映像のカット割りを追っていると、まず気づくのはテンポの取り方が根本的に変わっていることだ。原作の細やかな心情描写や並行して進む小さなエピソードが、アニメ版『
氷雨』では統合され、場面転換の速度が上がっている。これは放送枠や尺の都合上仕方ない面もあるけれど、原作でじっくり膨らんでいた伏線が短縮され、観客が読み取る余地が少なくなっていると感じた。
次に登場人物の扱いが変わっている点がある。原作で控えめに描かれていた脇役にオリジナルの台詞やシーンが与えられ、関係性が再構築されているため主人公の行動理由が外的に説明されがちだ。逆にいくつかの小エピソードは丸ごとカットされ、物語のトーンが少し明るくなっている。
音楽や絵作りも別物で、特定の場面を強調するために劇伴が新しく挿入された。私は原作の微妙な余韻を好むので、端折られた心理描写が惜しく感じられたが、映像表現としては説得力が増した場面も多く、複雑な気持ちで見ていた。