『巫山戯る』という言葉の響きからして、どこか神秘的な雰囲気を感じませんか? この言葉は「ふざける」と読み、現代では「軽々しく振る舞う」「冗談を言う」といった意味で使われていますが、そのルーツを辿ると興味深い背景が見えてきます。
語源は中国の故事「巫山の夢」に由来すると言われています。楚の王が巫山の神女と夢の中で逢瀬を交わすという伝説から、現実と幻想の境界が曖昧な状態を指すようになり、転じて「現実離れしたふざけた行為」を表現するようになったようです。平安時代の日本に伝わり、和製漢語として定着する過程で意味が変化していきました。
特に面白いのは、この言葉が持つ両義性ですね。一方では「遊び心」や「創造性」のニュアンスを含みつつ、他方では「不
真面目さ」を非難する意味にも使われます。『源氏物語』のような古典でも、登場人物の軽薄な振る舞いを描写する際に用いられているのを見かけます。言葉の変遷を追うと、人間の営みの本質的な部分に触れられる気がします。