一枚の絵を描くつもりで説明すると、広大な平原から断崖の都市、樹上に張りめぐらされた橋に至るまで、地形と猫の身体能力が密接に結びついた設定が見えてくる。私はこれを読むとまず生態と文化が同時に設計されている点に惹かれる。
経済は毛皮を加工する匠の技やネズミに似た小獣を巡る狩猟、空中市場の交易で回っていて、情報は毛に付いた香を媒介にして伝わる──これが外交やスパイ活動の肝になる。宗教や伝承では『星の尻尾』のような神話が残り、失われた毛並みを取り戻す試練や過去の英雄伝説が若者の航海や探検を駆り立てる。
対立軸は外敵ではなく、しばしば内なる習俗と変化への抵抗に集中することが多い。私はこの世界に、人間中心の
ファンタジーとは違う、生理と文化が直結する説得力があると感じるし、物語の主題を多様に拡げられる点が魅力だ。