植物状態の夫が目覚めたら、離婚を求めた植物状態となった夫、金杉亘(かなすぎ わたる)を支えて五年。私は甲斐甲斐しく尽くし、あらゆる苦労を乗り越えてきた。
しかし、彼が目を覚ましたその日に贈ったのは、私の妹への何億円ものジュエリーと、溢れんばかりの愛の告白だ。
――これは何かの間違いだ。そう信じたい。
根気よく説明すれば、この五年間にわたって彼を支え続けてきたのは私なのだと、きっと分かってもらえるはず。
そう思っていたのに、彼の親友との会話を耳にするまでは。
「亘、この五年間お前を支えてきたのは羽純さんだって分かってるんだろ?なぜ彼女を裏切るんだ?少しも情はないのか?」
「もう何年も俺の妻でいたんだ、彼女もそれで満足だろう。俺が愛してるのは、いつだって佳純だ。羽純には申し訳ないと思ってる。もし彼女が本当に傷つくのなら、金杉グループの株を5%譲ってもいい」
扉一枚を隔てた廊下で、私は涙をこぼした。
――彼は最初から知っていたのだ。彼を介護していたのが私であることを。
ただ、私を愛していないだけだ。
それならば、若かりし頃の自分のためにも、最後の一度だけ彼に道を譲ろう。
これからは、お互いに他人となり、二度と会うこともないだろう。