視覚表現の工夫で、
鳥目を観客に納得させることができる。
画面では単に「見えない」と示すだけでは説得力が薄いので、私は複数のレイヤーを重ねて鳥目を演出するのが効果的だと思っている。まずは目そのものの描写──瞳の収縮・拡張、まぶたの重さ、視界のボケ具合などを細かく調整する。ディテールを減らして輪郭だけを残すと、視界が失われた感覚が直感的に伝わる。次に被写界深度や色味で補強する。暗部に沈む情報を意図的に潰し、明滅やゴースト像を挿入すると、暗所での視認性の低下が映像的に納得できる形で伝わる。
編集やカット割りも大きな武器になる。短いフラッシュ、視点の揺らぎ、突然のカットイン/カットアウトを使って情報の断片化を表現することが多い。さらに、描線の曖昧化やオフモデルを使ったブラー表現で、キャラクターの眼前が崩れていく感覚を強める手法も好まれる。効果音では耳鳴りや低周波の重さを足すことで視覚の喪失感を補完するケースもある。
具体例として、私は『新世紀エヴァンゲリオン』の実験的な映像語法が鳥目に使えるヒントをくれると感じた。断片的な重ね撮りやノイズ的処理で、視界の混乱を身体感覚として観客に渡すやり方が参考になる。こうした総合芸術的アプローチがあるからこそ、単なる「見えない」を超えた説得力を得られるのだと考えている。