妹に中傷されたあと私がチアリーディング大会で優勝した日、観客席は歓声に包まれていた。
けれどその中で、兄が私に向かってペットボトルを投げつけた――
「お前が一位を取るために、美優(みゆ)の足を試合前にわざと怪我させたって本当か?
彼女、腎不全なんだぞ……死ぬ前の最後の願いが優勝だったのに、お前は自分の野望のために、彼女を傷つけたんだ。
そんな自己中心的な妹なんて、俺にはいない!」
大会スポンサーである私の婚約者が、私の優勝資格を剥奪すると宣言した。
「ドーピングしたお前には、優勝する資格はない!」
その結果、ファンは一斉に私を非難した。ついには、私の写真を遺影のように加工し、自宅に郵送してくる者まで現れた。
私は静かにそれをしまい込んだ。きっともうすぐ本当に使う時が来る。
だって、私は一ヶ月前に悪性脳腫瘍と診断されたばかりなのだから。
だから私は決めた。死ぬ前に、彼らが望む通りの人間でいようと。
妹を思いやり、礼儀正しく、嘘をつかない良い女に。