十年目のお別れ、忘れてしまおう私・姫野真紀(ひめの まき)の誕生日に、彼氏の荒木信吾(あらき しんご)がSNSで「今夜はサプライズを」と予告していた。
ところが当日の午後、目に飛び込んで来たのは、彼と女性のアシスタントが馬に二人乗りしている写真だった。
彼のシャツのボタンが外れ、晒された胸筋には真っ赤な指の痕がある。
【人生初の思い出、彼に感謝】
コメント欄は盛り上がっていた。
【あの胸筋を触れるなんて羨ましい】
【この体勢、なかなか怪しいぞ】
信吾はそのコメントにわざわざいいねまで押した。
私の心は完全に冷めきっていた。
ずっと彼は、そういうことをするのは私だけだと思っていたのに、どうやら誰でもいいらしい。
私は自ら馬を洗い、痕跡を全て消した。
そして馬場を彼に譲ると決めた。
「残りの馬は誰にあげてもいいわよ、好きに選んで」
彼が喜んでいる様子を見ながら、私は家族が決めたお見合い結婚を受けることにした。