『時をかける少女』のラストシーンは、切ないほど美しい「醒め」の瞬間だ。主人公が時間跳躍の能力を使い切ったことに気付き、未来から来た少年との別れを受け入れる場面は、青春の終わりと大人への一歩を同時に表現している。
この作品のすごさは、超能力ものの枠を超えて、誰もが経験する「気付き」を描いている点だ。特別な能力がなくても、人は皆、
ある日突然子どものままでいられないことに気付く。その喪失感と共に、新たな可能性への希望も感じさせる終わり方が秀逸だ。
細田守監督の繊細な演出が、儚さと温かさが混ざり合う独特の情感を作り出している。