り、エドウィンを問い詰めようとした、まさにその時だった。玄関の奥から、執事の声が聞こえてきた。
「旦那様、もう七年ですよ。いつになったらソフィア様に、正式な地位をお与えになるおつもりなのですか?」
長い沈黙の後、エドウィンが口を開いた。
「もう少しだ。ハンナは両親を亡くして天涯孤独の身なんだ。彼女を助けられるのは俺しかいない。あの子には、この『妻』という名義が必要なんだ」
「もし奥様に知られてしまったら?」
「ソフィアは俺を愛している。たとえ真実を知ったところで、俺から離れていったりはしないさ。
ハンナがビジネスの世界で確かな足場を固めたら、その時こそソフィアに本物の婚姻証明書を渡すつもりだ」
彼は確信に満ちた声でそう言い切った。
ドアの外で、静かに涙を流しながら立ち尽くしている私の存在など、知る由もなく。
――悪いけれど、その期待、裏切らせてもらうわ。この大嘘つき。
私は静かに携帯を取り出し、ある番号に電話をかけた。
「お母様。先日のフィリップス家とのお話、お受けします」