映画音楽の視点から探ると、物語性と情緒を強く喚起するスコアが'Werther'の気分によく合う。たとえば、映画'The English Patient'のサウンドトラックは、記憶と喪失、執着のテーマを楽器の色彩で巧みに表現しており、そうした手法は
ウェルテルの悲恋にも転用できる。
僕は映像作品の音楽を頼りにプレイリストを組むことが多いが、ここで注目したいのは単にメロディが美しいかどうかではなく、楽器配置や余韻の使い方だ。弦楽器の伸びやホルンの孤独な一声、間の取り方といった要素が、台詞には出てこない人物の内面を補完する。映画音楽は演出としての機能が強い分、感情の起伏をダイレクトに聴覚へ訴え、結果として'Werther'の切実さを別の角度から体験させてくれる。自分はそんなスコアをBGMにして登場人物の心理地図を頭の中で再構築するのが好きだ。