幼なじみと世界を巡った夫は、娘を死なせた私の娘・芽衣(めい)が重病で、至急肝臓の移植が必要だった。夫の水原嘉人(みずはら よしと)は唯一のドナー候補だった。
私は彼に20日間も頼み続け、ようやく肝臓を提供することを承諾してくれた。
手術室の外で一日中待っていたが、彼は現れなかった。
その日、嘉人の幼馴染、秋房美乃梨(あきふさ みのり)は、SNSに彼らの世界旅行の写真をアップしていた。
【世界旅行20日目、すごく幸せ!水原先生は研修を諦めて、私と一緒に娘の夢を叶えてくれている】
その時、私は気づいた。実は、私が嘉人に頼んだ初日から、彼は美乃梨とその娘・天美(あまみ)を旅行に連れて行っていたのだ。
夜、嘉人から電話がかかってきた。
「綾乃、天美が期末試験で満点を取ったんだ。彼女の夢は、両親と一緒に世界を旅行することなんだ。
天美には父がいないって君も知ってるよね……
天美の願いを叶えてあげたくて、あと3日で帰るから。
その後すぐに、芽衣に肝臓を提供するつもりだ」
3日後、嘉人が病院に来たとき、彼のもとに届いたのは芽衣の死亡証明書だけだった。