愛は雲間に隠れる私が胃の病気で倒れそうになっている時、野田安里(のだ あさと)はちょうど自分のアシスタントと一緒に誕生日ケーキのロウソクを吹き消している。
私は痛みで意識が飛びそうなのに、彼は一度もこっちを見ないで、アシスタントの鼻を甘く撫でる。
「結月、またひとつ大人になったね。バースデイ・ガールはちゃんと願い事するんだよ!」
そのあと私は激痛で意識を失って病院に運ばれる。安里に何十回も電話をかけるけど、全部すぐ切られる。
一方で、アシスタントはSNSに投稿して、九枚の写真でも収まりきらないほどのプレゼントを自慢している。
「最高!安里ちゃんって世界一番優しい人!結月はずっと安里ちゃんと一緒にいられるように!」
私は電話で問い詰めるけど、安里は全然悪びれない。
「結月の誕生日なんだから、俺が一緒にいて何が悪いの。嫌なら別れれば?」
これで九十九回目の「別れよう」だ。彼は相変わらず、私が絶対に別れないと思い込んでいる。
でも今回、私は同意する。