声の振幅と静寂の使い方にまず注目している。声だけで内面の揺れを伝えるのは簡単に見えて難しい仕事で、'
ユーリ!!! on ICE'の主人公に施された演技は、その難関を幾度も乗り切っていると私は感じる。
高揚する場面では声の張りが程よく、技術的に安定している一方で、落ち込む瞬間の息遣いや途切れには生々しい脆さが滲む。滑らかな発声と、微かな震えを混ぜるバランスが絶妙で、特に独白シーンでは台本の言葉以上の情報を耳に与えてくれる。演出との相性も良く、カット割りやBGMに合わせて呼吸を調整しているのが聴き取れる。
批評者として気になる点を挙げるならば、ときに抑揚が噛み合わず過剰に聞こえる場面があることだ。感情を強く出すあまり、周囲のキャラとのダイナミクスを損なう瞬間がある。だが総じて見ると、感情の細かなニュアンスを声で組み立てる力は高く、視聴者をキャラクターの心理に引き込む説得力がある。長尺のスケートシーンや内省シーンでこそ、その力が最大限に光る演技だと評したい。